電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1999.1.29

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp, Home page: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/; 教科書:佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社)

第13回(1.22)の学習内容

超伝導2:[実験]高温超伝導体における冷却時の電気抵抗変化の様子とマイスナー効果による永久磁石の浮上

[講義]教科書p.278-280 キーワード:浸入長λ、コヒーレンス長ξ、第2種超伝導の上部臨界磁界Hc1・下部臨界磁界Hc2、臨界電流Jc、超伝導の応用(電力応用、ジョセフソン素子、SQUIDほか)、超伝導の原理、ロンドンの方程式

第13回の問題

超伝導の存在範囲を図示せよ。→解:右の図

第13回の質問・印象・要望

実験について

  1. 実験で使った抵抗測定法の4端子法のことが分からなかった。(山中、モ・ザイス)→A. 2端子法で抵抗を測定すると物質と電極との接触電位差のため見かけ上大きくなってしまいます。そこで電流端子I+とI-の間に電流Iを流し、V+とV-の電位差? Vを測定するのです。抵抗は? V/Iを測定すれば求められます。接触電位差の影響は、電圧の差をとることによってゼロにできます。金属の抵抗率を測定するにはこの方法しかありません。
  2. 実験では下が超伝導で上が磁石だったが、逆にしても浮くのか(中山)→A. YES. 普通は逆にして見せています。
  3. 超伝導の実験で浮かせていた磁石の形がなぜちゃんとした形でないのか(深澤)→A. 最初は丸い形をしていたのですが、落として割れてしまいました。それだけの理由です。
  4. あの実験に使った磁石は強力なモノか(高田)→A. YES. NdFeB系の磁石です。
  5. 今日やった実験は何に応用されるのか(林)→A. あれは、ショーとしてお見せしたので応用は考えていません。
  6. 超伝導の物理

  7. 低温超伝導体と高温超伝導体は臨界温度が違うが性質としてはどう違うのか(中山)→A. 高温超伝導体は物理的起源がまだ分かっていませんが、生じる現象としては低温超伝導体と同じです。
  8. 磁気浮上によってエネルギーは消費されないか(中山)→A. ただ浮上するだけならエネルギーの消費はありません。
  9. なぜ第2種超伝導では共存領域が出来るのか(中山)→A. 磁束量子(渦糸状態)が入ってもコヒーレンス長が長いので全体として超伝導が保たれるのです。別の言い方をするとHc1での相転移は1次の相転移であると考えられます。氷の融解も1次の相転移なので、水と氷の共存領域がありますし過冷却の現象も起こるのと似ていますね。
  10. 磁束量子はなぜ三角格子を組むのか(外山)→A. 円を最密充填すると三角格子になります。
  11. 超伝導が破れるとどうなるのか(星乃)→A. 常伝導になるだけです。
  12. 抵抗が無くなると電子やフォノンはどうなっているのか(星乃)→A. 電子はクーパー対を作っています。フォノンは超伝導の如何にかかわらず存在します。電子散乱にフォノンが関与しないだけです。
  13. 第1種と第2種は物質が違うのか(松田)→A. その通りです。
  14. 超伝導の応用

  15. 超伝導はカタパルト(航空母艦などの飛行機射出機)に使えるか(原田)→A. 超伝導電磁石を使ってもそれほど大きな瞬発力を出すことは出来ません。瞬発力は蒸気の方が遙かに強いと思います。
  16. リニアモータカーはなぜ騒音がひどいのか(中山)→A. スピードが速いので車体の周辺の流体に渦が生じ騒音が生じるのだと思います。営業運転の時には解決されるのではないでしょうか。
  17. リニアに用いる超伝導コイルについて講義でやって欲しい。自分でも調べてみるが(米光)
  18. 超伝導体のgあたりのコストはどれくらいか(杉田)→A. 例えばNbTi合金などは、銅の10倍くらいの値段ですが、超伝導線にするには、銅線の中に埋め込んだ面倒な構造にしなければなりませんから100倍以上の値段になります。
  19. 超伝導は経済的に見た場合どうなのか(木場)→A. いまのところ特殊用途以外には経済的に引き合いません。
  20. 超伝導スーパーコンピュータでは、超伝導をどのように使うのか(伊藤(雅))→A. ジョセフソン素子として使います。
  21. 実験では液体窒素を使って低温にしていたが、実用の場合にはどうするのか。(グエン)→A. 液体窒素を使うか、ヘリウム循環型冷凍機などで冷却します。
  22. 身近なもので超伝導が利用されているのは何か(伊藤(亜))→A. 病院でMRIによって脳腫瘍を発見したりするのを知っていますね。MRIは磁気共鳴診断装置です。強い磁石の中に患者をいれて陽子の核スピン磁気共鳴で診断します。この磁界を作るのに超伝導磁石が使われています。
  23. 交流の超伝導電流に対する臨界電流密度はどうなるのか。(平野)→A. 不勉強でよくわかりません。
  24. 感想・印象

  25. 実験をやって貰うと興味がわく。超伝導に対する理解が深まった(チュア、大谷、庄司)
  26. 磁石が超伝導体によって浮いているというより液体窒素に浮いている感じ。見られて良かった(大角)
  27. 超伝導で磁石を浮上させるのは前にも見たが、抵抗計で測定しながら見たのは初めて。本当に抵抗がゼロになったのには驚いた。(高田、遠藤) 4端子法による抵抗測定を学んで良かった。
  28. 磁石が浮くのを見ることが出来たこと、なぜ浮上するかわかったことが良かった。(平井)
  29. 話に聞いていたが超伝導を用いて磁石を浮かせるのを見たのは初めてで良い経験だった。(渡邊、森岡、金子)
  30. 結構簡単に実験が出来るので驚いた。(橋本)