光970610 光物性工学970610
H1,2コース 光物性工学 佐藤勝昭教官1997.6.10配布資料


第6回(97.6.3)の授業の内容:

シリコンの6インチウェハーの実物回覧。シリコンの反射率は、およそ30% (n=3.5κ=0として見積もってみよう)
金属の反射:プラズマ周波数の付近で急激に反射率が低下。高い反射率;銅:赤、金:赤−緑、銀:可視光すべて。
  

  •  束縛電子の誘電率:虚数部-ベル型の曲線、実数部-ベル型を微分したS字をヨコにしたような曲線。
  •  誘電率の実数部と虚数部との間:クラマースクローニヒの関係式が成立する。 

  • 第6回の問題回答


    問題1:シリコンはなぜ銀色なのか。
    解答:シリコンは教科書の図4.10(p.167)にあるように、赤(2eV付近)で32%、緑(2.5eV付近)で38%、青紫(3eV)で45%というふうに可視光領域をすべて同程度反射しており、やや青味がかった灰色である。よく研磨された面では、周りの写り込みがあって、いわゆる銀ぴかに見える。

    問題2:金はなぜ金色なのか。
      解答:プラズマ周波数が、2.5eV付近にあって、赤−黄−緑の反射率が高く、それよりエネルギーの高い青−紫の反射率が低いため、黄色であるが、研磨面は周りの写し込みがあるため複雑な金色となる。


    質問への回答


    Q1. シリコンの色はp型、n型などで変化するか(H1石亀)→A.非常に高濃度に不純物をドープしますと自由キャリア数が増え、Drude則のため低エネルギーに向かって反射率が上昇します。しかし、通常のデバイスの濃度程度では赤外線止まりで、可視光領域まで変化がでることはありません。赤外線のスペクトルをきちんと評価すると、同じドープ量でもn型なの方が有効質量の小さな電子が関与するので正孔より高いエネルギーまでドルーデ反射の裾をひきます。
    Q2.太陽光発電のエネルギー変換効率(H1川口)→A.単結晶シリコン:17%(特殊な構造にすると24%にまで向上できる)、多結晶シリコン15%、アモルファスシリコン薄膜12%、GaAs薄膜:25%、CIS(=CuInSe2)薄膜:18% (ただし、これらは、小面積のセルの効率の最高値です。モジュールにすると数%効率が下がります。また、アモルファスシリコンでは光劣化があるので、使用しているうちに効率が下がります。
    Q3. シリコン単結晶はなぜ円筒形か(H2岸本)→A.チョクラルスキー法といって、シリコンの融液に種結晶を浸漬して、回転しながら引き上げる方法を採っているからです。
    Q4.レーダーに映らない「見えない飛行機」の形状は特殊な形状であったように記憶しているが形状も関係するのか (H1児玉)→A.はい。機体表面に貼り付けた磁性体の強磁性共鳴と、なるべく反射を少なくする形状の工夫とによるものです。
    Q5.プラズマ周波数というのは「プラズマ」が関係するのか(H2鳥海)→A.プラズマとは、正電荷と負電荷が集団として分離した状態です。金属では、原子核の正電荷と自由電子の負電荷の重心の位置が一致していて中性でかつ分極0の状態になっており、赤外線を受けて電子の集団運動が起きて正負の電荷の重心が分離され分極が生じる。この状態を「プラズマ」と呼んでいる。
    Q6.シリコンをピカピカに磨くと表面の格子がそろって反射率が上がるのか(H2渕上)→A:研磨によって表面の凹凸が光の波長程度になると反射率が高くなります。
    Q7.H1コースでH2の研究室に行く方法?(柳川)→A.来年度の卒業研究からある枠を設けて相互乗り入れをしようと検討しています。
    Q8.赤色LEDは発光しないときも赤いのに、青色LEDは発光しないときなぜ透明か(阿部)→A.赤色LEDの発光帯は橙色にまで裾を引いているので、これをカットして純度の高い赤にするために赤のフィルターを入れる場合があります。青のLEDは色の純度が高いのでフィルターを必要としません。
    Q9.偏光を使った立体テレビの左右両眼に写す光の区別はどのようにしているのか。(阿部)→A.液晶などを使ってフレーム時間順次で左右偏光を交互に出力すればよい。
    Q10.夜でも昼と同じように見えるサングラスの原理?(佐藤博)→A.私は見たことがない。わかりません。
    Q11.シリコンの単結晶を作るのは何が難しいのか(H2福本)→A.単結晶を作るだけなら、そんなに難しくはありません。大面積にわたって、不純物や欠陥がない「完全」に近い結晶を作るのが難しいのです。また、ドープした結晶では不純物が全体にわたって均一に分布してなければなりません。こういう点に難しさがあるのです。


    光物性工学の講義