H1,2コース 光物性工学 佐藤勝昭教官1997.5.6.日配布資料

第2回の授業の内容:光の伝搬

光は電磁波、周波数はどのくらいか。
中波、短波、超短波、極超短波、センチ波、ミリ波、サブミリ波、遠赤外、赤外、近赤外、可視、紫外 それぞれの周波数は?AMラジオ、FMラジオ、TV1-12CH、UHFTV、BSはせれぞれどの周波数か。 光の電界、磁界ベクトルはMaxwell方程式に従う。角周波数ω、波数kの波を指数関数型で表し、方程式に代入。ここで波数kは複素屈折率(を使って表せる。Dは誘電率と電界の積で表される。などを使うと、複素屈折率と誘電率の関係がでてくる。(教科書p147-148)

第2回の問題回答
問題1:屈折率n=1.5, 消光係数κのとき複素比誘電率εrrr"を求めよ


解答:εr=(n+Iκ)2=(1.5+0.5i)2=1.52-0.52+2*1.5*0.5i=2+1.5i 複素誘電率というのを誘電率の虚数部と勘違いしている人が多い。それから、実数部として1.52+0.52とした人が何人もおりました。
第2回の宿題:教科書問題4.1とおなじ。教科書ではn~の代わりにNとかかれていることに注意。

質問への回答 Q1.E=E0e-iωtei(n+iκ)ω/c→|E|2=|E0|2e-2κωx/c の導出過程がわからない(H2落合)→A.|exp(x)|=1を思い出してください。
Q2.光ファイバーの通信方式と、ふつうの有線通信方式の違いを知りたい(H2淵上)→A.光通信では半導体レーザの電源にPCMで符号化されたディジタル信号が送られ、パルス光(光の点滅信号)に変換されてファイバ中を伝搬します。信号を乗せているのが電流か光かの違いがあるだけで、通信方式に大きな差はありません。通常の同軸ケーブルは導体の抵抗損失のため、10-20km程度進むと減衰しますが、光ファイバならば100km-200kmもの長距離を減衰せずに進みます。同軸ケーブルは直径が数mmありますから、たくさん束ねると大変ですが、光ファイバは1本の直径が数(mと細いので、何本も束ねることができます。また、光ならば波長多重化が可能です。デメリットは設置コストが高いことですが、中継器の少なさ、送ることのできる情報量の多さを考えると、却って安いのです。
Q3.屈折率がヨコと長さ方向で違う物質はあるのか、もしあれば、小さい面積に光の速度を落とさずに光素子を組み込めると思うが(H2小島)→A.方向によって屈折率の異なることを光学異方性といいます。教科書の149-150にかかれています。ただし、教科書にでているのは進行方向に垂直な2成分の違いです。しかし、現実には屈折率の差は小さく、ある方向の光の速度を落とさない、つまりn=1というような物質はありません。
Q4.( を言葉で言うと何か(H2篠原)→A複素屈折率といいます。屈折率の概念を複素数まで拡張したものです。
Q5.Maxwellの方程式を解くときにJ=0としたのはなぜか、またそのことで問題はないのか(釣崎)→A.Maxwell方程式においてexp(-iωt)型の解を仮定したとき、右辺は-iωεE+σEと書けますから、改めて-iωε+σを、-iωεとおけば、導電率を誘電率に繰り込むことができます。
Q6.消光係数と吸収係数の物理的意味(H1橋上) →A:消光係数というのは、物質中での光の電界の振幅の減衰の程度を表す尺度です。電界の減衰の様子はexp(-κωx/c)で表されます。x=c/κωのとき、振幅は1/eに落ちています。一方、吸収係数αというのは、光の強度の減衰の様子を表すパラメータです。光がx=1/α進むと、強度は1/eになります。消光係数との関係はα=2κω /c(教科書の(4.5)式)で与えられます。
Q7.光の周波数では、比透磁率が1となる理由を詳しく教えてほしい。(H2原嶌) →A.比透磁率(rというのは印加磁界Ba(=μ0H)と磁束密度Bの関係を与える係数です。すなわち、B=μr Baです。物質中に誘起された磁化をMで表すと一般にB= Ba+μ0Mと書けますから、μr=1というのは、M=0ということです。低い周波数の間は、磁界を受けて物質中の磁気モーメントが磁界の方向に向くことによって磁気分極(磁化)を生じますが、光くらいの高い周波数になりますと、磁気モーメントが磁界の変動に追従できなくなるため、M=0になると考えられます。追従できなくなる臨界周波数は強磁性共鳴の周波数で、磁性体によりますが、超短波からマイクロ波くらいのところです。
Q8.吸収された光はどのようになるのですか。(H2又吉)→A.電子物性工学Uで学んだように、半導体で光が吸収されると、価電子帯から伝導帯へ電子が励起されます。
Q9.消光係数はなにを原因として決定するのか(H2宮川)→A.消光係数は吸収係数と同じ物理的意味を持ちます。要するに、光によって価電子帯から伝導帯への遷移が起きると光が吸収されるのです。
Q10.PCMで時間多重できることはわかったが、他に光通信にPCMを用いるメリットがないのか。(H2阿部)→A.PCMでは、0,1の信号しか扱わないので、伝送中に信号が減衰したときにもSN比を改善しやすい利点があります。
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