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酸化チタン(TiO2)は光触媒としても用いられる半導体です。バンドギャップは3.0〜3.2 eVですから、可視光はほとんど吸収せず無色透明で、このままでは太陽電池になりません。そこで、酸化チタンの表面に色素分子を吸着させて、色素に可視光を吸収させて生成した電子とホールを使って発電するのが色素増感太陽電池です。
図1には、1991年にスイスのグレッツェルが発明した色素増感太陽電池の構造を示しています。ヨウ素の溶液に、透明電極に固定したTiO2微粒子に色素分子(ルテニウム錯体)を吸着させた電極(マイナス側)と、対極として白金Pt電極(プラス側)を浸漬してあります。光を当てると、色素分子の電子が光エネルギーをもらってTiO2の伝導帯に入る一方では、ヨウ化物イオンI?は色素に電子を供給(酸化)しヨウ素になります。ヨウ素は対極から電子をもらって還元されI?に戻ります。このため、白金側がプラス、酸化チタン側がマイナスとなって電流が流れます。色素増感太陽電池の開放電圧Vocは酸化チタン電極の伝導帯の底とヨウ素の酸化還元電位(REDOX)の差となります。
色素増感太陽電池の変換効率は11.2%に達しており、色素や酸化チタンの形状などを工夫しさらなる高効率をめざして研究が行われています。低コストを活かして大規模発電所の建設も検討されています。課題としては、湿式であるため、液漏れによる劣化の問題があり、また、色素として用いるルテニウム錯体の資源問題があります。
色素増感太陽電池は、蓄電池と共通の構造をもつので、図2のように、電解液の中のイオンを利用して、電荷蓄積電極を設けて蓄電機能を持たせ、エネルギー貯蔵型色素増感太陽電池作る研究も行われています。こうなると、太陽「電池」という名前がふさわしくなるでしょう.
要点Check:
色素増感太陽電池は、色素分子内で光励起によって作られた光キャリアを用いる
ヨウ素溶液の酸化還元電位差を利用している
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