物980130
電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1998.1.30
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第5回(1997.1.23)の学習内容
発光現象(ルミネセンス)について学習。

第5回の問題
発光を励起過程によって分類し、それぞれを利用したデバイスを挙げよ。
標準解答
  • フォトルミネセンス(PL):光で励起→蛍光灯、プラズマディスプレイ(PDP)
  • エレクトロルミネセンス(EL):真性EL:=電界で励起→ELP
  • 注入型EL=電子・正孔対の注入による励起→発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)
  • カソードルミネセンス(CL):電子線で励起→ブラウン管(CRT)、蛍光表示管(FDT)
  • ケミカルルミネセンス:化学反応で励起→電子デバイスとしては利用されていない。
  • ピエゾルミネセンス:応力により励起→電子デバイスとしては利用されない。


  • 学生からの質問と回答
    光物性
    1. Q: 今回挙げた以外の発光はあるか(H2細谷)→A: 熱発光というのがあります。
    2. Q: プラズマ状態とはどういう状態か(H1登守)→A: 自由に運動する正負の荷電粒子が共存して電気的中性を保っている物質の状態。
    3. Q: 衝突や摩擦などで直接的なエネルギーのやりとりで発光はどのように起きるか(H2栗原)→A: 例えば、ELデバイスでは、Mn添加ZnS半導体中で電子を加速してhot electronの状態にしてMnイオンに衝突させる。衝突の際の運動エネルギーはMnイオンに伝達され、Mnイオンの3d5多電子状態を励起する。
    4. Q: 注入型ELの説明がわからなかった。(H2山崎)→A: 半導体pn接合ダイオードを順バイアスすると、電子、正孔は接合部に集中し再結合する際に発光が起きる。詳細は越田先生の光電子デバイスの講義を聴いて下さい。
    5. Q: 励起状態から基底状態に戻るときのエネルギー差がバンドギャップを越えて励起したときとなぜ等しくならないか(H1山下)→A: 質問の意味が分かりませんが、一般に励起の際のエネルギーと、発光のエネルギーは異なります。それは、結晶格子との相互作用に基づいています。(教科書p.132配位座標モデル)
    6. Q: 励起子発光が半導体の評価に使えると言うことだが、励起子はどうやって励起されるのか(高橋)→A: 励起子というのは、励起された電子と後に残った正孔とが、クーロン力で互いに結びついた状態です。電子、正孔を全く自由にするのに比べると、束縛エネルギーの分だけ低いエネルギーで励起されます。励起子についてはp.114参照。

    光を用いたデバイス

    1. Q: アナログのカセットテープとデジタルのMDの磁気記録はどう違うのか(林辺)→A: カセットテープでは、音の信号に応じた磁界を磁気ヘッドで発生させてテープに塗った磁性体の磁化を変化させます。MDでは、レーザ光を直径1μm以下の小さな光スポットに絞り、磁性体を加熱して磁気転移点以上にして、いったん磁化を失わせ、冷却の過程で磁気ヘッドの信号に応じて記録します。レーザスポットのあたったところだけが記録されるので高密度に録音できるのです。(詳細は集中講義で)
    2. Q: これからMDはCDに変わる媒体になるのか(H1高山)→A: MDではデジタル情報を圧縮して記録しています。従ってCDと全くおなじというわけではありません。MDは転送速度は遅いけれど安価なデータファイルとしても使われるほか、もっと高密度になれば、8ミリビデオのカセットに取って代わるでしょう。
    3. Q: 蛍光ランプの内側の蛍光塗料の種類はどれくらいあるか(H1川原)→A:メーカによって異なるものを使っていますから、おそらく何百種類もあるでしょう。
    4. Q: プラズマディスプレイの説明をもう一度聞きたい(山田)→A: 光物性工学を聞いて下さい。
    5. Q: ブラックライトにはどんな蛍光体を使用しているのか。また、なぜ白いものが光って見えるのか(H1石谷)→A: 蛍光体は使っていません。放電の際に出る紫外線を出しているだけです。黒いのは、窓に可視光線の成分を吸収するフィルタが使われているからです。白い紙や白いシャツが青く光るのは、紙や布を白く見せるために蛍光染料が含まれているからです。
    6. Q: ブラウン管を光らせるためにどうやって2万Vの高電圧を作っているのか(H2鈴木)→A:水平同期信号(17.38kHz)をフライバックトランスに入力して昇圧しています。
    7. Q: フラットブラウン管のメリットは何か(H1白澤)→A: 丸い画面だとヨコからの光や上からの電灯などの光が映りこみますが、表面がフラットだと映り込みがないので映像がくっきりと見えます。