光物性工学 第13回プリント 佐藤勝昭教官 99.7.13

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教科書:佐藤・越田著「応用電子物性」(コロナ社)

第12回の学習事項(第12回はプリントを配布しませんでした)

太陽電池について;「佐藤勝昭太陽電池発電所」についてOHPで紹介、

光電変換を分類して説明 

 

外部光電効果

光電子放出

光を照射して物質から電子が放出される

光電子増倍管(フォトマル)

 

内部光電効果

光導電効果(光伝導)

光照射により半導体の抵抗が低下する

光導電センサ(CdSなど)

撮像管

光起電力効果

pn接合に光を照射し起電力または電流変化として検出

フォトダイオード

フォトトランジスタ

太陽電池、CCD撮像板

 

 

第12回の問題:太陽電池の発電原理を簡単に述べよ

[解答] pn接合に太陽光を当てると、電子と正孔が発生するが、空乏層の内蔵電位差により電子はn層側に、正孔はp層側に引き寄せられる。外部回路を短絡すると、この電子・正孔が流れる。これが太陽電池の短絡電流となる。外部回路を開放するとn層に蓄積された負電荷とp層に蓄積された正電荷の作る起電力が生じる。これが開放電圧である。

 

第12回のQアンドA

  1. 自宅太陽電池はメンテナンスは必要か(神田)→A. メンテナンスは不要です。
  2. どのようにして電気を売るか(神田)→A. 売電用メータと買電用メータが別々に付いています。
  3. 位相あわせの手間は(神田)→A. インバータは自動的に判断して位相を併せます。」
  4. 電力会社に電気を売って設備投資のもとはとれるか(花田)→A. 電力会社から振り込まれるのは月に平均4000円くらいですから、我が家の場合120年かからないともとはとれません。最近では、装置の価格が下がっており、かつ、通産省からの補助金があるので、50年くらいでもとがとれるでしょう。ただ、環境のために行う投資は、元がとれるかどうかでは判断すべきではないと思います。
  5. 雪国で太陽電池を使うのは大変そう(花田)→A. 安い深夜電力で太陽電池に順方向電流を流すと発熱して雪が積もらないようにすることも出来るそうです。
  6. 初めのスライドの中で、ガスを使わずハロゲン〜で料理を作っていると聞いたがどんな仕組みか(高橋)→A. ハロゲンランプといって「ハロゲンガスを封入したタングステン白熱電球」を用いています。この電球からの赤外光は調理器のガラスに吸収され熱に換わります。鍋の底が平坦でなければなりませんが、十分高温に出来ます。
  7. 開放状態でp層とn層のバンドは完全にフラットになるか。それ以上開放電圧は上がらないのか(佐藤広)→A. 完全にフラットなら開放電圧はEgとほぼ同じになるはずですが、実際には、空間電荷領域での再結合があるため、そんなにフラットになりません。シリコン太陽電池の開放電圧はEgの半分くらいです。電圧は光を強くしても上がらず、電流が増えるだけです。
  8. 最近の太陽電池は軽量化しているのか(木村)→A. アモルファスシリコンなどの薄膜太陽電池ではかなり軽量化しています。
  9. アモルファスシリコンは特性が劣化するといっていたが結晶構造に関係があるのか(替地) 劣化が激しいということは太陽電池として使えないのか(古賀)→A. アモルファスは結晶ではないので「結晶構造」はありません。アモルファスシリコンは正確には「水素化アモルファスシリコン」で、a-Si:Hと書かれます。この水素がアモルファス構造に存在するダングリングボンド(未結合手)を無力化していますが、強い光に曝されると結合から水素が移動し、ダングリングボンドが増加し、電池の効率が劣化するのです。しかし、長期暴露試験では、ある程度温度が高いと、夜中に回復しますので、効率8%位で下げ止まるそうです。
  10. 越田先生の授業でFFはfill factor (曲線因子)と習ったが、今日習った形状位因子と同じものか(藤本)→A. 申し訳ありません。FFはfill factorが正解です。FF(form factor形状因子)は、磁性体のヒステリシス曲線に関するものでした。お詫びして訂正します。
  11. 反射防止コーティングは青より黒の方がよいのではないか(中山博)→A. 透明な誘電体膜によるコーティングの色は干渉の結果特定の波長成分が強く反射したためです。黒になることはありません。
  12. 太陽電池を航空機の屋根に付けたらどうか(中山博)→A. 太陽電池は結構重いものですし、強い流れに曝されますから密着させるのも困難です。
  13. インバータエアコンのインバータはどんな働きをするか(中山博)→A. 回転速度を変えるのに、電圧の変化によらず周波数の変化によっているのです。
  14. pn接合に順バイアスをかけると電流が流れるのは電子が供給されるためか(中山博)→A. 順バイアスをかけると内蔵電位差が減少し、n層からp層への電子核酸、p層からn層への正孔拡散が増加し、その結果順方向電流が流れます。(自分でよく考えて下さい)
  15. 宇宙空間ではフォトンエネルギーをより強く受けるという話を聞いたが、どれくらい出力アップするのか(大和)→A. 地球上の空気によるロスが無いので、地球付近の宇宙での太陽光のエネルギー密度は1.4kW/m2ですから、地上の約1.4倍です。
  16. インバータの働きをもう一度説明して欲しい(森岡)→A. 授業では高い周波数を使っている話をしましたが、正確には、図のような原理を使っています。この図では、インバータの出力が正弦波になるように制御を行うもので、出力電圧の位相を系統電力の位相に一致させることにより、高い力率と低い歪み率を得ることができます。トランジスタまたはサイリスタを用い、右図の一番下に示すように正または負の矩形波形を作り、そのパルス幅の制御でアナログの電圧を作っています。
  17. カルコパイライト型というのは何か.(古賀)→A. シリコンはダイヤモンド構造をもつW族半導体ですが、これをU族とY族に置き換えると、閃亜鉛構造のUY族半導体が出来ます。さらに、U族元素をT族とV族に置き換えると、T-V-Y2族の半導体になります。結晶構造は、下図の右の方に描いてあるように、閃亜鉛鉱構造を2段重ねにした形です。この構造は天然にある鉱石の黄銅鉱(chalcopyrite)と同じなのでカルコパイライト構造というのです。カルコパイライトのc軸の長さは、閃亜鉛鉱構造のa軸の長さの2倍とは少し異なり正方晶系です。
  18. (佐藤勝昭:「高輝度青色発光のための電子材料技術」第5章(平木昭夫編, サイエンスフォーラム1991)p239)

     

  19. 太陽電池の再利用は可能か(古賀)→A. 寿命を決めるのは、封止剤や金属配線等ですから、半導体を取り出して再利用できます。作るときから、壊すときのことをを考えながら製造をするのです。