光物性工学(H1,2コース),物性物理学(Pコース),佐藤勝昭教官1998.6.2配布資料

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第5回(98.6.26)の授業の要点

光学現象の微視的機構、イオン分極と誘電率(教科書p.157-158)

 

第5回の問題回答

問題 誘電率の周波数分散の図を描き、各部分がどのような分極から生じているかを記せ→解答 前回の資料のとおり(図1参照)

 

  図1

質問への回答

Q.配向分極やイオン・電子分極は高電圧工学の講義でも出てきたが何か関連があるか(H2水澤)→A.高電圧工学では、絶縁材料の誘電率や誘電損失が問題になります。光物性工学では、光の屈折、吸収に誘電率が関与します。ただし、周波数領域が異なります。

Q.誘電率の実数部の周波数分散においてなぜ図2のような形状になるのか(H2、K君)→A.君は、授業に遅刻したか、授業中寝ていたかのどちらかですね。授業中に説明しましたが、運動方程式において摩擦項が無いときにはω0で発散するが、摩擦項があると、発散がなくなって「分散型」のスペクトルになるのです。[はじめに図をみたとき分散形状になる理由を知りたかったが授業中に解りました。ありがとうございます(H2山崎)という声もありました。念のため]

 

図2

Q.誘電率の周波数分散のところで出てきたベル型の形状が何だかもう一度説明して欲しい(H2沼沢)→A.誘電率の虚数部の周波数分散を表しています。もし、摩擦項が無いときには、虚数部(吸収項)の形状は、δ関数になりますが、摩擦項があると釣り鐘型の形状となります。なお、誘電率の実数部と虚数部の間には、クラマースクローニヒの関係式が成り立ちます。摩擦が大きいほどベル型が幅広くなります。

Q.誘電率の虚数部の曲線の形が鋭ければ鋭いほど何に対してよく、なぜよいのか。(H1中野、登守)→A.共振回路のQ値のことは知っていますね。誘電体は、それ自身、赤外線に相当する振動数において共振回路となっているのです。Qの大きな共振回路は損失の少ない系です。良質の誘電体は、共振曲線のベル型が鋭くなります。

Q.軸の単位・大きさが分からない。特にポラリトンのところ(H2坂本)→A.フォノンのω01013rad/sのオーダーですから、Kとしては103cm-1の程度です。

Q.今日の授業でと書いていたがではないのか (H2渡邊(真))→A.すみません。ご指摘のとおりです。

Q.古典的運動方程式の減衰項はどのような理由から発生するのか(H2米光)→A. イオンが移動しようとするとき周りのイオンは止まっていますから相互作用のため、移動速度に比例した摩擦力を受けるのです。

Q.式(4.42)が導出できなかった(H2渡邊(整))→A.という近似を使って下さい。

Q.蛍光灯は明るいのに熱があまりでないのはなぜか(H2グエン)→A.白熱灯は、電流によって発生した熱の10%程度しか可視光として放出しておりません。蛍光灯では、放電によるエネルギーの大部分が光のエネルギーとして放出されます。それで、熱があまりでないのです。

Q.授業中にイオンは重いと言っていたが何に比べて重いのか(H2チュア)→A.電子に比べ3桁以上重いのです。

Q.イオン分極の影響がマイクロ波まで及ぶということが分からない。(H2チュア)→A.誘電率の虚数部の大きさがマイクロ波領域でも無視できないということです。

Q.格子振動と原子振動の違いは何か(H2チュア)→A.結晶では原子がきちんと並んで格子を作っていますから、1つの原子の振動は結晶格子全体にわたりますが、ガラスなどでは格子がきちんとしていないので、原子振動は局在し、結晶全体の固有状態とはならないのです。

Q.配向とはどういう意味か(H2林辺)→A.双極子の向きが電界によってその方向に向くという話です。

Q.電子分極の説明をもう一度して欲しい。(H1石川)→A.本日(6/2)に説明します。

Q.電磁気は想像できそうで出来なくて難しいので、機会があったら実演して欲しい(H1渋谷)→A.電界や磁界は抽象概念なので下手に実演するとミスリードする可能性があります。電気電子や物理の学生が機械や化学の学生よりつぶしが利くのは、この抽象的な概念に対する抵抗感がないからと言われています。