熱流とスピン流という、これまで別々に論じられてきた流れの関係を明らかにし、2つの物理を統合することで、熱電変換材料、スピントロニクス双方の分野での物性理解を深め、新規な物性を開拓するという提案で研究を進めた。この目的のため、バルク自体は絶縁体であるが試料のエッジや表面が金属的でスピン流を運ぶ「トポロジカル絶縁体」に着目し、その熱電輸送を理論的に論じた。研究の結果、エッジ状態を用いると、ナノメータ程度の細いリボン状の系において低温で熱電輸送に優勢に働くことが明らかになった。また、領域会議における齊藤研究者とのディスカッションを通じて、絶縁体中のスピン波スピン流の熱輸送に着目し、先行理論の欠陥を発見しこれを補完する新しい理論を打ち立てた。これにより、マグノンの波束は、自転運動と、試料の外縁に沿って回る運動との2種の運動を両方同時に行うことが明らかにされた。強磁性体ではマグノンの波束の運動が熱ホール効果として観測することができるという提案も行った。
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