電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1998.10.30

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp, Home page: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/; 教科書:佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社)

第4回(1998.10.23)の学習内容

1.波長と色:

780-赤-640-橙-590-黄-550-緑-490-青-430-紫-380[nm]
 

光の3原色:R, G. B[加色混合:color TV, PC Display]

色の3原色:Cyan(=青緑:Rの補色),Magenta(=赤紫:Gの補色),Yellow(=黄色:Bの補色) [減色混合:color film, 印刷]

3原色で表現できる理由:人間の視細胞にヒミツがある。

網膜の視細胞には錘状体と桿状体があり、赤、緑、青の3種類の錘状体が色を識別する。赤の細胞は赤と青に感度をもつ。赤・青・緑の細胞の刺激の比率を変えることによりほとんどの色を表現できる。

2.半導体の光吸収(教科書p.111-114)

吸収係数の定義:dI/dx=-αI à I=I0 exp(-αx) à α:光強度が1/eになる距離の逆数

直接吸収端:α(hν)=A(hν-Eg)1/2/hν;間接吸収端:α(hν)=B(hν-Eg) 2/hν

 

第4回の問題

問題1.E=hν=hc/λから、波長λ[nm]の光の光子エネルギーは1240/λ[eV]で与えられることを示せ。[お詫び:黒板にe=1.6×10-19Cと書くべきところをC=1.6×10-19と書いてしまい、混乱させてしまいました。]

解答:E=hc/(λ[nm]×10-9)=6.6×10-34[J・s]×3×108[m/s]/(λ×10-9[m])=1,98×10-16/λ [J]=1,98×10-16/(1.6×10-19)λ[J/C]=1.238×103 /λ[eV]

問題2.CdS(硫化カドミウム)のバンドギャップは2.4eVである。この半導体の透過光は何色か

解答:透過域:λ>1240/2.4=517nm.à 517nm(緑青)より長波長を透過し、赤、黄、緑の波長が透過するので、透過光は加色混合により黄色に見える。[緑と書いていた人が大部分ですが、大間違いです。]

第4回の質問・印象・要望

  1. 光に対する2つの考え方(量子的、電磁気学的)をうまく結合させた理論はあるのか。(渡邊)à A. 量子電磁気学と称される場の理論があります。たとえば、ランダウ・リフシッツ「相対論的量子力学」参照。(渡邊君からは、この他、物理の基本に関する2つの質問を貰っていますが、この授業との関係がないので省略します。)
  2. 動物の目はどうなっているのか、どうやって調べるのか(木村)à A. 犬、猫のたぐいは白黒です。エサなどで色による違いを判定できない。昆虫は人間より広い波長領域を識別します。紫外線で見るとアゲハチョウの羽の色は雌雄ですっかり異なっています。サルは色を識別します。ほとんど人間と同じだと言われています。
  3. 吸収係数から何が分かるのか(一杉)à A. 吸収スペクトルを測定して、直接型か、間接型かがわかります。また、吸収の強度を知り、太陽電池の設計などに役立てます。
  4. 同じ電磁波なのにX線、光、電波と分けて考えなければならないのはなぜか。(深澤)à A.エネルギーが異なるので 発生装置、受信(受光、検出)装置が全く別物になります。例えば、X線はガイガー計数管などで測定しますが、光は光電管やフォトダイオードで、電波はアンテナで検出します。
  5. TVの構造・原理を光物性との重ねて説明して欲しい(大和)à A. 本日の授業で少しやってみましょう。

 

感想:「人間の目」の色を感じる仕組みに強い印象をもった方が多かったようです。