光物性工学(H1,2コース),物性物理学(Pコース),佐藤勝昭教官1998.7.14配布資料
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http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/hikari98.html宿題:光物性工学受講者(H1,2):クラマースクローニヒの関係式(4.37)式を証明せよ。
物性物理学受講者(P):p161において分極の期待値が(4.75)式で与えられることを証明せよ。
第
8回(98.6.22)の授業の要点半導体の光学遷移(教科書
p.166-171)1) バンド図 SiとGaAs
2) バンドギャップを越える遷移と吸収スペクトル
3) 直接遷移型半導体と間接遷移型半導体の違い
第8回の問題回答
問題 半導体のエネルギー帯をk空間で表すことの利点を述べよ。
→解答 が運動量を表すので光学遷移における運動量保存則の判定ができるので直接遷移か間接遷移かを判別する。
k
空間での分散曲線の曲率から有効質量を見積もることができるのでGaAsにおけるガン効果などを説明できる。質問への回答
Q.間接遷移においては電子が格子点の原子によってけ飛ばされるというのが分からなかった(P南雲)→A.電子が格子振動から運動量をもらって遷移するということを古典力学のアナロジーで表現すると、電子が格子によってけ飛ばしたと考えられると言ったのです。
Q.エネルギーのしゅくたいって何ですか(H2グエン)→A.いくつかの固有状態があって、それらが同じ固有エネルギーを持っているとき「状態は縮退している(states are degenerated)」といいます。このとき何らかの「摂動(perturbation)」が加わってそれらの状態のエネルギーに違いが生じたとすると「縮退が解けた(degeneracy is lifted)」と表現します。
Q.実験でkとEの関係はどうやって測定するか(H2辻本)→A.半導体や金属に光を当てると電子が放出されますが、当てた光のエネルギーと角度を変えて出てきた光電子の運動エネルギーを測定する方法(「角度分解光電子スペクトル」)によって占有状態のE(k)を測定できます。一方、非占有状態の方は、運動エネルギーのよく分かった電子を物質に当て、出てくる光を観測する「逆光電子スペクトル」を使って決定します。光電子スペクトル測定の光源としては通常シンクロトロン放射光を用います。
Q.価電子帯の頂と伝導帯の底がちょっとでもずれると間接遷移になるのか。ぴったり合う方が特別なことと思うが(H2清水)→A.半導体の大部分では、一致しているか完全にずれているかのどちらかです。一致しているようでもよく見ると僅かにずれている場合がありますが、光の運動量で補える範囲ならば多少ずれていても直接遷移になります。
Q.光学遷移が強くないとなぜレーザ材料にならないのか(H2水澤)→A.レーザは光の電界によって、励起状態から基底状態に遷移する「誘導放出」が起きる必要があります。これが弱いと吸収よりも発光が多くならないので正味の誘導放出が起きないのです。
Q.明かりを消しても青白く光っている蛍光灯の原理は何か (H2水澤)→A.フォトルミネセンスのうち励起を切った後すぐに発光が減衰する場合を蛍光、切った後も発光が長く続いている場合を燐光というのですが、燐光が強い蛍光材料を塗布してあるのです。
Q.間接遷移のときのフォノンの放出についてよく分からない(H2渡邊整)→A.間接遷移によるフォノンの放出というのは、間接遷移が起きた結果、(それまで無かった)格子振動が起きたということです。
Q.バンド構造のところで出てきた空格子近似というのは何か(H1小田島)→A.結晶の周期性は考慮するが、ポテンシャルの大きさは0であるとするような近似のことを空格子近似といいます。
Q.なぜこの講義はH1,2,Pの合同か。人が多すぎて講義が出来ないのは予想が付いたはず。テストは教室を分けて欲しい(H1岩見沢)→A.確かに履修届は196出ていました。佐藤教官は、電子情報工学科の改組により物理システムに移籍したので、本来ならば「物性物理学」のみをやることになりますが、それでは、私の講義を期待していたH1,2コースの学生諸君を裏切ることになりますので、特別の計らいで移行処置として「光物性工学」との合同授業にしたのです。 テストは、君の意見をいれて、H1,2を81番で、Pを82番で行います。(7/28火曜2限)