2016年2月 絶版確定
講談社BOOK倶楽部
半導体物性
なんでも
-対話から生まれた半導体教本-

講談社, 2010年6月10日発行
税込み\2,730
350,000アクセスを誇る人気サイト「物性なんでもQ&A」が、読みやすくなった!
「授業で学んだけど……」的な「みんなの??」をわかりやすく解説。


<主な内容>
第1部 もっと知りたい!半導体デバイス
 p-n接合の拡散電位差/p-n接合ダイオードの順方向電流-電圧特性/シリコンにショットキー障壁を作る金属/パンチスルー現象/半導体素子の温度依存性/p-n接合の光電流/フォトダイオード/太陽電池/ソーラーパネルは発光するか/LEDの発光の原理
第2部 半導体物性のココが難しい!
 フェルミ準位はなぜバンドギャップの真ん中にくるのか/間接遷移・直接遷移は何によって決まるのか/バンドギャップの温度依存性/ホッピング伝導とトンネル伝導/水素化アモルファスシリコンの電子移動度とホール移動度/半導体の誘電率/ドーピングによってシリコンの色は変わるか/絶縁体はすべて透明か/半導体のサブギャップ吸収/半導体中の空間電荷制限電流の温度依存性/分極と光学遷移/半導体の光学現象の量子力学
アマゾンドットコムアマゾンの評価★★★★☆67%Amazon.co.jp ランキング(2010.7.3)
本 - 3,946位
本 > 科学・テクノロジー > 工学 > 電気工学 > 電子デバイス ─ 1位
本 > 科学・テクノロジー > 電気・通信 ─ 3位
(2010.6.28日) サイエンスポータルの「科学のおすすめ本」のコーナーで紹介されました。
これは教育の大切さを深く知り、かつ公共心に富む研究者にして初めて可能な珍しい本ではないかと思われる。
著者は日本放送協会基礎研究所で研究生活を送った後、1984年から2007年春まで東京農工大学教授を務めた。大学での授業の終了15分前に質問用紙を配り、翌週の授業の初めに質問に答えることを常としていた。2000年6月、それまでに蓄積されたQ&Aを項目別に整理し「物質の不思議Q&A」のコーナーを研究室のホームページに設けたところ、他大学の学生や企業の研究者から質問が寄せられるようになった。メールで寄せられた質問とそれに対する答えを「物性なんでもQ&A」というコーナーで紹介することをその年の10月から始め、大学退職後もサーバーをプロバイダーに変えて続けている。
本書にはこれまで公開した1,200件ものQ&Aから選んだ36の質問とそれらの関連質問に対する答えが載っている。半導体、金属、光、磁気など物性に関するさまざまな質問を引き受ける駆け込み寺のような役割を一人で続けてこられた秘訣(ひけつ)は、何か。質問と答えのページの間にところどころ挟まれている「コラム欄」から伺うことができる。
「学校で出た宿題・課題の解答を求める」「質問内容に一般性がなく特定の業務内容の詳細についてコンサルタント的な見解を求める」「図書館で通常のハンドブックや辞典を引けば出ている」「調査のための時間や費用がかかる」たぐいの質問には答えられないことを、サイトに明記しているのだ。
とはいえ、サービス精神旺盛な著者である。科学技術振興機構で「次世代デバイス」研究プロジェクトの研究総括を務める現在、ある大学院生の疑問に応え、その研究室まで出向いて装置を調整し正確な測定データが出るようにしてやった、といったエピソードも紹介されている。
質問と答えについてはこの分野に相当の知識を持つ人でないと難しいと思われるが、インターネット時代の理工系教育に関心がある多くの人たちに貴重な示唆を与える本と言えそうだ。
@ytmさんのTwitterに次のように紹介されています。
「佐藤勝昭「半導体物性なんでもQ&A」を買った。webは何度か見たことがあったが本になっているとは。書店ぶらつきもいいもんだ。Q&AのAも分かりやすくて良いがQの内容も結構ためになる。こんな質問できる学生は優秀なんだろうなーと。(3:51 AM Jun 20th Twittelatorから)
2010年11月02日:科学屋研究開発稼業の感想欄
「物性なんでもQ&Aには色々勉強になることが書いてありますが、それを書籍化したこの本は、妙にやさしい部分と専門的な部分が混ざっていていまひとつですね。なにより質問者が何を質問したいのかわからない、日本語になっていないんじゃないかってものまで記載されているのはいかがなものかな。」
2012年4月20日:読書メーターのSho Nagatomoさんの感想・レビュー(3)
「半導体物性の痒い所に手が届く教本。光学遷移機構とか知らんことが多すぎることに気づいた。」
まえがき

この本は、著者のWebサイト「物性なんでもQ&A」に寄せられた多くのご質問と、それに対する回答のうちから半導体に関するものを収録したものです。
半導体は現代の産業のコメとも呼ばれます。携帯電話、パソコン、テレビ、DVD、デジカメなどの電子機器はもちろんのこと、自動車の制御、ICキャッシュカード、交通ICカード、電子マネー、光ファイバー通信のためのレーザー、白色LED、信号機、太陽電池のようなエネルギー分野まで、半導体なしでは1日も生活ができないのです。
半導体デバイスの分野は進展が速く、常に積極的な開発が行われています。このため、新規材料の探索、既存材料・製品の改良といろいろな研究段階で基礎となる物性に立ち戻ることになります。
半導体を理解するにはかなりの基礎知識が必要です。学生時代に半導体の教育を受けた経験のある電気電子系の人でも実際の問題解決に直面したとき、「授業で学んだことがあるが身に付いていない」、「なんとなくわかっていたつもりだったけど・・」ということがよくあります。また、異分野の出身者も「教科書を読んでもわからない・・」、「どこから取りかかってよいか・・」と困っているかたも多いようです。
「物性なんでもQ&A」は、このようなお困り研究者の駆け込み寺です。それゆえ、ホームページに読者が集まり、それぞれの置かれた立場でそのつど再勉強しているようです。
この本では、ナマのホームページの雰囲気をできるだけ伝えるために、質問に対する回答を受けての再質問、それに対する回答・・というやりとりも再録しました。
ホームページでは、htmlで記述しているため数式がわかりにくい、図が少ないなど、やや不親切な部分もありましたので、この本では、数式の記述、適切な図の挿入などに手を加えました。また、WebのQ&Aでは質問者のレベルに合わせて専門用語の意味をわかっているとしてお答えしている部分があり、分野の離れた読者には不親切ではないかと考え、Follow upという項目を設け解説しました。
この本が、半導体を再学習する方々の助けになることを祈っています。
2010年6月
佐藤勝昭
目次
第1部 もっと知りたい半導体デバイス
Stage番号
タイトル
Follow Up
Stage 1.p-n接合の拡散電位を電池として利用できるか化学ポテンシャル,酸化還元電位,ドリフト電流と拡散電流
Stage 2.p-n接合ダイオードの順方向電流-電圧特性理想係数,pinダイオード
Stage 3.金属の種類とショットキー接合仕事関数,電子親和力
Stage 4.シリコンにショットキー障壁を作る金属 
Stage 5.バイポーラトランジスタのhFEの温度依存性 
Stage 6.パンチスルー現象 
Stage 7.半導体素子の温度依存性p-n接合容量,バイポーラトランジスタの電流増幅率hFE,MOSキャパシタ
Stage 8.p-n接合の光電流 
Stage 9.フォトダイオードについて 
Stage 10.フォトダイオードの受光領域 
Stage 11.太陽電池の理論的最大変換効率の導出法 
Stage 12.太陽電池の低温特性開放端子電圧Voc,短絡電流Isc,曲線因子FF
Stage 13.太陽電池作製に必要なシリコンの量 
Stage 14.ソーラーパネルは発光するか発光したとしても赤外線なので見えない
Stage 15.LEDの発光の原理 
第2部 半導体物性のココが難しい!
Stage 16.半導体のフェルミ準位はなぜバンドギャップの真ん中に来るのかフェルミ分布関数,状態密度関数
Stage 17.間接遷移がわからない三角関数を指数関数で表す
Stage 18.間接遷移・直接遷移は何によって決まるのかGaAsとGaPのイオン性と電子親和力および格子定数
Stage 19.シリコンの直接バンドギャップ吸収スペクトルから直接遷移か間接遷移かを見分ける
Stage 20.GaAs, GaPのバンドギャップ 
Stage 21.バンドギャップの温度依存性 
Stage 22.なぜZnOはn形で、NiOはp形か 
Stage 23.キャリア濃度 
Stage 24.ホッピング伝導とトンネル伝導 
Stage 25.水素化アモルファスシリコンの電子移動度と正孔移動度の差はなぜか水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)と単結晶シリコン(c-Si)の比較
Stage 26.半導体の誘電率に関する質問クラマース・クローニヒの関係式,ドルーデの式
Stage 27.ドーピングによってシリコンの色は変わるか 
Stage 28.絶縁体はすべて透明かモット絶縁体,アンダーソン局在
Stage 29.半導体のサブギャップ吸収フォノンによる赤外吸収,自由キャリアによる吸収,バンド内遷移による吸収,・・・
Stage 30.なぜ光伝導スペクトルを測定するのか 
Stage 31.半導体中の空間電荷制限電流の温度依存性 
Stage 32.オーミック電流より多く流れるのになぜ空間電荷「制限電流」と呼ぶのか 
Stage 33.縮退半導体の静電遮蔽効果 
Stage 34.形態の違うシリコンの物性値 
Stage 35.分極と光学遷移 
Stage 36.半導体の光学現象の量子力学量子力学,井戸型ポテンシャル,調和振動子ポテンシャル