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【鋳造(キャスト)多結晶シリコンは大量生産が可能】
多結晶シリコンのインゴットは、ルツボでシリコンを融解し、融液を底部から上部に向かって固化(direct freezing)する方法、あるいは、図1に模式的に示すように成長用のルツボに別のルツボから融液を注ぎ込んで成長する方法によって鋳造されます(詳しくは第3章に述べる)。鋳造法では、単結晶成長と同程度の時間内に単結晶インゴットの10倍近い数百kgもの多結晶インゴットが得られるので、生産性が高く、エネルギー消費が低いという優位性があります。(宇佐美:第133回結晶工学研究会テキスト)
【多結晶はトランジスタに向かないが、太陽電池には使える】
図2は、多結晶シリコンのインゴットを模式的に描いたものです。多結晶インゴットは、多数の【結晶粒】がぎっしりと詰まって互いに接しています。結晶粒の中は単結晶と同じ規則性をもっています。結晶粒と結晶粒の境目のことを結晶粒界、または、【粒界】といいます。
図3の(a)に示すように、トランジスタやLSIなどの電子デバイスでは、面内でキャリアを動かすので、粒界がキャリアの動きを妨げるので単結晶を使わなくてはなりません。太陽電池では (b)のように結晶粒に垂直にキャリアを流すので、粒界があっても太陽電池の光起電力にあまり大きな影響をもたらしません。多結晶系は低コストで、比較的高い効率が得られるので普及しています。もちろん、粒界付近には結合の切れ目(ダングリングボンド)があって、キャリアをトラップしたり、粒界を通ってリーク電流が流れたりするので、パッシベーション技術(第3章参照)で修復します。
要点Check:
多結晶シリコンは、鋳造法など低コスト・省エネルギーで製造できる
多結晶シリコンは、結晶粒があるため、電子デバイスには向かないが、太陽電池には十分使える
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