■012. 変換効率を100%にできない理由


第012項の図 現在の太陽電池の変換効率はせいぜい20%です。それでは、研究開発が進めば100%の変換効率が達成できるのでしょうか? 残念ながら、単独の太陽電池の変換効率が100%になることはありません。変換効率が100%にならないのは図1のようにいくつかの損失要因があるからです。
  1. 透過による損失
    シリコンの場合、「バンドギャップ」に相当する1.1?mより長い波長の光は透過してしまうので、太陽光のうち25%は電気に変換できません。
  2. 光学要因(反射や散乱による)損失
    表面散乱や反射があるために光が半導体に入らないので電気に変換できません。 シリコンは反射防止コーティングをしないと入射光のおよそ40%を反射します。(第2章に述べるように、反射防止膜やテキスチャー加工によって改善可能)
  3. 電圧原因損失
    開放端子電圧は拡散電位差を超えられないため、その差が損失になります。これを電圧原因損失といいます。 以上の損失を除いたものが【理論最大変換効率】です。この値は半導体のバンドギャップに依存し、シリコンでは26%、ガリウムヒ素(GaAs)では28%, CISでは23%となっています。(理論最大変換効率については、第5章で再度説明します。)
    実際の太陽電池では、さらに、図1の下図のように、【再結合損失】(光キャリアのペアが表面再結合、バルク再結合、背面電極再結合などによって再結合することで10%-20%が失われます。)、【ジュール熱損失】(半導体バルク内部の電気抵抗による発熱)などの損失要因のため、理想の値には達しません。

    要点Check:
  4. 太陽電池に入射した光のエネルギーは電気に変換される前に様々な理由で失われる。
  5. 実際の太陽電池では、さらに再結合や電気抵抗によるさまざまな損失を受ける。