エレクトロニクスII 佐藤勝昭教授(量子機能工学研究室)2002年度後期第9回配付資料 H14.12.13
金曜日1限 12番教室 テキスト「電子回路」
E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp URL: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/
注1VBE-IB特性とエミッタ回路の負荷曲線からグラフを利用して、エミッタ回路の動作点を決める。
VCE-IC特性とコレクタ回路の負荷曲線からグラフを利用して、コレクタ回路の動作点を決める。
第8回の問題
教科書の練習問題(6)を問題として出した。何名かの人はICを求めるのに、図3.25のIB-IC特性から求めた結果と図3.26のVCE-IC特性から求めたものを比べて異なっていることを示していました。図3.25の図はVCE=6Vの場合のIB-IC特性を表しています。これはICEがICBに比例することを示しているので、参考にしてください。
第9回に学ぶこと
教科書(竹村裕夫「電子回路の基礎」(コロナ社))にもとづいて自己バイアス回路、電流帰還バイアス回路、ブリーダ電流バイアス回路を学ぶ。
ブリーダ電流バイアス回路
ブリーダ電流バイアス回路ではブリーダ電流IA+IBをベースのバイアス電流IBの10倍以上にとる。
この回路は端子開放電圧VB=VCC×RA/(RA+RB)、内部インピーダンスR0=(RAとRBの並列抵抗)の電圧源と見なすことができる[1]。従って
R0=1/{(1/RA+1/RB)}=RARB/(RA+RB)
一方、IC»IB=hFE・IBであるから、REの両端には電圧降下VE=IEREがおきる。
VB=IBR0+VBE+VE= IBR0+VBE+IERE» IBR0+VBE+ICRE=R0IC/hFE+VBE+ICRE
両辺の微分をとると0=ΔIC(RE+R0/hFE)+ΔVBE
たとえば、RA=10kΩ、RB=3kΩとするとR0=2.3kΩとなり、hFE=100とするとR0/hFE=23Ωにすぎず、RE(通常2kΩ程度)に比べて無視できる。従って、ΔIC=-(1/RE)ΔVBE、VBEの変化に対するICの安定度Svは-1/REとなり、REを大きくとれば安定する。
入力の交流信号をvi,エミッタを流れる交流電流をiE,コレクタを流れる交流電流iCとする。R0の影響を無視すると、VB+vi=VBE+(IE+iE)RE=VBE+IERE+iERE
直流成分に対してVB= VBE+VE= VBE+IEREが成り立つので、vi= iERE» iCRE
一方、コレクタ電流について見ると、 VCC=(IC+iC)RL+VC+v0
直流成分に対してVCC= ICRC+VCが成り立つので、交流分についてはv0=iCRL
従って、交流に対する電圧増幅率AvはAv= v0/ vi= iCRL/ iCRE=RL/RE
このように、この回路の電圧増幅率Avは、AV=RL/REで与えられ、hFEを含まないので、トランジスタのばらつきや、hFEの温度変化の影響を受けない。
注1:図3.8, 3.9は、竹村裕夫「電子回路の基礎」(コロナ社)による。
注2:ブリーダバイアス回路の図は、飯高成男他著「絵ときトランジスタ回路」(オーム社)による。