Q: 消光係数(がわからない。透明物質だとなぜ(=0なのか。(阿部)
A: 透明な波長領域(たとえば、Siでは、(λ>1120nm)では、光吸収がありません。光吸収係数(と消光係数(の関係式(4.5)を参照してください。λ=0なら、λ=0です。
Q: スネルの法則のところに書いてあるK0, K1と消光係数K(カッパー)は同じものか(岩崎)
A: いいえ。K0, K1はそれぞれ入射光と屈折光の波動ベクトル(=波数ベクトル)です。
Q: の頭の記号~は意味があるのか(上野)
A: 複素数だぞということを強調するために付けました。
Q: ブリュースター角についてもう少し知りたい(上野)
A: たとえば、図4.3の場合について見ましょう。スネルの法則(4.24)により3sinΨ2=sinΨ0 なので、3sin(π/2-Ψ0)=sinΨ0となるような入射角のときΨ2+Ψ0 =π/2となって、(4.27)の第1式の分母は発散します。従って、p偏光の反射率が0となります。3sin(π/2-Ψ0)=sinΨ0を計算すると、約70゚になります。
Q: インピーダンス整合とは(尾崎,、加藤貢)
A: 回路理論の基本ですから教科書を読み直してください。
Q: 振幅反射率においてκ=0とκ≠0のときの違いを知りたい。(後藤)←Good question
A: κ=0なら、rは実数です。このことは、反射の際に光の波の位相が変わらないことを意味します。これに対して、κ≠0のときには、rは複素数になります。すなわち、位相がずれたのです。
Q: 偏光サングラスの説明を詳しく(菅野)
A: 反射光がまぶしいと思うくらいよく反射するような物質の場合、(太陽光自身は非偏光ですが)反射光はほとんどs偏光になっていますから、太陽との関係から考えて、Eベクトルは地面と平行に振動しているのです。従って、地面に垂直な偏光のみを通すように偏光板を使ってサングラスを作ればまぶしくないのです。
Q: c.c.って何か(井口)
A: complex conjugate(複素共役)のことです。
Q: 光吸収の強い物質の反射率が100%になることはわかったが、具体的にはどの物質がそうで、外見的にどう見えるのか。(谷口)
A: 金、銀、銅の分光反射率の例を図に示します。(拙著:金色の石に見せられて(裳華房)p21)
よく磨いた銀は可視域でほとんど100%近い反射率をもっています。曇りのない鏡のように見えます。
Q: 半導体の吸収係数のところで、1μm(=10^-4cm)の薄膜についての例がよくわからなかった。
A: x=0のところで入射した強度I0の光が、x=tのところまでくると、I(t)=I0 exp(-αt)に減衰しています。Siの場合αが小さい(2eVで5000cm-1)ので、I(t=10^-4)=I0 exp(-5000×10^-4)=0.6065 I0 となり60%もの光が透過してきますが、GaAsではαが大きい(2eVで5×10^4)ので、I(10^-4)=I0 exp(-5(10^4×10^-4)=6.7×10^-3I0 という小さな値になって、光はほとんど透過しません。(授業ではGaAsのαを10^5としました)
Q: rp, rsの意味は(平井)
A: それぞれ、p偏光、s偏光に対する電気ベクトルの振幅反射率です。
Q: 図4.13でInP, InSbのスペクトルが吸収端付近しかないのはなぜか。(本間)
A: 吸収の強いところのスペクトルは、薄膜のデータを使うのですが、あまり信頼性のある薄膜が得られていないからではないかと思います。
Q: 光にはいろいろな偏光があるはずで、pとsだけでは表せないはず。他の場合はどうするのか(劉)
A: pとsは直交していますから、任意の偏光はs成分とp成分に分解できるのです。
Q: 光とX線とで入射角の取り方が違う原因(出来)
A: 単に歴史的理由です。X線ではふつう屈折を考えないからかもしれません。
さまざまな光学活性
Q: 歪光学効果(piezooptical effect, photoelastic effect)について例を挙げて説明してほしい(青野)
A: ガラスは、等方性(光学異方性がない)物質です。つまり、電界ベクトルのx成分に対する屈折率と、y成分に対する屈折率に差がありません。しかし、圧力をかけて歪みを生じると、x方向とy方向が等価ではなくなり、屈折率に異方性を生じます。その結果、たとえばx方向に圧力をかけると、x成分に対する屈折率nxの方がy成分に対する屈折率nyよりも大きくなり複屈折を生じます。これが、歪光学効果です。水晶振動子と石英ガラスを接着し、水晶振動子に交流電圧を加えることによって石英ガラスに周期的に複屈折を生じさせ、光の変調をするPEM(=photoelastic modulator)というものが市販されています。
Q: 歪光学効果では、偏光の位相ずれは自然活性と同様に光の進む方向によって決定されるのか。(劉)
A: 外力が磁界や電界のように「向き」が関係する場合には、位相差の符号が磁界や電界の方向で決まりますが、歪みには「向き」がありませんから位相差の符号は光の進行方向に対して定義されます。
Q: コットンムートン効果とは何か(阿部、上野、小井土)
A: コットンムートン効果は、フォークト効果、磁気複屈折ともよばれ、光の進行方向と磁界の方向が垂直の場合の磁気光学効果です。磁界によって複屈折が生じその結果光学遅延が生じます。この効果は導波路型光アイソレータに用いられますが、現在のところこ実用的デバイスはできておりません。(佐藤勝昭:光と磁気、p19, p169参照)
Q: ポッケルス効果とは何か(上野、遠山)電気光学カー効果とは何か(菅野)
A: たとえば、KDPという結晶に数千V/cmの電界をかけると光学的異方性が生じて、その結果複屈折が生じます。この効果の中で、かけた電界に比例する効果をPockels効果、電界の2乗に比例する効果を電気光学Kerr効果といいます。
Q: コットンムートン効果やポッケルス効果は人名から命名されたのか(鰻田)
A: そのとおりです。ファラデー効果、カー効果もすべてそうです。
Q: 左円偏光と右円偏光は位相以外の性質は同じか(草川)→A: その通りです。
Q: 酒石酸とは何か(栗原、古殿)→A: C4H6O6のことで、立体配座(conformation)の違いによって右旋性のL酒石酸と左旋性のD酒石酸があります。(岩波「理化学辞典」による)
Q: 自然活性を用いた製品はあるのか。(古殿)→A: 光学部品としての偏光子にはグラントムソンプリズムなど方解石の自然活性を利用したものが使われています。
Q: 楕円偏光のところで、どちらかの円偏光の吸収が大きいとか小さいとかいうのはどんな意味か(落合)
A: 物質の電子の基底状態が光を吸収して励起状態に遷移するときの選択則が関係しています。(量子力学の知識を必要とします。)
液晶および液晶ディスプレー
Q: 液晶ディスプレー(LCD)で90゚偏光をひねる必要がわからない。(小野)
A: 液晶分子が電界によってガラスに垂直に配向したとき光がそのまま出てきますが、もし、ねじれがなかったら、電界をかけないときもそのまま出てきますので区別が付きません。
Q: 最近斜めから見ても見えやすいLCDができたがどういう仕組みなのか。(阿部、青山、加藤)
A: 前回の授業でやったのは、液晶の視野角についてのやや荒っぽい説明で、実際には楕円偏光の問題よりも分子の傾きの問題の方が大きいのです。通常液晶の分子はティルトといって界面から少し傾けてあるのですが、このことのために、ある角度から入射した光線は分子の傾きを感じるが、方向が異なると傾きを感じなくなるため見えにくくなるという効果が生じます。最近開発されたのは、1つの画素に対応する液晶を配向性が互いに逆向きの2つの部分にわけて、この効果を防ごうというものです。また、いろんな配向の液晶がまじったアモルファス液晶を使う方法もあります。詳細は飯村先生に聞いてください。
Q: 液晶で斜めから見ても楕円偏光にならないようにする技術はないのか(久松)
A: 実際には、まっすぐ見た場合にも楕円にならないで直線偏光になるのは2πΔn×l/λ=(2n+1)πとなる波長の場合のみで、波長によっては、透過して色がつく原因になります。この補償のために楕円偏光を直線偏光に直す補償板(compensator)が使われることがあります。
Q: 液晶の話をもっとわかりやすく、詳しく知りたい。(坂本、滝沢)
A: 液晶について詳しく知りたい人は、岩沢茂夫「液晶」(共立)を参考にしてください。また、液晶ディスプレー(LCD)の詳細はやや高度なので「光電子デバイス」の講義で学んでください。「光物性」の科目では液晶を理解するための一番の基礎となる、光学異方性、光学的遅延などを身に付けてください。
Q: カラーと白黒の液晶は同じ原理なのか。(手島)
A: 液晶に電界をかけて分子配向を制御し、これによって光の強さを制御する部分は同じです。カラーでは、RGB三色を制御するためのLCD素子にR,G,Bのフィルタを焼き付けてあるのです。また、白黒のLCDの大部分にはシンプルなマルチプレックス方式が使われていましたが、カラーLCDのほとんどはTFT (薄膜トランジスタ)を用いたアクティブマトリックス方式です。
Q: 偏光の応用例は液晶ディスプレーの他にどんなものがあるか。(阿部)
A: 立体テレビや立体映画では2つの異なった偏光で両眼視に相当する2つの映像を映しだし、偏光眼鏡でそれぞれの偏光を選択して目に入れます。このほか、MOディスクでは、磁気光学カー効果によるわずかな偏光の回転を検出して、電気信号に変換しています。光アイソレータでは、偏光の回転を利用して光を一方通行にしています。(佐藤・越田:応用電子物性工学p173、佐藤勝昭:光と磁気p151-、参照)
96/5/28の分
Q: 演算子を詳しく(岩崎、高橋、渡辺)
Q1: 結合状態密度とは何のことか(石川)。吸収が遷移確率と状態の数に関係するというところがわからない(久松)。なぜデルタ関数を用いることになるのかわからない。(石川、出来)、状態密度の図がわからない。(鈴木素)
[直接遷移・間接遷移]
[ブリルアンゾーン]
[発光の仕組み]
[ELについて]
[発光再結合と非発光再結合]
[LED]
[化学ルミネセンス]
[PDP]
[その他]
Q: (-fのグラフがわからない(阿部)。(-fのグラフで界面分極と配向分極がわからない。(菅野、手島)
A: 佐藤・越田「応用電子物性工学」p73-75を参照のこと(教科書お持ちでない方は図書館で見てね)
界面分極というのは、セラミクスのように多数の微粒子からできている物質の粒界に捕らえられた電荷によってもたらされる分極のことで、非常に遅い周波数応答を持ちます。配向分極というのは液晶分子のようにはじめから分子自身が電気双極子になっていて、電界を受けて配向することによって起きる分極です。
Q: なぜ界面分極と配向分極の時のみ誘電率の分散はの形ではなくの形になるのか。(劉)
A: イオン分極、電子分極では、バネのような復元力restoring forceが働くためローレンツ型になるのに対し、界面、配向の場合、そのような力が働かないためローレンツ型にならないのです。
Q: バネとクーロン力の関係は(石川)
A: クーロン力はF=q1q2/r2のように表されますが、r=aの位置にあるものがr=a+u (u<
Q: ポラリトンを有効活用することができるのか。(金子)ポラリトンは何の役に立つか。(落合)
A: ポラリトンのupper branchとlower branchの間のエネルギーの光は完全反射されますので、その領域のミラーとして用いることができます。また、マイクロ波、ミリ波帯用のコンデンサ材料の設計において、材料を構成している原子の種類を変えてポラリトンのエネルギー位置をずらせてやって、誘電率を最適化するなどに使われます。
Q: 準粒子とは何か。(竹田)
A: 英語のquasi particleの訳で、フォノン(音響量子)、エキシトン(励起子)、プラズモン(プラズマ振動量子)、ポラリトンなど、相互作用する複数の粒子からなる系が波としての性質を持ち、かつエネルギーが量子力学に従うとびとびの値をもつような励起を持つとき、この励起を「粒子」のように扱って「準粒子」と呼ぶのです。素励起(elementary excitation)とも呼びます。
Q: 電気感受率がわからない。(尾崎、平井、出来)
A: P=(0Eですから、電気感受率(は外部電界Eを受けたときの分極Pの出来やすさを示しているのです。
Q: 分極波についてもう一度(竹田)
A: 一例として、窓ガラスの屈折率のことを考えましょう。ガラスのバンドギャップは4eV付近にありますから、可視光の吸収は起きません。それなら、可視光の光とガラスは何の相互作用も持たないかというと、真空中とは違って屈折率が1.5程度の値になっていることからも相互作用があることがわかります。実は、ガラスの中を光は分極を引きずりながら伝わっているのです。
Q: 減衰項をとして扱うのと、減衰項を入れないで最後に(を(+i/(に置き換えるのとどう違うのか(胡)
A: もし(1/()2を無視できるなら両者は同等になります。やってみて下さい。
Q: 減衰項、摩擦項の意味が分からない。(上野、栗原)
A: 例えば、物体の自由落下を考えてください。もし摩擦項がなければ物体の速度はどんどん速くなっていきます。ところが、雨粒をみると一定速度で落ちてきます。これは、速度に比例する摩擦項の存在によって、速度の増加が抑えられているためです。電気伝導の式の導出の際、運動方程式において加速度をゼロとして定常状態の電子の速度を求めたのを覚えていますね。このとき摩擦項が重要な働きをします。
96/6/11の分
Q: 授業がとてもはやい。もっとゆっくり。(青野)
A: 少しゆっくりに変更します。
Q: 光がなければ金を見ることができないが、光があっても光の色を反射してしまう。本当の金の色は?(飯田)→A: 反射率のスペクトルで表されるのが金の色の本性で、目は本当の姿を見えないのです。
Q: τが有限と無限で何が違うのか。(石川)
A: τ→∞というのは電子の散乱がないことを表します。こんなことは現実には起きないのです。数式のみに存在する状態です。実際の現象は常にτは有限です。
Q: プラズマ周波数のプラズマとは何か(伊藤)
A: プラズマとは、正負の荷電粒子が共存して全体として電気的中性になっている状態をいう。電離した気体に見られるが、固体でも金属においては自由電子が固定した陽イオンの背景の中を動き回っているのでプラズマと見なせるのです。
Q: D=εEにおいてε<0だとなぜ光が入り込めないのかわからない。(上野)
A: いま、εを負の実数とすると特性インピーダンスは純虚数となってエネルギーが伝わらないのです。
Q: 自由電子系で(先生の誘導した)導電率の実数部に負号がついたが、なぜ間違えたかわからない。
A: SI単位系で、ε'=1-σ"/ωε0、ε"=iσ'/ωε0
一方、自由電子のεは次式のように与えられます。
(省略)
両式を比較することによって、
(省略)
黒板で間違えたのは、εの式の誘導の部分のようです。
Q: 金、銀、銅に赤、緑、青の光を照射すると何色に見えるか。(落合)
A: いずれの金属に対しても赤は赤、緑は緑、青は青に見えます。ただ相対的な強度が異なるだけです。
Q: 銀とアルミの反射の違いについてもう一度(草川)
A: 可視光における銀の高い反射率は、自由電子プラズマによるDrude型の光学応答が原因ですが、アルミの自由電子プラズマ共鳴は赤外の800nm(~1.5eV)付近にあり、可視光の光学応答は、バンド間遷移によって生じています。600nmにおける銀の反射率が98.1%あるのに対し、同じは長のアルミの反射率は91.1%しかありません。
Q: 移動度とは? 移動度の意味は?(尾崎, 加藤、竹田)
A: 移動度(mobility)は電子物性工学1でH1の人は齊藤忠先生、H2の人は小林駿介先生が教えたことになっています。電界Eを加えて電子の速度がvになったとき、μ=v/Eを移動度とよびます。単位は実用的には[cm^2/Vs]が用いられています。キャリアの散乱確率が等方的な単純な系ではμ=eτ/m*です。「応用電子物性工学」のp45を参照して下さい。移動度の概念は、材料物性系に進むつもりの人には絶対に必要ですので勉強しておいて下さい。
Q: (エネルギー帯のk空間での)曲率の逆数が有効質量であるというのはどういうことか。(直井)
A: 「量子工学」の教科書の第2章C有効質量の項(p60)、または、「応用電子物性工学」の第2章2.5.2項(p42-45)をご参照下さい。kの変化に対してEが急な変化をしているほど、速度を得やすい、つまり質量が軽いということです。
Q: εに実数部と虚数部があるとき具体的にどのような現象がおきるか。(林)
A: εの虚数部はエネルギーの消費を示しています。ローレンツ型分散曲線で、ε"はピークになっていますね。このピーク付近で、光の吸収が起きているのです。吸収係数αとε"の間には
(省略)
の関係式が成り立っています。ここにnは屈折率です。
Q: イオン分極・電子分極とマクロな電磁波がミックスすると光学的効果はどうなるのか。(金子)
A: イオン分極と電磁波がミックスした状態がポラリトンでした。電子分極と電磁波がミックスした状態は励起子ポラリトンと呼ばれます。この状態からの発光が2光子吸収法によって観測されています。
Q: ε<0のときR=1となるとあったが、ε>0のときは。(金子)
A: ε>0で実数のみならばで表されます。
96/07/02
A: 一般に微分、積分など関数に作用して別の関数に変換するような操作を演算子または作用素という。
量子力学の約束事では、
(1)物質のあらゆる状態(たとえば、波数kの自由電子)は波動関数Ψ(自由電子の場合は平面波すなわちΨ=Ψ0exp(i k・ r))であらわされ、
(2)|Ψ|2がその状態の存在確率を与える。(平面波では、 |Ψ |2=|Ψ0 |2=一定)
また、この存在確率を全空間で積分したものは1になるようあらかじめ規格化されている。すなわち、である。
(3)すべての物理量(たとえば、運動量、位置、エネルギー)にはそれに対応する演算子(運動量pにはが、位置xにはxが、エネルギーEにはが、それぞれ対応する)があり、状態を表す波動関数Ψ に作用して作用を受けた時の波動関数に変換する。(たとえば、平面波Ψ0exp(i k・ r)に運動量の演算子を作用させると、(数式省略)となる。
(4)任意の状態(波動関数(で表す)における物理量fの期待値はで表される。上に述べたように物理量の演算子がもとの状態(に作用すると状態はに変わっている。この状態が元の状態にどれだけ含まれているかを計算すると期待値が求まる。この操作は内積の操作で表され、(省略)のように記述できる。
Q:<|、|> などの表示の意味が分からない。(有馬、小野、石井)
A: これは、ディラックという物理学者が作り出した記号で、ディラックのブラケットと呼ばれています。
Q: 光学遷移とバンドギャップの関係がわからなかった。(宇都宮、太田)
A: 本日お教えします。
Q: 分極した電子状態をs電子とp電子で表したがなぜか。(尾崎)
A: 数学の一般的フーリエ級数展開の考えに従うと、任意の関数f (x)は、正規直交系の関数の組{(n; n=0, 1,2,・・・}を用いて展開できます。中心力のポテンシャルの下でのハミルトニアンの固有関数がご存知1s、2s, 2p、3s, 3p, 3d電子などです。これらは、正規直交系であることはよく知られています。分極した状態は、元の状態の波動関数の分布からみると、歪んだ分布をしています。この状態の波動関数を、分極する前の系の固有関数の組(これは正規直交系)で展開することができます。その関数系の中には1s, 2s, 2p,....などがありますが、特に、理解しやすいs電子系とp電子系の波動関数で説明したのです。
Q: 期待値とは何か(手島)
A: 高校の確率統計で習った「期待値」のことです。さいころを振ったときにでる目の数Nの期待値は、
(略)
ですね。量子力学では、各状態の現れ方は確率現象なので、すべての物理量が期待値でしか、論じることができないのです。
Q: 量子力学の簡単な参考書をあげてください(草川)シッフの本を持っているが難しすぎる(久松)
A: 教科書「機能材料のための量子工学」の第1章1.1節には、量子論のエッセンスがコンパクトにまとめられています。面倒でも夏休みに一応フォローしてみてください。ゆっくりと読むには、岩波の「ファインマン物理学」が最適です。最近では、フロッピー付きで、パソコンを使って図を見ながら学ぶ教科書もでています。(例えば、田中一著「動画つき量子力学」(近代科学社, 1991))シッフの本は、原子核の衝突など核物理学をやるにはよいのですが、固体物理学のためにはあまりよくありません。工学部学生向きのものとしては、野村昭一郎著「技術者・工学者のための量子論」(実教出版,1971)がありましたが今は絶版かもしれません。最近のものでは、阿部正紀著「電子物性概論」(培風館, 1990)の第2章「量子論的現象の発見」というのがよく書かれていると思います。それから、M.N.ハナ著・柴田周三訳「化学のための量子力学」(培風館, 1985)がわかりやすいです。ただ、例として、化学物質が使われているので、化学の知識がないとわかりにくい部分もあります。
Q: なぜ、というように(jo=Eg となるかがわからない。(石川)
A: 正確には、Egではなく(Eg/h)と書くべきでした。バンドギャップで強い光学遷移が起きるのでこれに対応する角振動数はEg/hです。
Q: ε-Eg2のグラフで、Eg→0のときεはなぜ一定になるのか。(栗原)
A: 説明のために入れた線を一定と勘違いされたようですね。どんどん大きくなりますが、Egが小さくなって金属的になると、εは発散してしまいます。
Q: 半導体レーザは、Egが大/小/大の組み合わせであれば、GaAlAs, GaAsの組み合わせてなくてもできるか。(森田、出来)
A: 最近話題の青色レーザでは、GaN/GaInN/GaNであるとかGaAlN/GaN/GaAlNとかが使われています。
Q: ダブルヘテロ構造でなぜ、光が閉じこめられるのか教えてほしい(滝沢)
A: 全反射のことを復習してください。
Q: 電子雲とあるが、2面性のある電子をどうとらえたらよいか実感がわかない。(田口)
A: 電子は、粒子性をとらえる実験(光電効果など)をすると粒子として見え、波動性をとらえる実験(干渉、回折など)をすると波動として見えます。電子雲という概念は、粒子の存在が確率現象であるという捉え方と、電子が波のように広がっているという概念の折衷案です。
Q: 摂動のところで、元の波動関数のすべてを等確率で加え合わせてはいけないのか。
A: 元の波動関数のすべてを等確率で加え合わせるほど大きく変化しないのです。基底の関数にちょっとずつ励起状態の関数が加わってくることが重要なのです
Q: 摂動とは(石川、加藤、玉城)
A: 力学系の運動を規定する方程式の中に現れる関数が、比較的簡単で正確に解のわかる主な部分の他に、小さな付加項を含む場合に、この付加項を、前者の定める運動に小さな補正を加えるものと見なして「摂動(perturbation)とよぶ。(岩波理化学辞典による)
Q: 不確定性関係がわからない(竹田)
A: 古典力学では、運動する粒子の位置も運動量も正確に決まりますが、量子力学によれば、位置を正確に決めようとすると運動量(波数)は不確定になってぼやけてしまい、逆に運動量を正確に決めようとすると位置が不確定になってしまいます。エネルギーと時間の間にも同様の関係が成立します。これを不確定性原理といいます。(これ、平成の常識)
96/07/09
A: 右(a)図(省略)は対応する(b)のバンドの(普通の)状態密度を表しています。状態密度というのは、単位エネルギー間隔にどれだけの状態が含まれているかを表しています。
一方、結合状態密度J(E)は、価電子帯と伝導帯のエネルギー間隔がEであるような「組み合わせ」が、k空間の中にどれだけあるかを表しています。間隔がE2であるような組み合わせは少ないけれど、間隔がE1であるような組み合わせはたくさんありますね。この場合、J(E)はE1にピークを持つのです。各kの値に対し、吸収はδ関数的に起きます。δ関数は、ε'の分散式をクラマース・クローニヒ変換によってε"に変換したときに出てきました。δ(k-ki)はkがkiに等しくなければ0で、k=kiのときに∞、積分すると1になります。たとえば、(省略)となります。
Q2: 振動子強度とは何か(石川)
A: 電子系と光の相互作用の強さを表すのに、電子系と同じ固有振動数および電子と同じ質量と電荷をもつ古典振動子に置き換えたとき、何個分になるかを表す数を振動子強度といいfで表します。いくつかの遷移が存在する系では、各遷移に対応する振動子強度の和をとったものは、系に含まれる電子の総数に等しくなるようになっています。それで、fのことを分散電子数ともいいます。
Q3: 微分係数が同じところで遷移が起きるというのがわからない。(竹田)
A: 遷移の起き易さは振動子強度(遷移確率)で決まってしまいます。同じ振動子強度でも、特定のEで大きくなる理由が、Q1のようにk空間でバンドが平行な場合なのです。つまり、kにかかわらずエネルギーの差が一定です。これを微分で表すとエネルギー差のkに対する微分係数が0ということになります。
Q4: K-K変換とは何か。(手島、久松)
A: すみません。ついギョーカイ用語を使ってしまいました。Kramers-Kronig(クラマース・クロニヒ)変換のことです。授業では飛ばしてしまいましたが、p154にありますように、誘電率の実数部と虚数部の間にはクラマース・クローニヒの関係式が成り立ちます。全周波数領域に対するε'のスペクトルがわかっていると、ε"のスペクトルを計算できます。この関係式の証明はp195の問4.8を参考にしてください。(複素関数論の知識が必要です)
Q5: エリプソメトリについてもう少し詳しく知りたい(上野、坂本)
A: エリプソメトリ(ellipsometry)というのは、日本語では「偏光解析法」などと呼ばれ、s, p偏光に対する反射率の比rp/rs=tanΨと、両偏光に対する位相差(θs, θp)の差δを測定することによって、物質の屈折率、消光係数を決めたり、多層膜の場合には各層の厚みを決めたりする技術です。具体的には、偏光子をs, p 方向と45゚の角にしておき、試料で反射されてできた楕円偏光をλ/4板で直線偏光に変換して、検光子を通して光検出器に導きます。λ/4板と検光子を回し出力が最小になるようにしたときのそれぞれの角度を使ってΨとδを決めます。このような操作は全部コンピュータが行います。
Q6: (エリプソメトリのところで出てきた)エッチング、ヘテロエピタキシーとは何か。(上野)
A: エッチングというのは半導体のプロセスにおいて、化学的な処理によって半導体や酸化物などを取り除く作業のことです。Siをエッチングするには、硫酸や硝酸などの酸で酸化し、ガラス状のSiO2を作り、つぎにガラスを溶かすフッ酸で取り除けば、Siのきれいな面がむき出しになるのです。
ちなみに、銅版画でエッチングというのがありますが、あれも、ロウなどのレジストを塗った銅板に針で絵を描くと。レジスト(ロウ)がはずれて銅がむき出しになりますが、これを腐食性の薬品に浸すと銅のみが腐食して描いた線に沿って溝ができます。あとでレジストを除去すると銅版ができます。これにインクをつけて、平らな部分のインクを拭き取り、紙と合わせてプレスにかけると溝に溜まったインクだけが紙に写ります。途中までは半導体のプロセスそっくりですね。
ヘテロエピタキシーというのは、半導体などのエピタキシャル成長において、基板と薄膜の材料が異なる場合をいいます。例としては、Si基板上のGaAs薄膜の成長などが挙げられます。(エピタキシャル成長については、教科書のp64参照)
Q7: 量子力学のところを勉強しているが、十分理解していなくてはいけないのか。(片岡)
A: 私が、量子力学を何となく自分なりにわかったような気になったのは修士課程2年のときで、それまではわからないままに(ちょっと背伸びして)やっていました。逆に、わからないでも、固体物理、半導体工学、光物性などの勉強をしていると、実例が出てくるので、量子力学はこんな風に使うのだというように慣れていくのです。何でもかんでも1から積み上げようとすると大変で、逆に、何かを読んでいてわからなくなると、必要な部分のみさかのぼって勉強するのがよいと思います。そうでないと、会社の研究所などに入ったときが大変です。
Q8: Siのバンドダイヤグラムをもう一度説明してください。(後藤)
A: 前回の説明はたしかに十分とはいえないのですが、1つのことに何度も時間をかけると進まないので、勘弁してください。必要でしたら、研究室に来てください。
Q9: 間接遷移と直接遷移を区別するために実際にはどうしているのか。(直井)
A: 教科書のp170の3行目に直接遷移の見分け方、同じページの一番下の行に間接遷移の見分け方が出ています。両方のプロットをしてみてよく合う方で決めます。実際には、広いαの範囲をプロットすると、αの小さな範囲は間接が、大きくなると直接がよく当てはまるというようなことも起きます。
Q10: 逆格子がわからない(劉)
A: 「光物性工学」は、逆格子空間、バンド構造のk空間表示などはすでに学んでいるということを前提としています。逆格子の概念は何回聞いてもよくわからないと思います。いろんな場合(たとえば、X線回折の理論など)を学ぶうちに実空間の結晶格子は、k空間では逆格子を使わなければならないことがわかってきます。
Q11:: 反射スペクトルのE1, E2ピークは使い道があるのか。(劉)
A: とくに応用はありませんが、結晶性の良さを判定するために、E1, E2ピークがはっきりとした形状であるかどうかを判定基準として用いることができます。私の経験で申しますと、GaAsにBを添加するためにBをイオン注入しますが、注入したGaAsのE1ピークのスペクトルはぼやけたものになっています。これは、高いエネルギーのイオン照射のため結晶が乱れアモルファスになったためです。レーザを当ててアニールした後でスペクトルを測定すると、注入前のようにはっきりしたE1の構造が回復します。
Q12: ブリルアンゾーンとバンホーブ特異点の関係について(金子)
A: ブリルアンゾーンの境界では、電子波の反射と干渉のためバンドの反発が起きて結果的にk空間で極大値をとることが多いようです。このため、結合状態密度が大きくなることがあります。あとは、ケースバイケースでブリルアンゾーンとバンホーブ特異点の間には直接の関係はありません。
Q13: 透磁率μの世界でも、光学的性質に関係が出てくることがあるのか。(金子)
A: 光の周波数(~1014~1015 Hz)のように速い振動に、磁気双極子モーメントの運動は追随できないので、比透磁率(rは1と見なすことができます。磁気光学効果もμではなくεから生じるのです。
(補講96/07/16)
Q: 直接・間接遷移がよくわかる参考書を教えて欲しい(飯田)
A: 直接・間接遷移のことが正確にわかるためには、k空間での遷移のことをきちんと書いた教科書を読まなければなりません。佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社, 1991)の第3章「光学的性質とその応用」の1.1節「半導体の光吸収」p109-p114がおすすめです。
Q: Siの間接遷移でフォノンのエネルギーはどこからくるのか(草川)。
A: 絶対零度では、量子力学でいう零点振動(不確定性原理に基づくもの)の分のエネルギーのフォノン(格子振動)しか存在しませんが温度が上がるに従い、いろいろなモードの格子振動が熱的に励起されて存在するようになります。価電子帯の電子が見るまわりの環境は、温度が高くなるにつれ原子が上下左右に揺さぶられているような状態です。格子振動のエネルギーも格子振動波の波数qに依存して変化します。この分散関係は教科書の1.5節p44-p45を参照してください。
Q: 間接遷移でフォノンを吸収したり放出したりするのはどう違うのか。(直井)
A: 低温では、吸収しようにも周りに格子振動が存在しませんから、放出のみが起きて、光学遷移に伴って格子振動が発生します。(このことをを格子をけ飛ばして遷移するといったのです。)温度が高くなると、周りの格子振動のエネルギーと運動量をもらって(=フォノンを吸収して)遷移します。(これは、格子にけ飛ばされて遷移する場合です)
Q: 直接遷移、間接遷移はバンド間遷移の発光にどのような影響があるか。(胡)
A: 間接遷移でも発光しますが、格子振動を伴うため発光効率が低く、不純物を介するか、低温にしないと発光は観測されません。これに対し、直接遷移では発光効率が高く、強い発光が期待されます。半導体レーザには直接遷移の材料しか使うことができません。
Q: 同じ物質で直接遷移と間接遷移の両方が存在するのは特別の条件があるか(劉)
A: 間接遷移は吸収端のところのみです。吸収端以上のエネルギー領域では直接遷移の寄与のみが観測されます。先週、SiやGaAsのバンホーブ特異点のことをお話ししましたが、結合状態密度を考えるのは同じkの位置での遷移のエネルギー差でしたね。これはまさしく直接遷移なのです。
Q: 間接遷移の場合のバンド間発光のスペクトルの形は?(金子)
A: 基本的には直接遷移の場合とほとんど同じですが、結合状態密度の部分が違うため、スペクトルの立ち上がりの様子が緩やかになります。
Q: 直接遷移で、(吸収端での)吸収係数が直線的に立ち上がるのはなぜか。(石川)
A: 図4.13を見てこのような質問をされたのだと推察します。よく見てください。図の縦軸は対数目盛です。このため、E-Egが0に近づくにつれて(E-Eg)1/2 は0に近づきますから、対数目盛では-(に向かって発散します。この様子が急激なので、直線的と思ったのでしょう。右図で、αをリニアスケールでは、平方根の形なのが、対数スケールでは急峻に立ち上がっている様子が見られるでしょう。
右図(省略)は直接遷移の場合:α=104(E-Eg)1/2 についてEXCELで計算したものです。パソコンを持っている人は、間接遷移の場合についても、同様の計算とグラフ表示をしてはいかがでしょう。
Q: 間接遷移の方が直接遷移より都合のよいような利用法はあるか。(久松)−A: たぶんありません。
Q: 「BZの端」のBZとは何(諏訪)
A: k空間のブリルアンゾーン(Brillouin Zone:p167参照)のことです。
Q: ブリルアンゾーンのブリルアンとは何か。(谷口)
A: 人の名前。Brillouin著「Wave Propagation in Periodic Structure」参照。
Q: ブリルアンゾーンの端のことがよくわからない。(有馬)
A: BZの端っこでは、波数k~π/aの進行波とk~-π/aの進行波が干渉して定在波を作ります。電子の波が結晶格子と共鳴する条件といってもよいでしょう。BZの端から少し離れたところでは、波数の異なる2つの波の間に干渉が起きてビート(うなり)が生じています。BZの端付近の電子の波長は短く、従って、kが大きくなっています。
Q: 蛍光塗料が光る仕組みを知りたい(青山)
A: 蛍光塗料には、光を受けて分子が励起状態になりそれが基底状態に緩和する際に発光する現象(フォトルミネセンス)をもつ物質が含まれています。それで、蛍光塗料に白色光が当たるとその中のエネルギーの高いフォトンが吸収され、蛍光塗料は励起状態になります。これがもとに戻るときにエネルギー差をフォトンとして放出するのです。蛍光ペンの場合は、蛍光染料が含まれています。
Q: (発光の)各遷移によって使われ方、長所、短所に違いがあるか。(玉城)
A: 半導体レーザでは、p181の@の過程が使われていますが、発光ダイオードでは、@、A、Bなどが使われます。蛍光材料ではB、Eの過程を用いていることが多いようです。それぞれいろいろと特徴がありますが、case by caseでどれがよくってどれが悪いと一概にいえません。
Q: ブラウン管の光る仕組みを知りたい(穴水)
A: ブラウン管の概略図を右に示します。(略)
テレビジョンのブラウン管には電子銃があってここから飛び出した電子が1万ボルト以上の高い電圧で加速され、シャドーマスクを通ってブラウン管管壁の内側に塗布された蛍光物質にぶつかり蛍光物質を励起します。カラーブラウン管では、RGBそれぞれの色に発光する蛍光物質が塗布されていて、それぞれの色の信号で変調された電子ビームで各色の蛍光物質を刺激します。
Q: 真性ELと注入型ELの違いを詳しく教えて欲しい。(鰻田)
A: 実物をお見せできればよいのですが、真性ELでは、電界によって発光するので、消費電力が小さく航空機のコックピットの計器パネルなどに用いられています。奥行きが薄く自発光型で安定的に表示できるので、ヨーロッパの空港では電光掲示板に使っているところもあります。普通発光材料としてMn添加ZnSを用いるので、オレンジ色(590nm)です。真性ELはカラー化に難ありとされていましたが、数年前、米国のPLANAR社から情報表示用にフルカラーのELディスプレーが発表され、研究が盛んになりました。
一方、注入型ELは、いわゆるLEDで、簡単にいえば、pn接合ダイオードに順バイアスを与え、少数キャリアを注入したときに(多数キャリアと)再結合して、エネルギー差を光として放出します。駅の表示板などに使われています。以前は青色の高効率のLED(注入型EL)がなく、フルカラー表示が難しかったのですが、2年前に、青緑〜青〜紫の領域でまぶしいくらいに強く光るGaN系のLEDが徳島の日亜化学によって開発され、フルカラー化が進みました。渋谷の109の電光掲示板にも使われています。
Q: 再結合で光るという概念はわかるが、実際何がどうなって発光しているかわからない。(落合)
A: たとえばp型半導体に少数キャリアの電子を注入することを考えましょう。p型ではホールが多数キャリアです。ホールというのは価電子が欠乏している状態です。そこに、pn接合を超えて伝導電子が入ってきて、電子の足りないところに収まるのです。伝導電子は、価電子よりバンドギャップの分だけエネルギーが高いので、その分のエネルギー差を光または格子振動(熱)として放出するのです。
Q: 発光再結合と非発光再結合の違いを詳しく教えて欲しい。(平山)
A: 励起エネルギーを光として放出するのが発光遷移です。しかし、基底状態への遷移が禁止遷移であったりしますと、どこか途中の許容遷移で行ける状態に遷移して、そこから基底状態に遷移する場合があります。途中の準位が多数ある時カスケード緩和などといっています。途中の準位に落ちるときに放出する光のエネルギーは小さいので赤外線で光っていて見えない場合があります。このようなときに非発光として扱われている場合があります。
このほかに、トラップに落ち込んで光らなくなる場合や、濃度消光といって、発光センターの濃度が少ないときはよく光るけれども、濃度が高くなるとペアやトライアドなどのクラスタができてエネルギー伝達が起きるために光らなくなる場合などがあります。
Q: 非発光再結合において、なぜトラップにはまるのか。トラップがわからない。(石川、伊藤、尾崎、紺野、土屋)
A: 伝導電子にとって、イオン化したドナーは正の電荷を持つので、トラップとして働きます。しかし、浅いドナー準位ならば束縛エネルギーが小さいので、すぐに熱的に解離されるため捕まっている時間は短いのですが、深い準位の場合なかなか解離されず、捕まったままになるのです。これをトラップといいます。
深い準位の場合束縛された電子のボーア半径は小さいので、周囲の原子の動きによって影響を受けやすく、従って格子振動との結合が強いので、非発光再結合して熱に変わるのです。より正確には配位座標モデルで考える必要があります。(p185参照)
Q: 非発光再結合で熱を放出するしくみを教えて欲しい(加藤貢)。再結合の際熱になるのは格子振動か(落合)。
A: 励起された電子状態が原子の位置と強く関係している場合、励起エネルギーが原子の運動を起こします。原子の運動は、固体においては格子振動の波として結晶全体に伝わります。この格子振動が熱になります。
Q: 励起された後熱になるのはわかるが、光としてなぜ放出されるか。(片岡克)
A: 私は、光として放出される方が当たり前で、熱になる方が、何らかの不完全性によるというという既成概念にとらわれていたからです。気体原子や気体イオンの場合、放電によって電子系を励起状態にし、元に戻るときに発光します。これは、中学の理科の炎色反応で習ったものと思います。ネオンランプ、水銀灯、キセノンランプ、気体レーザ(He-Cd, He-Ne, CO2など)の発光の原理はすべて、これです。固体になりますと、原子の密度が高く、電子準位も原子やイオンの場合に比べ複雑で、バンドを作りますし、原子の場合と異なり格子振動がありますから、光らなくなることが多いのです。従って、片岡君の質問は固体については、もっともな話です。
Q: 発光再結合と非発光再結合の割合は(斉藤雄)
A: 一概にいえません。蛍光体では100%近い発光効率のものもありますし、20%くらいのも、0.01%のもの(ほとんど光らない)もあります。
Q: オレンジ色のLEDの色はどのようにして出ているのか。(遠山)
A: Ga1-xAlxAsやGa1-xAlxAs1-yPyなどの固溶体を作るとx,yの調整によってバンドギャップをかなり広い範囲で変えることができます。しかし、一般の電光表示板に使っているのは、オレンジ色の発光ダイオードではなく赤のダイオードと緑のダイオードの光る比率を変えて、オレンジ色に見せているのです。
Q: ケミカルルミネセンスの有用なものはないか(出来)
A: 化学反応に伴って反応で生じたエネルギーを光の形で放出するのが化学ルミネセンスです。縁日で、光る風船や、光る棒を売っていますが、その応用です。あまり電子機器への応用は考えられないですね。
Q: 液晶プラズマディスプレイはPL, EL., CLのどれに当たるか(田口)
A: プラズマディスプレイパネル(PDP)は蛍光灯を画素の数だけ並べたようなものです。基本的にはガスの放電で生じた紫外線を使って蛍光体を励起しているので、PLに相当します。PDPと液晶とは別のものです。
Q: (反射スペクトルのE1構造のところで話に出てきた)レーザーアニールとは何か。(長田)
A: アニールというのは、もともと金属加工学で用いられる焼鈍のことで、半導体の不純物の添加、活性化に用いられる熱処理のことをいいます。この熱源としてレーザを用いる方法をレーザアニールといいます。レーザ光はエネルギー密度が高く、小さな領域に集中できるので、半導体の微細構造のプロセスに用いられます。
Q: 畳み込み積分の意味がわからない。(坂本)
A: エネルギー間隔の同じものを探し出してトータルしたものがたたみ込みです。
Q: 輻射という字はいつ常用漢字からなくなったのか。(稲垣)
A: 輻射の輻という文字は、50年前に当用漢字というのが定められたときに当用漢字表から削除されたのです。(ワープロでも第2水準に入っています。)その当時、アメリカ占領軍の圧力で、ややヒステリックに難しい漢字を使えなくしましたが、その際、輻射の輻の他にも多くの学術用語が当用漢字では表記できなくなり優しいことばに置き換えられました。そのことをお話ししたのです。