光970527 光物性工学970527
H1,2コース 光物性工学 佐藤勝昭教官1997.5.27配布資料


第4回(97.5.20)の授業の内容:

  •  偏光板を実際にさわる。
  •  誘電率のミクロな起源:物質中の電束密度は、真空の電束密度に分極が加わったもの。
  •  D=εE=ε0E+P 従って、誘電率は分極の出来易さの尺度。電気感受率χとすると、
  •  D=ε0 (1 + χ)E 比誘電率εr=1+χ 
  •  誘電率のもとになる分極の起源→誘電率の周波数分散

  • 第4回の問題回答


    問題1:誘電率に寄与する分極にはどのようなものがあるか。
    解答:界面分極、配向分極、イオン分極、電子分極


    質問への回答


    Q1.負の誘電率のものはデバイス等に使用できるか。その特性はどうなるのか。 (H1石亀)→A.授業で述べたように金属においては、赤外線、可視光線に対する誘電率は負です。金属はデバイスの電極や配線などに使っています。デバイスでは金属の導電率を使っているので、誘電率がいくらであるかは問題になりません。
    Q2.誘電体の中で分極することによって光はどれくらい遅くなるか(H2飯島)→A.屈折率をnとすると、物質中での光の速度vはc/nになることは、以前に説明したとおりです。n=√εr
    Q3.液晶分子とは(H1小野寺)→A.液体では構成分子がランダムな方向を向いていますが、液晶では構成分子が平均として特定の方向に配向しています。このような状態を液晶といいます。温度が上がるとランダムになってふつうの液体になります。
    Q4.バンド間遷移とは何か(H1笠原)→A.本日説明します。教科書p161-163参照。
    Q5.応力によって誘電率はどのように変わるか(P勝又 )→A.押しつけられるとその方向の原子密度が高くなり、屈折率が増加します。
    Q6.分極の周波数依存性の理由がわからない(H2落合) →A:分極はイオンや電子が電界で移動することによって起きますが、イオンも電子も重さがあるので、電界の振動が速すぎるとついていけなくなって、分極が小さくなるのです。
    Q7.誘電率の虚数部を誘電損失というのはなぜか。これもなぜ周波数に依存するのか(H2落合) →A.コンデンサCをC=C‘+iC“とおいてごらん。第2項は抵抗と同じ働きをします。この損失は、全問で述べた電界の振動についていけなくなったときに強くなります。従って、周波数に依存するわけです。
    Q8.電子分極の場合、電子の重さが物質中での速度を決めるのか。光が通ったとき電子の重さが変わることはないのか(H2小島)→A.ドルーデの法則では電子の重さだけでなく、電子の密度が誘電率に寄与します。詳細は、本日説明します。通常の強さの光によって電子質量が変わることはありません。
    Q9.金属以外に電子レンジで温められないものはあるか(佐藤)→A. 絶縁性のセラミクスは誘電損失が少ないので加熱できません。
    Q10.分極を言葉で表すと何を表すか(H2篠原)→A. 電気分極が起きると正電荷と負電荷の重心がずれる。これが誘電作用のもとである。
    Q11.教科書では誘電率の減衰は考えないで説明してあるが、誘電率の減衰の理由は何か(H2釣崎)→A.誘電率の虚数部という概念は、誘電率の減衰ではなく、物質中の電束密度の減衰を表している。
    Q12.ガラスの中で光の速度が遅くなるのは相対論の光速度一定と矛盾しないか。(H2鳥海)→A.相対論で言う光速は真空中の光速です。物質中では「光」の速度が遅くなるのではなく、光と分極波の混成状態の速度が遅くなると考えればよいでしょう。
    Q13.偏光レンズによる3D映画は、スクリーンからの反射なのになぜ飛び出して見えるのか。(H1浜崎)→A.3D映画では、右目で見た時の映像と左目で見たときの映像を直交する偏光で映写しています。もちろん、スクリーンで散乱反射されるときに偏光は乱れるのですが、ほとんど垂直入射に近いので、偏光の大部分は保たれ、右目と左目に対応する偏光が来るように偏光めがねの透過方向を合わせておけば、立体感のある映像が見られます。
    Q14.太陽電池や発光ダイオードの寿命がくるというのは半導体がどうなるのか。(H2二瓶)→A.半導体が劣化するというよりは、電極の金属の腐食・疲労、封止剤のプラスチックの劣化などが原因の大部分です。発光デバイスの劣化は、再結合によって生じた熱によって結晶の欠陥が増加することによって起きる場合があります。
    Q15.なぜX線に対して比誘電率は1になるのか。(H2又吉)→A.X線くらいの高い振動数になると、電子ももはやついていけないので、分極が起きないのです。P=χEですから、χ=0。従って、εr=1+χ=1となります。(正確には、x線領域での屈折率は1より小さいので、誘電率も1より小さい値をとります。εr<1ということは電気感受率χが負であるということを意味しています。これは、閉殻の分極を考えてはじめて説明できます。
    Q16.分極に共振現象はあるか(H2宮川)→Aあります。これによって周波数特性に分散構造が生じるのです。
    Q17.比誘電率は周波数以外の外部パラメータ(たとえば温度)にも依存するのか(H1和賀井)→Aよい質問です。誘電率は、温度、応力、電界、磁界などに依存します。光の電界に依存するときには非線形光学現象が起きます。
    Q18.授業で電子レンジの話が出たが、物質の固有周波数は具体的にはどのような要素で決まるか。(H2早田)→A本日の授業で説明しますが、水分子のような配向分極の場合は、復元力がないので固有周波数は誘電分散の緩和時間τで決まる。τの逆数が配向緩和による誘電分散の振動数の目安を与える。教科書p210-212。一方、イオン分極の場合にはp157の4.53式のω0のように格子振動の周波数で固有周波数が決まります。電子分極の場合には、電子の集団運動のプラズマ周波数または、電子準位間の光学遷移の周波数で決まります。

    光物性工学の講義