電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1998.10.23

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp, Home page: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/; 教科書:佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社)

第3回(1997.10.16)の学習内容

システム:光通信(黒川(隆志)、谷)、光記録(佐藤(勝昭)、谷、梅田)、太陽光発電(黒川(浩助))、

      光計測(吉澤(徹)、梅田)、画像処理(小畑、伊東)

デバイス:気体レーザ(田久保、室尾)、半導体レーザ(覧具)、液晶ディスプレー(飯村)、

      光回路(谷、黒川(隆))

材料:  VX族光半導体材料(纐纈、黒岩、森下)、太陽電池材料(齊藤、上迫、佐藤)、

      Si系発光材料(越田、須田)、磁気光学材料(佐藤(勝)、森下)、有機光材料(飯村、谷、宮田)

光物性: 半導体光物性(覧具、佐藤(勝)、越田)、磁気光物性(佐藤(勝))

光→電気:光導電、光起電力効果

電気→光:Electroluminescence(LEDLDEL)Cathodoluminescence(CRT)Photoluminesence(蛍光灯、PDP)

このほか、応力←→光、磁気←→光、熱←→光 などのパスがある。

反射、吸収、屈折、分散、回折、干渉、発光

光の伝搬に関する現象:電磁気学(Maxwell方程式)、物質との相互作用:量子力学(Schrödinger方程式)

第3回の問題

 光エレクトロニクスにおける光物性の役割 (標準解答は省略)

第3回の質問・印象・要望

光一般

Q: ふと思ったのだが、可視光は赤→紫と連続しているのに3原色で表現できるのはなぜか(廣原)→A: Good Question!、実はこれは、人間の目の仕組みにヒミツがあるのです。(授業でやります)

Q: 美術の教科書などで、赤の隣に紫が来ているのはなぜか。(平野)→A. これも目の視細胞にヒミツがあるのです。(授業でやります。)

Q: 光物性の「光」とは電磁波の中でどの程度のものをいうのか。可視光に限定する必要はないと思うが(深澤)→A: いわゆる光として扱えるのは、波長が0.1mm程度の遠赤外線から、波長が10nm程度の極紫外線までです。遠赤外線より長い波長のものは、ミリ波と称して電波の扱いですし、波長が数nm以下のものはX線の扱いになります。

Q: 黒色は全ての色を吸収すると同時に全ての色を発していると聞いたが、よく分からない。(中山)→A. 黒体輻射のことを言っているのですね。「黒」というのは光が来ないことを意味します。色が付いていないのですから、全ての波長の光を吸収します。一方、黒体はその温度に相当する(色温度という言葉があります)光のスペクトルをもって発光しています。赤色矮星の温度は青い星の温度より低いことを知っていますね。全ての波長の光を出すけれども、波長分布は温度によって違うのです。だから通常の体温程度の黒い服からは、波長の長い赤外線しか出ていません。

Q: 光でものを切ることができるのはどういう構図なのか(大和、山中)どんな波長のレーザか(チュア)→A. レーザは、直進性が高く広がりが少ないので、エネルギーを狭い部分に集中できます。例えば1Wの出力のレーザをAl上の直径0.1mmの円に集光することを考えましょう。熱が逃げないとすると1秒間に1Jのエネルギーが0.0001cm2のところに集中します。もしAlの厚みが1mmだとしますと、10-5cm3の体積に注入されます。Alの比重は2.7従ってこの部分は2.7×10-5gの重さです。比熱は0.9Jg-1K-1程度ですから、その部分の温度は1J/0.9×2.7×10-5JK-1=4.1×104Kにもなってたちまち融解します。実際には、光は反射されるので中に入る量は1桁程度少ないし、熱伝導で熱が逃げますからこの通りには行きませんが。実際には、金属の切断、医療用レーザメス、LSIのウェハーからの切断、太陽電池の素子分離などいろんなところに使われています。金属の切断には、大出力のCO2レーザ(波長10.6μm)、YAGレーザ(波長1.06μm)などが、半導体の切断などには、大出力の半導体レーザが使われます。波長は0.9μm=900nm付近です。

 

光通信

Q: 光ファイバー通信が普通の電話のように整備されるのはいつ頃か(97244087)→A: 郵政省/NTTではFTH(Fiber-to-the-home)という構想を持っていて、2010年くらいをめどに開発を進めていますが、今のところコストの問題があるので、果たして可能かどうか疑問ももたれています。

Q: 光ファイバーのところで出てきた全反射とは何か(松井)→A: 屈折率の大きな媒質から小さな媒質へと光が出ていくとき、ある臨界角より大きな入射角で入ってきた光は屈折率の小さな媒体へと進むことができず、反射のみがおきます。これを全反射といいます。高等学校の教科書にも載っています。

Q: 光通信で光を増幅するといっていたが簡単に出来るものか(林)→A: 微量のエルビウムなどの希土類イオンを分散させた光ファイバーを用い、励起用半導体レーザの光をポンプ光として入れてやりますと、誘導放出によってファイバーを伝わる光信号が増幅されます。

Q: 1Tbpsにまでなった光通信の容量をさらに上げるには多数のケーブルを束ねるしか方法が無いのか(勝田)→A. まだ、いろんな発明があって、もっと狭い帯域にたくさん詰め込める技術が発達するかも知れません。また、理論的上限と言っても、今使っているファイバーにおいてその波長分散などから決まる数字ですから、材料のブレークスルー等があれば、一気に限界を超えるかも知れません。

Q: 地球上の光ファイバの全長は(山崎)A: 黒川隆志先生に聞いてみて下さい。

 

CD, MD, DVD関係

Q: 再生専用MDと録再可能MDの違い(外山)→A: 再生専用のは普通のCDと同じように物理的にピットがあって、反射光の強弱で信号を読み出します。一方、録再用は、光の偏光の回転を使って信号を再生します。再生時に、内周部に書いた情報を読みとってどちらのメディアかを判定しています。

Q: プレステのディスクは表面が黒いがCDと同じ原理で読めるのか(原田)→A: 半導体レーザの特定の波長でピットとそれ以外からの反射光の強度に差があれば読めます。例えばCD-Rでは特定の波長でのみ反射の大きな色素が使われていて、それをレーザで飛ばしてしまうことで反射率の差をつけています。

Q: LDDVDでビデオのように録画できないのか(森岡)→A: DVD-RAMと呼ばれるものでは、5"ディスクの片面で2.7GB分のディジタル録画が可能です。DVD-RAMは光相変化材料が使われています。1000回くらいは消去、録画を繰り返すことができます。光磁気ではAS-MO (Advanced Storage Magnetooptical Disk)5"片面6GBとなっています。こちらは、100万回でも消去・録画可能です。

Q: 最近のCD80分以上録音されているが以前より収録時間が長くなったのか(吉田)→A: わかりません。規格が決まっているので本質的な点では増えないはずです。

 

光デバイス他

Q: 豆電球など白熱灯で電圧と電流の関係が直線でなく曲がっているのはなぜか(高橋())→A: 白熱灯にはタングステンなどの高融点の金属が使われていますが、金属に通電すると、温度が上がり、抵抗が増加するので、電圧をかけてからしばらくたつと電流値が元の値より小さくなるのです。

Q: 明るさでスイッチできる仕組みを知りたい(伊藤())→A: 光センサ(光導電素子、フォトダイオード、フォトトランジスタなど)と電子スイッチ(トランジスタ、サイリスタなど)との組み合わせになっています。

Q: キャッシュディスペンサなどで画面にさわるとスイッチになる仕組みを知りたい(稲垣)→A: タッチパネルといいます。ブラウン管、液晶ディスプレーなどの画面の上に透明導電膜のラインを横方向に並べたものと、縦方向に並べたものが2層に付けてあり、交点の部分を押すと両ラインが接触してスイッチが入ります。マトリクスになっているのでどの位置のスイッチを押したかがわかります。接触ではなく、電気容量(キャパシタンス)の変化を検出するものもあります。

Q: PDPとはなにか(木場)→A: Plasma Display Panelの略で、大画面平面ディスプレーの1つとして今最もよく研究されています。すでに商品化されています。2枚のガラスが向かい合っていて、中間は真空で、わずかの放電ガスが封入されています。一方のガラス上には画素数だけの多数の微小放電電極が作り込んであって、そこで起きた放電で紫外線がもう一方のガラスに塗布された蛍光体を励起し、Photoluminescenceによって発光します。

Q: 農工大に光エレクトロニクス関連の研究室が多くあることがわかったが、相互に関連しているのか(庄司)→A. 高価な装置などは、互いに協力して使いあっています。例えば、佐藤研は斎藤研のエリプソメータのお世話になっています。一方、佐藤研は斎藤研のPL測定のお手伝いをしたりしています。