next-generation operando measurement team

2021.4.13 update

佐藤は、2019-2020年度、JST研究開発戦略センター(CRDS)において、次世代オペランド計測チームのメンバーとして協力した。
このページは、本グループの活動の一端の記録である。

戦略プロポーザルワークショップフォローアップチームメンバー

戦略プロポーザル

(戦略プロポーザル)機能解明を目指す実環境下動的計測の革新
~次世代オペランド計測~
(pdf 2.6MB)

エグゼクティブサマリー

 本提言では、物質内、生体内、あるいはデバイス内で起きている化学的、生化学的あるいは物理的な動的 現象を実際の使用環境、動作環境、製造環境のもとで計測し、その現象がもたらす対象の機能の解明に直接 的につなげていこうとする計測技術について述べている。このような計測は「オペランド計測」と呼ばれ、材料・ デバイスの開発における重要なツールになると期待され、すでに触媒や電池材料などへの適用が試みられてい る。
 従来の非使用状態、非動作状態における静的で断面的な材料やデバイスの計測情報とは質的に異なる有 益な情報が得られるようになっているが、材料やデバイスの特性・機能により直接的に迫るだけの情報は得ら れておらず、オペランド計測が本来持っているポテンシャルが十分に発揮されているとは言えない状況にある。 また、現状でオペランド計測が適用されている技術領域も限られており、より広範な材料・デバイス分野、さ らには生体内の生化学的な動的現象の計測によりバイオ・ライフサイエンス分野へも展開可能と考えられ、そ の可能性への期待は大きい。加えて、このような材料、デバイス、生体の機能に迫る深い科学的な情報が得 られることで、新たな科学分野が開拓される可能性も期待される。
 本提言では、これまでのオペランド計測が機能解明に十分踏み込めていなかったのに対し、機能の核心に 迫る計測、また触媒や電池などの特定の分野・領域が中心だったのに対し、他の材料系、デバイス、さらには 生体にまで踏み込めるよう手法を革新させた計測、の2 点が計測技術に求められている期待であると考え、 これらを満足する計測を「次世代オペランド計測」と称する。
 次世代オペランド計測技術によって、材料・デバイス・バイオなどの分野における研究開発で 先行を図るとともに、動的対象の機能を解明することで産み出される新しい科学技術の知見を通じて、我が 国産業の国際的な高い競争力につなげていくことが可能となる。その実現に向かい、現状のオペランド計測 が持ついくつかの問題点を明らかにし、その解決手段について以下に提案する。
 近年、環境・エネルギー問題の観点から、温暖化対策に有効な燃料電池や二次電池などのデバイス、省エ ネルギー・低環境負荷を促進する触媒材料などの新規開発や性能向上が強く求められている。それら社会か らの要求に対し、対象となる材料やデバイスの機能解明につながる計測技術であるオペランド計測が急速に 進展してきた。計測技術や計測機器の著しい技術進展もあり、優れた研究成果がすでに得られつつある状況 である。しかしながら、現状のオペランド計測にはいくつかの問題点があり、必ずしも喫緊の社会課題に対す る解決ニーズに十分に応えられていない。例えば、ナノの計測が実用サイズの機能に結びついていない、計 測結果が実環境での本質的な問題点を捉えきれていない、計測の空間・時間分解能が不十分、機能改善に 必要な材料特性を得る計測・解析プロセスが難解、などである。
 計測技術に対する期待と現状の間に存在するこれらの「ギャップ」によって、必ずしも計測対象の機能解明 に十分に踏み込めていなかった。さらには適用対象が非常に限定的であり、オペランド計測が本来持つ高い ポテンシャルを幅広い分野・領域に適用できていなかった。本提言は、現状のオペランド計測が持つ上記の ギャップを解消することで、材料やデバイスの機能を解明するための情報を提供しうる、さらには他の材料 やデバイス、加えてバイオ・ライフサイエンス分野なども含め、広範な分野・領域にも展開しうる、次世代 オペランド計測の確立を目指すものである。
 上記のギャップを解消し、計測技術に対する期待に応えうる次世代オペランド計測を実現するために今後取 り組むべき研究開発課題として、計測・解析技術に関する3つの課題と、データ科学技術に関する1つの課 題を取り上げる。具体的には以下の4つである。
  • 使用・動作条件が再現でき、計測対象に起きている実際の動的現象が直接的に計測できるモデル環境を 準備することで機能解明につながるデータ取得を可能にする、さらには生体組織などを対象とした計測 への適用を可能にする【①研究開発ニーズに合致した最適な「モデル環境」の開発】。
  • 多くの材料・デバイス・生体組織が持つ非常に複雑な階層構造とその機能との関係性を、複数の時間・ 空間スケールでの計測・解析から解明可能にする【②複合的計測システムの構築と、スケール間をつな ぐ計測・データ科学技術の開発】
  • 既存の技術レベルを超える計測分解能や、多くの手法で計測困難だった材料・デバイス内部、生体組織 内部、物質間界面などの情報抽出を実現することで、計測対象の機能解明や新たな科学的発見につなげ る【③高い計測分解能(時間・空間・エネルギーなど)の計測装置・技術の開発】
  • 進展が著しいデータ科学技術を活用し、計測・解析の高度化・高効率化を推し進めることで次世代オペ ランド計測を早期に実現させる【④データ科学に立脚した計測技術の開発】 これらは相補的であり、協調的に推進することで、それぞれの研究開発を効果的に加速することが可能となる。 以上の研究開発課題を協調的に推進するための方策として、以下4つを掲げる。
  • オペランド計測の深化、適用範囲拡大に向け、最先端の科学技術の研究開発を高度に融合させることを 可能とする
    【❶新たな科学の開拓や社会的課題の解決に向けた分野融合・連携】
  • 最先端のデータ科学技術の計測への積極活用を目指し、計測インフォマティクスに関連するプロジェクト との連携・強化を行う
  • 【❷計測インフォマティクスの導入によるデータ科学プラットフォーム化】
  • 分野融合・連携を進められる人材や、人材不足が顕在化する情報科学分野に理解のある計測の専門家 を育成・確保するための施策や、多くの分野の研究開発者が集う場(学会、拠点など)の構築などを行 う
  • 【❸人材育成・確保】
  • 幅広い分野のユーザーが最先端の計測技術を有効に活用できる環境を構築する
  • 【❹ユーザーの利便性を考慮した計測・解析システム構築】
    これらの方策を実施することで次世代オペランド計測が実現すれば、計測対象の機能を解明することで、喫 緊の社会課題に対する解決ニーズに応えることが可能になる。一方で、新しい計測手法は常に新たな科学的 発見を誘起してきた。次世代オペランド計測の主な計測対象である、不均質・不安定・過渡的な複雑系に対 する計測技術駆動の新しい学術分野の創出・発展につながる。様々な分野での科学的発見の歴史を振り返れ ば、この新しい計測手法が革新をもたらし、新たな分野を切り拓いていくことが期待される。

  • ワークショップ「次世代オペランド計測 ~機能計測による新しい科学技術へ~」開催

  • 開催日:2020年11月25日(水)9:00~15:00、 12月 2日(水) 9:00~16:20
  • 開催形式:リアル(TKP 市ヶ谷カンファレンスセンター 8B)とオンライン をミックスしたハイブリッド形式
  • ワークショップオーガナイザー:曽根純一 JST CRDS ナノテクノロジー・材料ユニット 上席フェロー
  • ファシリテーター:佐藤勝昭 ナノテクノロジー・材料ユニット 特任フェロー/東京農工大学 名誉教授
  • 開催趣旨
  • ワークショップ報告書(pdf 5.6MB)
  • プログラム
    プログラム (敬称略)
    【第一日目】
    開催日時:2020 年11月 25日(水)9:00 ~12:05
    開催形式:リアル(TKP市ヶ谷カンファレンスセンター 8B)とオンライン(Zoom)をミックスしたハイブリッド形式
    9:00 ~ 9:05 開会挨拶 曽根 純一(JST-CRDS)
    9:05 ~ 9:15 ワークショップの趣旨説明 赤木 浩(JST-CRDS)

    セッション1 研究開発ニーズ
    9:15 ~ 9:40 「ライフ・ヘルスケア分野における研究開発ニーズと計測シーズ」長我部 信行(日立製作所)
    9:40 ~10:05 「タイヤゴム開発におけるオペランド計測と京コンピュータ活用、計測シーズ側への期待」岸本 浩通(住友ゴム工業)
    10:05 ~10:30 「化学製品製造におけるオペランド計測と計測シーズ側への期待」松野 信也(旭化成)

    セッション2 計測技術シーズ
    10:45 ~11:10 「研究開発をDX化へ導く、放射光オペランド計測の課題と展望」高田 昌樹(東北大学)
    11:10 ~11:35 「レーザー光によるオペランド計測、およびニーズにどう応えるか」三沢 和彦(東京農工大学)
    11:35 ~12:00 「SPMによるオペランドナノ計測の紹介、およびニーズにどう応えるか」藤田 大介(NIMS)
    12:00 ~12:05 挨拶 曽根 純一(JST-CRDS)

    【第二日目】
    開催日時:2020 年12月 2日(水)9:00 ~16:20
    開催形式:リアル(TKP 市ヶ谷カンファレンスセンター 8B)とオンライン(Zoom)をミックスしたハイブリッド形式
    9:00~ 9:05 挨拶 曽根 純一(JST-CRDS)
    9:05~ 9:25 趣旨説明・セッション1,2の振り返り 赤木 浩 (JST-CRDS)

    セッション3 計測サービス企業
    9:25~ 9:50 「量子ビームオペランド計測のニーズとシーズをどうつなぐか」今井 英人(日産アーク)
    9:50~10:15 「X 線計測機器メーカーの技術シーズと計測の進化への期待」伊藤 和輝(リガク)
    10:15 ~10:40 「電子顕微鏡における時間分解能観察とレーザー光導入」沢田 英敬(日本電子)

    セッション4 新しい計測技術シーズ①
    10:55 ~11:10 「X 線、SEMなどによる電池のマルチスケール-オペランド計測(+シミュレーション)と「次世代」の方向性」 井上 元(九州大学)
    11:10 ~11:25 「放射光による結晶成長のオペランド計測と「次世代」の方向性」佐々木 拓生(QST)
    11:25 ~11:40 「接着界面のオペランド計測と「次世代」の方向性」田中 敬二(九州大学)

    セッション5 新しい計測技術シーズ②
    13:30 ~13:45 「透過型電子顕微鏡による触媒のオペランド計測と今後」橋本 綾子(NIMS)
    13:45 ~14:00 「液中AFMによる界面現象や生命現象のオペランド計測と「次世代」の方向性」福間 剛士(金沢大学)
    14:00 ~14:15 「中性子溶液散乱法によるタンパク質ダイナミクスのオペランド計測と「新世代中性子構造生物学」の方向性」 井上 倫太郎(京都大学)

    セッション6 総合討論
    14:35 ~14:45 「論点整理」 赤木 浩(JST-CRDS)
    14:45 ~16:15 総合討論(途中10分休憩)
    ファシリテータ:佐藤 勝昭(JST-CRDS /東京農工大学)
    論点:
    1)ニーズに応えうる次世代型のオペランド計測、という方向性は妥当か?有効な取り組みは?
    2) 重要な開発テーマは何か? 追加すべきテーマ、概念は?
    3) 次世代オペランド計測のために有効な取り組み(施策など)は?
    4)「オペランド計測の研究開発の時間軸」は妥当か?

    16:15 ~16:20 閉会挨拶 曽根 純一(JST-CRDS)

    フォローアップ

    メンバー

  • チーム総括:曽根純一 (ナノテクノロジー・材料ユニット上席フェロー)
  • リーダー:・赤木 浩 (ナノテクノロジー・材料ユニットフェロー)
  • メンバー:魚住 まどか 企画運営室( 横断・ 融合 担当) フェロー
    ・大山みづほ 企画運営室(事業 連携担当) フェロー/ ナノテクノロジー・材料ユニット フェロー
    ・尾山 宏次 環境・エネルギーユニット フェロー
    ・嶋田 義皓 システム・情報科学技術ユニット フェロー
    ・眞子 隆志 ナノテクノロジー・材料ユニット フェロー
    ・伊藤聡 ナノテクノロジー・材料ユニット 特任フェロー 計算科学振興財団 チーフコーディネーター
    ・佐藤勝昭 ナノテクノロジー・材料ユニット 特任フェロー 東京農工大学 名誉教授
    ・八巻徹也 ナノテクノロジー・材料ユニット 特任フェロー 量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所 上席研究員
    ・佐々木 達也 JST 産学連携展開部 主任調査員

  • 勤務先リンク
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