第2章 付録「復習:波動を指数関数で表す」


updated 2011.07.16

1.波を表す数式

三角関数をつかって波動をあらわせることはよく知っていますね。たとえば、交流の電圧は、V=V0 sin ωtと書き表すことができます。
これは、xy平面において一定の角速度ωで回転しているベクトルのy成分の時間変化を表しています。

正弦波は、回転するベクトルの射影

2.三角関数をexp関数であらわす

あとから出てきますが、波動方程式は微分を使います。正弦関数sinωtを微分するとcosωtとなり,cosωtを微分するとsinωtになります。このように波を表すのに三角関数を用いると微分するたびに形が変わります。

       (1)

もし三角関数の代わりに指数関数(exponential function)eを用いますと何度微分しても形は変わりません。ここにiは虚数単位です。

       (2)

3. オイラーの公式

実数部xと虚数部yをもつ複素数cはc=x+iyとあらわすことができます。
振幅1で位相角がθの複素数exp(iθ) をベクトル表示すると、ベクトルの軌跡は円を表します。xy各成分は、x=cosθで、y=sinθとなります。
従って、 exp(iθ) =e=cosθ +isinθ と書けます。これをオイラーの公式とよびます。

4. 三角関数を指数関数で表す

オイラーの式より

 exp(iθ) =e=cosθ+i sinθ
 exp(-iθ) =e-iθ =cosθ-isinθ

逆に解いて

 cosθ={exp(iθ)+exp(-iθ)}/2=(e +e-iθ)/2
 sinθ ={exp(iθ)-exp(-iθ)}/2i=(e - e-iθ)/2i

波の式を表す場合にcosωtの代わりにeiωtを使いますが、暗黙のうちに「expの形で演算し最後は実数部をとる」ことが前提となっています。
電気工学の交流理論では、電流を表すためにiを使うので、虚数単位をjで表し波動を ejωt で表すのが普通です。

5. 時間と位置の指数関数で表す

オイラーの公式 を使って指数関数で表すと 波動を (et-ikx +e-iωt+ikx)/2 と表すことができます。
あるいは、波動を et-ikx または e-iωt+ikx で表しておき、微分方程式などを解いて、得られた解の実数部をとるというやり方をとります。
以下では、波動をe-iωt+ikx で表して話を進めますが、 e-iωtのところで述べたのと同じく、実数部のみが意味をもつということが暗黙の了解になっています。

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