電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1999.1.22

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp, Home page: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/; 教科書:佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社)

第12回(1999.1.8)の学習内容 教科書p.275-277

超伝導の基礎T:超伝導とはどんな現象か? ある温度Tc(臨界温度)以下で電気抵抗がゼロになる。それとともにマイスナー効果が現れる。発見者カマリン・オネス(オランダ)1911年[Hgの超伝導]。BCS理論:バーディーン・クーパー・シュリーファー(米)1957年。高温超伝導体:発見者ベドノルツ、ミュラー(スイス)1986年[(La,Ba)2CuO4]

 第1種超伝導体: 磁束は侵入できない(表面からわずかな深さ[Londonの侵入長]を除く)。電磁石を作れない。

 第2種超伝導体:磁束は量子化されて、磁束量子として侵入可能。電磁石を作ることが出来る。

第12回の問題

 液体ヘリウムと液体窒素の沸点の温度は?:

 [解答]液体ヘリウム4.2 K、液体窒素 77 K。

 第1種超伝導体に磁界を印加したときの磁束を図示せよ。

 [解答] 左図参照

第12回の質問・印象・要望

  1. 第2種超伝導体における磁束のピン止めについて詳しく知りたい。(木村、上田、宍戸、山中)→A: 授業でもう一度説明しますが、正確には磁束量子の概念をきちんと学ばなければなりません。磁束量子は、相互作用によって三角格子を作って配列します。これが動き回ると損失が起き超伝導がやぶれます。通常はわざわざ欠陥を導入して、そこに磁束量子が補足され動かないようにするといった工夫がされています。
  2. 第2種超伝導体の超伝導・常伝導共存状態がよく分からない。(外山、大和)→A: 授業でもう一度説明しますが、理論はコヒーレンス長など基礎的なことを知らなければ理解できないでしょう。おおざっぱには教科書のp.277の記述で定性的に理解しておいて下さい。
  3. 第1種、第2種の超伝導体はそれぞれ何に利用されているか(木場、山中)→A: 第1種で実用的に利用されているものはありません。殆どの応用は第2種の超伝導体を用いています。応用については最後の授業で話します。
  4. 高温超伝導体のデメリットは(杉田)→A. 低温超伝導体が金属またはその合金であって、展性、延性に優れ線材としてコイルなどに加工しやすいのに対し、高温超伝導体は酸化物のセラミクスなので、加工が大変難しく、また加工によって臨界温度が低下するなどの損傷を受けやすいという欠点があります。また、臨界電流の大きなものを得ることが難しく、沢山の電流を流すと超伝導が壊れやすいという欠点があります。これは、磁束がピン留めされず、動き回ることにより損失が発生するためで、色々の技術的工夫が行われています。このため、高温超伝導を用いた電磁石はようやく最近になって実用化しました。また、Josephson素子を作製するためには薄膜にする必要がありますが、薄膜にすると性能が劣るという欠点もあります。いずれにせよ、本格的な実用化のためには、まだまだ多くの研究が必要です。
  5. 高温超伝導体における酸素の役割(星乃)→A. Cu-Oの面またはチェーンが超伝導のパスになっています。キャリアは酸素のp軌道からなるバンドの正孔であると考えられています。この正孔は酸素の欠損によってもたらされています。
  6. リニアに使っている金属間化合物超伝導体は何か(ザイス)→A. Nb3Sn(3ニオブ・スズ)
  7. この先、超伝導による大電流保存は可能か(伊藤)→A. 可能だと思います。米国では広大な砂漠で超伝導コイルを使って電力を時期エネルギーとして蓄えることを計画しています。日本では、土地が狭いので人家が近くにあって漏洩磁束の問題が起きると思います。
  8. 超伝導コイルに永久電流が流れるとしたら永久機関が作れるのか。(高田)→A. 磁界は「場」です。「場」は仕事をしません。従って、永久電流モードのコイルが発生する磁界が減ることはありません。このことと永久機関が出来ることとは異なります。重力場を考えてみて下さい。場において何かを動かしたりするとその何かが仕事をします。重力は、永久に存在しますが決して仕事をしません。重力場を使って永久機関が出来ないのと同様、永久電流の発生する磁界を使って永久機関を作ることはできません。一方、永久電流モードを切って、超伝導コイルに蓄えた磁気エネルギーを抵抗を含む外部回路に電流として取り出すと、その電流は抵抗において仕事をします。それとともに磁気エネルギーは減少します。再び永久電流モードにすると、その状態の磁気エネルギーが蓄えられたまま、磁場を出し続けます。