CRDS phonon engineering team

2015.03.24 update

佐藤は、2014年度、JST研究開発戦略センター(CRDS)において、フォノンエンジニアリングチームのメンバーとして協力した。
このページは、本グループの活動の一端の記録である。

ワークショップ「フォノンエンジニアリング」開催

  • 日時:2014.11.14, 10:00-17:00
  • 場所:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター会議室3C
  • 開催趣旨
  • ワークショッププログラム
  • ワークショップ・レポート速報版
  • ワークショップ報告書

  • 2015.3 (ワークショップ報告書)科学技術未来戦略ワークショップ「フォノンエンジニアリング - ナノスケール熱制御によるデバイス革新 -」/CRDS-FY2014-WR-15 の全文pdfがアップされました。
  • エグゼクティブサマリー: CRDS-FY2014-WR-15
    独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
    科学技術未来戦略ワークショップ報告書
    「フォノンエンジニアリング - ナノスケール熱制御によるデバイス革新 -」
     近年では電子・電気機器の駆動により必ず生ずる熱を、効率よく逃がすことがエレクト ロニクス産業においてクリティカルな課題となりつつある。また、デバイスの微細化に伴 い、他に影響を与えないで局所的な加熱・冷却を迅速に行うような要求や、低温の熱をエ ネルギー源として有効に利用する技術が要望されている。

     本ワークショップは、半導体集積回路やパワー半導体、次世代ハードディスク、熱電変 換素子などの熱に関する技術的課題や、必要となる科学技術、その開発を促進するための 政策などの議論を行い、ナノスケールでの熱の理解に基づく熱の効率的な制御・利用のた めに有効な研究開発戦略策定の一環となることを目指して開催した。

    WSでは、CRDSからこれまでの調査にもとづく全体像、課題、研究開発戦略の仮説を示し、 フォノンエンジニアリングへの期待、応用分野からの期待、ナノ熱計測・シミュレーション、 デバイス革新に関する話題提供、総合討論を行った。

    CRDSは、ナノスケールの熱制御は今後のデバイスの性能向上にとって重要になるが、 電子物性や光物性に比べてミクロな領域の熱物性の理解が立ち遅れていることから、ナノ スケールの熱の理解と制御に関する学理の追求、および応用を目指した材料やデバイス技 術への適用が必要であることを示した。また、具体的な研究開発の構造として、「計測」、 「材料・構造作製」、「理論・シミュレーション」の研究者が共同して推進すべきであること、 ナノスケールの熱伝導に関するデータベースの構築が必要であることを、仮説として示した。

     フォノンエンジニアリングへの期待では、ナノスケールの熱伝導はマクロスケールとは 異なりフォノンの輸送として考える必要があること、原子レベルからマクロスケールまで をつなぐマルチスケールのフォノンのシミュレーションが必要なことが示された。また、 ナノスケールの構造や界面、材料の組み合わせ、フォノンの波動性を利用したバンドエン ジニアリングなどによる熱伝導の制御が必要になり、学術領域を越えた技術の融合、学会 の連携などの重要性などが指摘された。

     応用分野からのこの研究領域への期待としては、次世代の不揮発性メモリである抵抗変 化メモリ(ReRAM)、電力制御用のパワー半導体、次世代のハードディスク技術である 熱アシスト記録、自動車における熱利用に関して、ナノスケールの熱制御の必要性が示さ れた。ReRAMにおいては、高速動作や信頼性に熱が関わり、ナノスケールでの熱物性評 価やシミュレーション技術が重要になる。パワー半導体では、ヒートシンクに至るまでの 絶縁基板、接合剤などの熱抵抗やこれらの界面熱抵抗を減少させること、実装モジュール として周辺部品の耐熱性や信頼性を向上させることが必要である。熱アシスト記録におい ては、レーザー光による磁性膜の加熱・冷却の高精度の制御が必要であり、ナノスケール の材料の熱物性値の実測とシミュレーションへの反映が重要になっている。自動車の熱利 用については、始動時とある程度時間が経過した時の触媒やエンジンの温度を最適に制御 するために、熱スイッチや熱ダイオードのような機能が望まれる。

     ナノ熱計測・シミュレーションにおいては、サーモリフレクタンス法による多層膜の計 測技術、第一原理計算からの格子熱伝導計算の現状、半導体デバイスにおける電子・熱輸 送シミュレーション技術が報告された。ここでは、計測技術と理論・シミュレーション技 術、材料技術が情報を共有してお互いに参照して不明な点の解析を進めて行く必要がある こと、異なる研究機関のデータベースとツールの共有が必要であること、第一原理計算は 計算結果と実験値は対数スケールでよく一致すること、電子の輸送とフォノンの輸送を同 時に扱うモンテカルロ手法を初めて開発したことなどが示された。

     デバイス革新においては、熱設計によるデバイス高性能化戦略、熱電変換材料設計、ス ピンゼーベック効果と熱電変換、フォノンバンドエンジニアリングの現状が報告された。 ここでは、最近の微細トランジスタは熱が逃げ難い構造になっており、熱を考慮したデバ イス構造設計が重要になってくること、熱電変換材料の設計では高性能材料へのナノテク 活用や革新的な新原理の探索が必要なこと、スピンゼーベック効果を用いた熱電変換では 熱伝導と電気伝導が独立して材料設計できること、人工的な周期構造でフォノンの制御を 行うフォノニクスが世界的にも関心が高まっており実際にフォノンの抑制効果が確認され ていることなどが紹介された。

     総合討論では、各発表や質疑を踏まえて、ナノスケール熱制御で重要な研究開発課題、 世界をリードするナノスケール熱制御の推進に必要な仕組み、この研究開発の社会的・経 済的・科学的な意義、に関連する議論を行った。研究開発課題に関しては、材料創製や熱 評価の実験と理論解析の融合の必要性、企業も汎用的に使える測定環境の整備の必要性が 指摘された。推進の仕組みに関しては、ヨーロッパで行われているようなナノフォノニク ス研究の枠組み作り、データをデジタル情報として使い易い形で保存しておくことの必要 性が指摘され、この分野のコミュニティを広げることが重要であることの共通認識が得ら れた。社会的・経済的・科学的な意義に関しては、このナノ熱制御を学問として成立させ ていくことが、人材の育成・確保にとっても重要との指摘があった。

     ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSは、今後国として重点的に推進すべき研究 領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法を含めて戦略プロポーザルを 策定し、関係府省や関連する産業界・学界等へ提案する予定である。
  • 戦略プロポーザル

  • 2015.03 (戦略プロポーザル)デジタルデータの長期安定保存のための新規メモリ・システムの開発/SP-04"
  • エグゼクティブサマリー:戦略プロポーザルナノスケール熱制御によるデバイス革新 -フォノンエンジニアリング-CRDS-FY2014-SP-04
    今後の社会における情報爆発への対応やエネルギーの高効率利用などの課題に対し、情報の 処理や蓄積、熱電変換などのデバイスの革新が求められ、そこではナノスケールの微小空間、 微小時間での熱の振る舞いに対する理解と制御が不可欠になる。本提案は、フォノンの理解と 制御に基づくナノスケールの熱制御に関する新たな学術分野の構築、およびデバイス革新に向 けた研究開発の推進に関するものである.

    近年の情報化・ネットワーク社会においては、情報通信デバイスの高性能化によってわれわ れの生活の利便性が大きく改善されてきた。一方、新たに生成される情報量は飛躍的に増加し ており、2020年には現在の約10倍の40ゼタ(1021)バイトになると予測されている。この情報爆発 に対応するためには、今後も情報処理やデータストレージの大幅な高性能化・省電力化に向け た技術革新が不可欠である。しかし、半導体集積回路ではナノスケールに微細化されたデバイ スの発熱・放熱の問題が高性能化を阻害するようになっており、また、ハードディスクではナ ノスケールの微小な磁石の熱揺らぎの問題から大容量化の大きな壁に直面している。このため、 ナノスケールの熱制御手法の開発によるこれらの問題の解決、あるいはナノスケールでの熱発 生を積極的に活用した新たな動作原理のデバイスの開発が強く望まれる。このような状況では、 ナノスケールでの熱の振る舞いを理解し、その特性を制御し利用することが非常に重要になる。

    ナノスケールでは、物質中の熱の輸送を格子振動の量子であるフォノンの輸送という概念に 基づき扱う必要がある。フォノンの概念は20世紀初めに発見されたが、従来のデバイス開発に はその深い理解や制御はほとんど必要ではなかったため、フォノンを基礎とするナノスケール の熱の理解や制御技術は電子物性や光学物性に比べ大きく遅れた。一方で、電子デバイス、光 デバイス、磁気デバイスの微細化がナノスケールまで進むにつれ、電子、フォトン、スピンと フォノンとを別々に取り扱っていては、デバイス動作を正しく理解し、設計する事は不可能に なっている。このため、本提案では微小領域の「熱」に対してナノサイエンスの立場で理解を 深め、新たな熱制御・利用技術を確立することで、新たな学術領域の構築と材料・デバイスの 革新を図ることを目的にする。ここでは、熱輸送をフォノンの概念で扱い、人工的な構造によ りフォノン輸送を操作し熱輸送を制御する新たな学問領域を、「フォノンエンジニアリング」 と呼ぶ。この目的のために必要となる研究開発課題およびその推進体制に関して提案を行う.

    研究課題としては、熱計測、フォノン輸送の理論・シミュレーション、材料・構造作製によ るフォノン輸送制御などがあり、ナノ量子熱科学、ナノ熱制御工学と呼ぶべき新たな学術分野 を構築していく必要がある。また、フォノンと電子、フォトン、スピンなどの量子系を統一的 に理解し、これらが複雑に絡みあうナノスケールの物理現象を制御して、材料やデバイスの革 新技術を作ることが重要である。具体的には以下のような研究開発を行っていく必要がある.

    熱物性に関するナノレベルでの現象を正確に把握するためには、ナノスケールにおける実際 の温度や熱伝導を高精度に計測できる新たな手法や装置の開発が必要である。以前から熱伝導 測定で用いられている光の反射を用いた測定法における測定精度の向上や、時間、空間、構造 などについての測定範囲の拡大を図ることや、ナノスケールの局所的な構造を高精度に計測で きる熱プローブ顕微鏡などの新たな評価手法・装置の開発が重要になる。また、定常状態だけ でなく、熱の過渡的な情報も得られるような評価手法の開発も必要である.

    材料の表面/界面/不純物/構造欠陥などを考慮したナノスケールでの熱伝導の理論の構築 およびシミュレーション手法の開発も求められる。ここでは、単にサイズがナノスケールとい うだけではなく、極薄膜や極細線のような低次元系の構造・材料、材料表面、異種材料界面に おけるフォノンの散乱を考慮した熱輸送についても扱う必要がある。シミュレーションにおい ては、原子・分子レベルでの振る舞いを物理の基本原理から計算するプログラムの大規模化、 高精度化、操作性の向上などにより、材料の基本的な熱物性パラメータを理論的に容易に求め られる計算技法の構築が必要である。また、この熱物性パラメータを用いてさまざまな理論計 算手法を駆使して、実際の材料やデバイス構造におけるフォノン輸送のシミュレーション手法 の開発が必要である。特に、異なるスケールでのシミュレーション手法を連携させるマルチス ケールシミュレーションが重要となる。

    フォノン輸送の概念に立脚したナノスケールの熱輸送の理解を基に、その制御手法を探索し、 技術として体系化することが重要である。具体的には、積極的な結晶界面、不純物、構造欠陥、 異種材料、微細構造、周期構造などの導入や、薄膜化、低次元化などで材料・デバイス構造を 作製し、熱輸送に対するそれらの効果を実験的に把握する。また、理論・シミュレーションで も確認し、これらで得られた知見を材料設計・デバイス設計に組み込む総合的な研究開発が必 要である。また、粒子的な描像でフォノン散乱を制御するだけでなく、フォノンの波動の性質 を利用して、フォノンの伝播を制御するフォノニック結晶などの人工構造を構築するなど、新 たな制御手法について取り組むことが重要である。このようなナノスケールの熱輸送の制御の 取り組みに対しては、これまで電子デバイスや光デバイスで培われてきた電子やフォトンを制 御する人工構造作製技術に関する知見の積極的な活用が期待される。

    ナノスケールのフォノン輸送とその操作による熱の制御技術を実際の応用分野に適用する場 面を想定した研究も重要である。ここでは、フォノンと電子、フォトン、スピンといった他の 量子の制御についても同時に考えることが必要となる。これらの量子系を統合的に取り扱える シミュレーション手法の開発とともに、簡単に扱えるようにモデル化を進め、これを活用した 材料・デバイス設計手法についても研究開発を進めることが重要である。これにより、ナノス ケールの熱輸送が性能・機能の面でボトルネックとなっている半導体集積回路、パワー半導体、 次世代ハードディスク、熱電素子などの特性向上をもたらすことが期待される。また、ナノス ケールの熱制御を活用したメモリやセンサなどの新規のデバイスへの展開が可能となる。

    研究開発の推進方法に関して最も重要なことは、学術分野や応用分野の垣根を越えて、ナノ スケールの熱伝導に関わる研究者・技術者が研究開発の目標を共有しながら取り組むことであ る。これまで見過ごされてきたナノスケールの熱制御は困難な命題であり、産学官の科学者・ 技術者・開発者が目標を共有しなければ、その達成はおぼつかない。

    また、研究開発の推進にあたっては、コミュニティの形成・発展が極めて重要となる。これ は、ナノスケール熱制御が単一の専門知識・技術領域では扱い得ないからであり、学術分野や 応用分野の垣根を越えて、研究者・技術者が集まって議論をする場と、常に密な情報交換が可 能なネットワーク環境が必要となる。同時に、異なる分野・部門の参画者が、連携して共同研 究や装置開発、人材育成を担うことが求められる。その際、例えば材料・デバイスの研究者と 熱物性測定や熱伝導理論・シミュレーションの研究者とが、同じ場所で研究を行う必要がある。

    さらに、本研究開発では、研究開発者が広く活用できるような、熱物性に関する知識基盤の 整備・運用が求められる。ナノスケールの材料・デバイスに関する熱物性は、いまだ体系的に 整理された知識基盤がなく、学術領域としても確立していないことから、研究者が新たに参入 する際の障壁となっている。ナノスケールの熱物性に関する詳細なデータベースを構築し、関 係者が自由にアクセスして利用できる利用環境・ツールの整備が重要である。

    世界的には、個別の研究事例や概念提示に関して米国が最も進んでいるが、政策的にプログ ラム化するなどの集中的な取り組みは、現時点でまだいずれの国でも始まっていない。このた め、この1年間程度で政策を早急に設計して着手することが重要である。
  • メンバー

  • チーム総括:曽根純一(ナノテクノロジー・材料ユニット上席フェロー)
  • リーダー:馬場寿夫(ナノテクノロジー・材料ユニットフェロー)
  • メンバー:斉藤広明(環境エネルギーユニットフェロー)
          佐藤勝昭(ナノテクノロジー・材料ユニットフェロー)
          永野智己(ナノテクノロジー・材料ユニットフェロー)
          松下伸広(ナノテクノロジー・材料ユニット特任フェロー)
          的場正憲(情報科学技術ユニットフェロー)

  • 勤務先リンク
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