電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1999.1.8

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp, Home page: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/; 教科書:佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社)

第11回(12.18)の学習内容

磁性の基礎(教科書P.196-206)

磁性体の分類

  無秩序系の磁性:反磁性、常磁性

  秩序系の磁性:強磁性・反強磁性・フェリ磁性、螺旋磁性、SDW、キャント磁性

 

第11回の問題

 反強磁性体は自発磁化を持たない。このことと、強磁性体の初期磁化状態が磁化を持たないことはどうちがうのか

  →解答:反強磁性は、隣り合う磁性原子の磁気モーメントが同じ大きさで互いに逆方向を向いているため自発磁化がうち消している。これに対して強磁性体の初磁化状態の場合、様々な磁化方向を向いたマクロな「磁区」に分かれていて全体としてみたときの磁化はうち消している。すなわち、反強磁性体は原子スケールで磁化が打ち消すのに対し、初磁化状態はμm-mmというようなマクロなスケールで打ち消している。

第11回の質問・印象・要望

 

  1. 磁性と宝石の関係が分からない。なぜ常磁性の話にルビーの話がでてきたのか。(宍戸)à A. 説明不足でご免なさい。ルビーは、Al2O3の結晶体である鋼玉(corundum)Al3+イオンの0.5%程度をCr3+イオンで置き換えたものです。Cr3+イオンには不完全3d殻に3個の電子があるため、イオンはスピン量子数3/2を持ちます。つまり、原子磁石が存在します。ルビーではこの原子磁石がランダムな方向を向いているので、磁界を加えない限り磁化を持ちません。磁界を印加しますとこの原子磁石が少しずつ磁界の方向に揃うので、全体として正味の磁化が誘起されます。この磁化の大きさは、磁界の小さなときには磁界に比例します。磁化率はキュリー則に従います。(ルビーの薄い赤紫色は、Crイオンの3d3電子配置における電子状態間の電子遷移による光吸収が黄--青の領域にあるためです。)
  2. 強磁性体のヒステリシスをBHだけでなく、Tも含めて表すとどうなるか。(平野)à A. 左の図のように飽和磁化、保磁力共に変化します。
  3. ヒステリシスループが点対称でないものが存在するか。(平野)à A. 例えば、反強磁性体と交換結合した強磁性体のヒステリシスループは、その交換力を反映した磁界だけの分シフトします。これをexchange biasと呼んでいます。SV (spin valve) ヘッドでは、この原理を用いてゼロ磁界付近の磁気抵抗の立ち上がりの急な素子を形成しています。
  4. 原子磁石に磁気素量はあるか(平野)à A. 磁気モノポールがあるのではないかと、高エネルギー物理学では調べていますが、今までのところ見つかってはいません。磁気ダイポールの考え方では正負の磁極対が1つの素量であると見なすのです。
  5. 強磁性体のキュリー温度はいくらくらいか(本川,中山)à A. 物質毎に異なります。Fe(770=1043K), Co(1131=1404K), Ni(358=631K), CoPt(850K), CrO2(397K), Fe3O4(860K), CoS2(116K), CdCr2Se4(130K), a-TbFeCo(400K)…..
  6. 螺旋磁性などその他の磁性は利用されているか(野田)à A. 残念ながら今までのところ利用されていませんが、何らかの手段で螺旋をほどくことができれば、強磁性体になりますから使い道があります。
  7. 光アイソレータはどこに使われているか(藤本)à A. 光ファイバ通信用の光源レーザのすぐ後には必ず光アイソレータが使われています。海底光ケーブルの光増幅器であるEDFA*の前後にもさらには、EDFA用のポンプ光用レーザのすぐ後にも入っています。光ファイバ通信用の波長はファイバーの損失が最も小さくなる1.3または1.55μmの光が使われますがこの場合のアイソレータとしては磁性ガーネットというフェリ磁性体が使われます。ポンプ光用の900nm帯にはHgCdMnTeという常磁性の希薄磁性半導体が使われています。
  8. 教科書の図5.3はどのような物質を基準としているか(中山)à A. Langevin常磁性:Gd2O3Pauli常磁性:Li, VanVleck常磁性:Eu3+, Larmor反磁性:Xe gas, Cl-イオン、Landau反磁性:Si, Ge
  9. 副格子磁化とは(中山)à A. 反強磁性体において、同じ向きの磁気モーメントだけの格子を考えるとあたかも強磁性体のように見えます。この分の磁化を副格子磁化と言います。
  10. 磁性において交換相互作用はあった方がよいのか(中山)à A. なければ、常磁性になって、磁性材料として利用することは出来なくなります。
  11. 反強磁性と螺旋磁性はどうちがうのか(中山)à A. 反強磁性は螺旋磁性の特別の場合と考えられます。
  12. 記録再生における音質の差は何の差か。(渡邉)à A. 波形のひずみ、周波数による位相の変化など。
  13. ダイヤモンドは、どのくらいの強さでこすると傷がつくか(グエン)à A. ダイヤモンドは地上で最も硬い物質です。従って、こすると相手の方が摩耗します。