■040 ガリウムヒ素の単結晶はこうやって作る


第037項の図 GaAsをはじめIII-V族化合物半導体は、シリコンに比べて良質の単結晶の成長が困難です。 (a) III-V族は2元素からなる化合物であること、(b)V族の蒸気圧が高いため、V族元素が抜けやすいこと、(c)るつぼから不純物がとりこまれ易いこと、(c) III-V族ではでは、転位密度が高く、複雑な欠陥がはいりやすいなどのためです。
【液体封止チョクラルスキー(LEC)法】
GaAsの単結晶成長には、主として【液体封止チョクラルスキー(LEC)法】が使われます。GaAs単結晶基板のほとんどはこの方法で作製されています。図1は、LEC炉の断面図を模式的に描いたものです。これは、基本的には通常の引き上げ法なのですが、Asの蒸発を押さえるために、3酸化ホウ素(B2O3)(高温では液体)でGaAs融液(融点1238℃)にふたをして、高圧容器の中で1気圧以上に加圧された状態で引き上げが行われるのが特徴です。GaAs融液は、BN(窒化ホウ素)またはSiO2(石英)のるつぼに入れられ、結晶は引き上げ棒につけられ、回転しながら上方に引き上げられます。LEC法は、大口径の結晶成長に適しているが、転位が入りやすいので、引き上げ速度の調整などによって結晶の肩の部分の転位を防ぐように工夫しています。 【水平ブリッジマン(HB)法】
GaAs単結晶は、LEC法のほかに、【水平ブリッジマン (HB: horizontal Bridgman) 法】でも作製されます。図2に示すように、GaAs原料を石英製のボートに置き、融点以上に加熱し融解し、温度勾配のある炉の中で石英ボートを入れたアンプルを移動させ、種結晶のところから固化し成長します。HB結晶は、転位密度が低いが、大口径の結晶を得るのはむずかしいといわれます。

要点Check:
  • GaAsの単結晶は、主として液体封止チョクラルスキー法で作製される
  • GaAsの単結晶は、水平ブリッジマン法でも作製でき、低転位密度である