光物性工学(H1,2コース),物性物理学(Pコース),佐藤勝昭教官1998.6.16配布資料

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6(98.6.9)の授業の要点

電子分極の量子論(教科書p.161-162

  1. 量子論の基礎となることを学習 (参考:教科書p.2-6

  1. 波動関数φ、存在確率|φ|2=φ*φ
  2. 物理量Aには演算子Âが対応:例 運動量p;エネルギーE
  3. 運動方程式にはシュレーディンガーの波動方程式が対応:
  4. 観測される物理量→物理量の期待値:

  1. ポテンシャルの例:U(r)=-Ze2/r (中心力)→原子の波動関数(球面調和関数)、
  2. U(x)=1次元箱型→量子井戸準位

  3. 電子分極:電界による摂動を受けて波動関数の形状がひずむ。→基底状態に励起状態が部分的に混成。時間を含む摂動論:教科書p24参照。

 

6回の問題回答

問題 電子の波動関数φが平面波φ0exp(ikr)で与えられるとき、運動量pの期待値<p>を求めよ。

→解答  

質問への回答

Q.ハミルトニアンの意味が分からない(H2水澤)→A.全エネルギーに相当する演算子です。

Q.バンド図の見方や使い方がよく分からない。(H2塩谷)→A.今回および次回に説明します。教科書のp.57-59に書いてあります。

Q.存在確率は波動関数の実数部ですが虚数部は何か役割があるのか(H2チュア)→A.存在確率は、波動関数の絶対値の2乗であって、実数部ではありません。波動関数が複素数で表されるのは、振幅と位相を持つ量であるということです。

Q.箱形ポテンシャルとはなにか(H1小田島)→A.ポテンシャルエネルギーが矩形のように急峻に立ち上がり、たち下がるようなものを言います。本来、結晶格子のポテンシャルを表すために仮想的な導入されたものですが、最近では、半導体でp88にあるような構造が人工的に形成されるようになりました。

Q.箱形ポテンシャルに電子が閉じこめられるというのが分からない(H1小田島)→A.p.86に詳しく出ていますが、試料の構造と電子のドブロイ波長が同程度になると、電子が閉じこめられる効果が起きるのです。

Q.摂動論は電気コースでも必要になるか (H1小田島)→A.ほとんど必要になることはありませんが、量子デバイスの関係に従事すれば、教養として知っていた方がよいと思います。

Q.摂動では光の放出は起きるか、起きるとしたらプラズマ周波数の光を放出できるか(H1中野)→A.光の電界の摂動を受けて励起状態から基底状態へ遷移が起きることを誘導放出といいます。自由電子のプラズマ振動は、金属でなければ置きませんが、金属では誘導放出など発光遷移は起きません。

Q.ニュートリノの質量はどうやって測ったのか(H2大角)→A. まだ質量の大きさまでわかったということではなく、ニュートリノに質量が有るらしいと言うことがわかっただけです。これは、スーパーカミオカンデという神岡鉱山の地中孔を利用して宇宙線の飛跡を自動記録する装置で見いだされたもので、地球の裏から地核を通ってきたニュートリノのμ粒子とτ粒子の分布に差が生じており、統計的誤差以上の有意なものであることがわかったことから推論されています。なぜなら、質量がなければ、μ粒子からτ粒子への転換は起きないということがわかっているからです。(ニュートリノについての詳細は、最新号のパリティに載っています。)[P科の江村先生に聞きました。]