CRDS Cmputational Materials Energy ConversScience Team
2023.12.26 update
佐藤は、2022度、JST研究開発戦略センター(CRDS)において計算科学チームのメンバーを努めた。
このページは、本グループの活動の一端の記録である。
2023.11 戦略プロポーザル「計算物質科学の新展開~デジタルツインによる材料創製基盤の革新~」
エグゼクティブサマリー
本戦略プロポーザルでは、マテリアルの研究開発の効率を向上させイノベーションを実現するために「マテリアル創製のためのデジタルツイン」の構築と利用を提言する。ここでいうデジタルツインは、マテリアル開発プロセス全体をサイバー空間にモデル化し、可能な限りサイバー空間内で開発プロセスを進めるものであり、実際にこれを構築するためには、計算物質科学の革新が必要となる。具体的には、現在の計算物質科学における以下の課題を解決しなければならない。
研究開発課題1. 現実系のモデリング手法の開発
現実系の適切なモデルをサイバー空間に構築すること。計算物質科学では、サイバー空間に作られた原子や分子、あるいはその集団のモデルに対して、何らかの計算処理を行い物質の状態や時間変化などの情報を得ようとする。適切なモデリングが実現できた場合、計算から得られた数値が、現実の世界の測定量や状態変化に対応付けることができる。モデリングが適切であるかどうかは、対象となるマテリアルと知りたい情報の関係によって異なるため、目的に応じたモデリング手法を開発することが課題である。
研究開発課題2. フロンティア領域の計算手法の開発
計算物質科学の根底にある第一原理計算において、現実に近い計算結果を得ることが難しい対象や現象が存在する。そうした取り扱いが難しい対象・現象のうち、特に重要な「電子相関」、「励起状態」、「ダイナミクス」、「マルチスケール」を、本提言ではフロンティア領域と呼ぶ。フロンティア領域をサイバー空間上で取り扱うためには、これまでとは異なる新しい計算原理・手法の開発が必要である。
研究開発課題3. マルチモーダル化手法の開発
単一の計算手法や手段では扱いの難しい対象に対しては、以下に示すような要素の組み合せが課題となる。計算物質科学における異なる計算手法の組み合わせ(e.g., 複数のフロンティアの混成)、計算と実験・データ科学との組み合わせ(e.g., データ同化、機械学習モデル)、異なる種類の計算機の組み合わせ(e.g., CPUとGPU、古典コンピュータと量子コンピュータ)など。
以上のような研究開発課題に取り組む上での推進方策としては、各手法開発を行う研究開発プロジェクトの推進がベースとなる。また、研究開発プロジェクトを通じて開発した新しいソフトウエアを受け取り、継続的な改良やユーザーサポートを行うための持続的な組織(リサーチセンターと呼ぶ)の設置が求められる。新しい物質科学理論や計算手法・ソフトウエアの開発と、それらを普及させるための様々な技術的貢献をすることは、研究そのものとは異なるスキル・モチベーション、時間マネージメントが必要となるため、時限的な研究開発プロジェクトと中長期的に持続するリサーチセンター運用の両輪とすることが有効である。さらに、開発したソフトウエアが持続的に発展していくためには、商用展開することも必要となる。そこで、社会実装に向けたビジネス化の支援策、たとえば、ベンチャー支援やライセンスの仕組みをつくり、業界を育成する取り組みなどが必要である。また、それぞれの方策の中で、研究者、プログラム人材、ユーザー教育・プロモーション人材などの、多様な人材育成を行うことも極めて重要である。
科学技術未来戦略ワークショップ「マテリアルイノベーションを実現する先進的計算物質科学」
ワークショップ報告書全文pdf
開催日時:2023年2月4日(土) 9:00–16:40
開催場所:科学技術振興機構 東京本部別館 2 階 セミナー室 および Zoomのハイブリッド開催
オーガナイザー:曽根純一(CRDS上席フェロー)
ファシリテータ:眞子隆志(CRDS フェロー)
エグゼクティブサマリー
環境エネルギー問題、ICT機器や医療・ヘルスケア関連機器の性能向上、社会インフラの保全・強化などの様々な領域で、用いられるデバイス・装置・システムの課題を解決するために、そこに使われる材料性能の革新的向上(マテリアルイノベーション)が求められるようになった。こうした状況に対し、これまでも新しいマテリアル開発や劣化メカニズム探求に貢献してきた計算物質科学をさらに発展させることで、現実のマテリアル開発プロセスの大部分を計算機の中に取り込み、マテリアル創製を飛躍的に革新する「マテリアル創製デジタルツイン」を構成できる兆しが見え始めている。
本ワークショップでは、計算物質科学をマテリアル開発に応用する際に、最も重要な領域(フロンティア)を議論するとともに、その研究開発を推進するために必要な制度、資金、組織などについての総合的に討論を行った。その結果以下の方向性や論点が見いだされた。
計算物質科学における、現時点でのフロンティアとしては、「電子相関」、「ダイナミクス」、「励起状態」、「マルチスケール」が挙げられる。
計算物質科学のためのソフトウェアを新たに開発するためには、研究者がそれに専念できる、資金・環境が必要である。また、そのプログラムの継続的な発展のためには、プログラムの維持・普及のための仕組みを設ける必要がある。
計算物質科学の推進に必要な多様な人材を育成していくためには、若い研究者に分野の魅力をアピールしていくことや、若者が将来を描けるキャリアパスや人事施策を整える必要がある。
メンバー
- 総括責任者 曽根 純一 上席フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
- リーダー 眞子 隆志 フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
- メンバー
石鉢 卓也 主査 (戦略研究推進部)
伊藤 聡 特任フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
岡部 成光 主査 (産学連携展開部)
大山みづほ フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
佐藤 勝昭 特任フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
嶋田 義皓 フェロー (システム・情報科学技術ユニット)
髙村 彩里 フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
宮下 哲 フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
八巻 徹也 特任フェロー (ナノテクノロジー・材料ユニット)
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