■061 バンドギャップが決める半導体の光学的性質

第061項の図 図1は、半導体のバンドギャップと光吸収の関係を示しています。図(a)のように入射光の光子エネルギーh?がバンドギャップEgより小さければ、価電子帯の電子は伝導帯に飛び移ることができず、半導体は光を吸収しません。これに対して、図(b)のようにh?がEgより大きくなると、価電子帯の電子は光のエネルギーをもらって伝導帯に飛び移り、価電子帯にホールを残します。こうして光キャリアが作られます。
光の波長λ[nm]と光子エネルギーhν[eV]の間には
  hν=hc/eλ=1239.8/λ (1)
の関係が成り立つので、光の波長とエネルギーは反比例することになります。このため、入射光の波長がバンドギャップに相当する波長(光学吸収端の波長λg)より短いと光を透過しなくなります。このため、半導体は吸収される色の補色に着色します。
図2は、いくつかの半導体について、バンドギャップと色の関係を示したものです。硫化亜鉛(ZnS)のバンドギャップは3.5eVなので、吸収端の波長354nmより短い光が吸収され、それより長い波長は全部透過します。このため、可視光のすべての波長が透過するので無色透明で、粉末は白です。硫化カドミウム(CdS)ではEg=2.6eVに相当する波長477nmより短波長の紫と青が吸収され、赤から緑の波長が透過するので黄色です。リン化ガリウム(GaP)では、Eg=2.2eVに相当する564nm(緑)より短い波長が吸収され、黄色と赤が透過するので橙色です。硫化水銀(HgS)はEg=2eVに相当する620nm(赤橙)より短波長が吸収され赤色です。ガリウムヒ素(GaAs)は吸収端が826nmにあり、可視光(380-780nm)をすべて吸収するので、透過光は目に見えませんから色は黒です。
半導体の着色現象を顔料(絵の具)に利用することができます。表1には、半導体の性質をもつ顔料について、色とバンドギャップの関係を示しています。


要点Check:
  • 半導体のバンドギャップを超える光子エネルギーの光は吸収される
  • 半導体の色は、吸収される光の補色であり、顔料に使われる