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(058)において、金属の導電率は、極低温から室温までの温度上昇に対して1桁くらい減少するのに対し、半導体の導電率は同じ温度範囲で、温度上昇とともに対数目盛で表さなければならないくらい何桁にもわたって増大するということを述べました。
このような違いはどこから来るのでしょうか。これを説明する前に、物質の導電率σ [S/cm]が、電子の電荷e[C]、キャリア密度n [cm-3]と移動度μ [cm2/Vs]のを使って、
σ=neμ (1)
で表されることを知っておく必要があります。(この式の導き方は解説をお読み下さい)
金属におけるσの温度変化は、キャリア密度nが一定なので移動度で決まり、温度上昇とともに、格子振動によって移動度?が小さくなることが原因であるとされます。
一方、半導体ではnは数桁にわたって変化します。それは、純粋の半導体(真性半導体)のキャリア密度nは、温度T[K]に対して、
n=n0exp(-Eg/2kT) (2)
の形で指数関数的に変化するからです。ここに、n0は定数、Egはバンドギャップの大きさ、kはボルツマン定数です。この式は、図1に模式的に示すように、価電子帯の電子が熱的にバンドギャップEgを超えて伝導帯に励起されるようすを表したものです。
【250度温度が上がると42桁も電子が増える】
表1に、nがTとともにどのように変化するかをEg=1eV, n0=1020[cm-3]の場合に示します。キャリア密度は50Kから室温(300K)のあいだになんと42桁も変化するのです。
式(2)の常用対数をとると キャリア密度の常用対数を温度の逆数1/Tに対して描くと直線になります。このグラフをアレニウスプロットといい、図2に示すように傾きからバンドギャップが求められます。
要点Check:
導電率はキャリア密度とキャリア移動度の積に比例する
半導体の導電率の温度変化は、キャリア密度の指数関数的温度変化による
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