第1章例題 回答例


updated 2011.07.14

1.半導体のバンドギャップを光学的に決めるにはどうすればよいでしょうか?

●半導体の薄い試料(両面研磨:厚さt)が得られるならば、分光透過率(光透過率スペクトル)T(λ)と分光反射率スペクトルR(λ)を測定します。
T(λ)に対して、次式で吸収係数α(λ)を求めます。
 T(λ)={1-R(λ)}2 exp{-α(λ)t}
波長λに対する吸収スペクトルα(λ)を光子エネルギーEについてのスペクトルα(E)にプロットし直します。
(1)もし、半導体が直接遷移型であれば、{α(E)E}2をEに対してプロットしたとき、直線になりますから、 その直線の延長がエネルギー軸を切るときのエネルギーEがバンドギャップEgです。
(2)もし、半導体が間接遷移型なら、{α(E)E}1/2をEに対してプロットしたとき、直線になりますから、 その直線の延長がエネルギー軸を切るときのエネルギーEがバンドギャップEgです。
 直接遷移型、間接遷移型とは何か調べてみよう。
 直接遷移型、間接遷移型のスペクトルのプロットを予習しよう。
●薄い試料が得られないとき、粉末など多結晶体の試料しか得られないときには、
(1)フォトルミネッセンスでバンドエッジに関与した自由励起子や束縛励起子の発光線が得られるならば、そのエネルギー位置に束縛エネルギーを加えることでバンドギャップを推定します。
(2)光らない試料の場合、光伝導スペクトル(PC)や光音響スペクトル(PAS)、
光熱偏向スペクトル(PDS)などから推定します。

2.化合物の組成を光を使って決めるにはどうすればよいでしょうか?

このためには、予め、組成比と光スペクトルの関係がわかっていなければなりません。
たとえば、GaAsとAlAsのアロイ(混晶)の場合バンドギャップが組成比に対してほぼ直線的に変化します。このようなときには、光吸収スペクトル測定等によってバンドギャップのエネルギーさえ測れば組成比がわかります。
破壊測定が許されるなら、溶媒に溶かして、誘導結合プラズマ発光法(ICP)、原子吸光分析法(AAA)などを使うことができます。

3.光を使って物質の結合状態を調べるにはどうすればよいでしょうか?

光電子スペクトルのケミカルシフトなどを見れば結合状態がわかります。
 ケミカルシフトについて調べてみよう!
酸化物中の遷移金属イオンのような局在電子系の場合は、結合状態に特有のスペクトルが見られます。
 遷移金属イオンの配意子場遷移について調べてみよう!
ラマンスペクトルを測定すると局所的な結合状態がわかることがあります。
 ラマン散乱について、物質の何が見られるのか調べてみよう。

4.光を使って金属錯体における金属の価数を決めるにはどうすればよいでしょうか?

金属錯体の光吸収スペクトルは、価数によって異なります。

5.光を使って半導体中の欠陥の面分布を可視化するにはどうすればよいでしょうかか?

エリプソメトリーで屈折率、消光係数の2次元解析をすると欠陥を可視化できます。
光散乱トモグラフィで、欠陥からの散乱光を可視化する。
発光の面解析

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