電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1996/12/19

12/12の復習:磁性体の分類
自発磁化をもつもの
強磁性
フェリ磁性
キャント磁性

自発磁化のないもの
常磁性
反磁性
反強磁性

磁気ヒステリシス曲線 Keyword: 初磁化曲線、飽和磁化、残留磁化、保磁力

12/12の問題:軟質磁性体と硬質磁性体の違いは何か
標準解答:軟質磁性体―保磁力が小さく、かつ、残留磁化が無視できるような磁性体、硬質磁性体―保磁力が大きく、残留磁化が大きい磁性体

12/12の質問に対する解答
磁気テープに関するもの
Q: クロムテープよりメタルテープが高いのはなぜか(H1石亀)メタルテープについて知りたい(H1柳川)メタルテープと普通のテープの違い(H1井出)→A: 普通のカセットテープは酸化鉄(γFe2O3)を使っていますが、Hcは20-35kA/m程度、Brは80-120kA/m程度です。クロムテープは2酸化クロム(CrO2)を用いますが、Hcは36-60程度、Brは100-130程度と、ガンマテープに比べかなり信号出力が大きくなります。これに対しCoNiメタルテープはHcが70-100とクロムテープの2倍位、Br300-360とも3倍位あって、SN比はクロムテープより15dB程度高くなっています。ガンマテープやクロムテープは塗布型ですが、メタルテープは真空蒸着というプロセスを使って作るので、塗布型のテープに比べ生産性が悪いため割高です。
Q: 普通のカセットテープとDATでは磁性体が異なるのか(H2馬場)→DATでは2値のディジタル信号が記録されますが高密度に記録するので、Hcが高くBrの大きな磁性体が必要です。このため、メタルテープが使われます。
Q: カセットテープなどの磁性体にどのような形でデータが入っているのか。どのように記録するのか(H1木村、H2古谷、太田、及川)→磁気ヘッドで音声信号に応じた磁界を交流バイアス磁界に重畳させて磁性媒体に加え、媒体の磁化曲線を利用して残留磁化として記録します。面内磁化を持った磁区の列として記録されています。(磁区については本日説明します。)
Q: 音楽の音質をよく記録するための工夫(H1中井)→テープノイズ、ヘッドノイズに対し信号の強度を上げてSN比を高くすることが重要です。このためにはメタルテープを使ったディジタル記録が最適です。
Q: γFe2O3のγとは(H2金子)→α相(コランダム構造;反強磁性)やβ相(立方晶、非磁性?)と区別するためです。
Q: VHSのビデオテープを使った大容量記憶装置について(H1井口)→ビデオテープは高密度ではないが非常に大容量の記録媒体です。これをディジタル記録に使えば、かなりの大容量記録が出来ます。しかし、私は詳細については知りません。
Q: ビデオテープはどうして片面しか使えないのか(H2篠原)→ビデオカセットはヘリカルスキャンという方法を採っていますので、記録されたトラックがオーディオテープのように走行方向に平行ではないのです。だから逆に回すのがむずかしいのです。

磁気ディスク、光ディスクに関するもの
Q: CDはピットで0,1を表現するが、MOディスクではNSで01を表していると考えてよいのか(H1藤村)→YES
Q: 磁気で記録したものを何で読み出すのか。(H2新山)→誘導型磁気ヘッドまたはMR(磁気抵抗)ヘッドで読み出します。前者は、テープまたはディスクが動くことによってコイルに誘起される電圧で読みます。後者では、磁界の向きに応じて抵抗値が変化する材料を用い、ブリッジを使って、電圧に変えて読みます。
Q: 光ディスクと磁気ディスクの読みとりの違いは(H2南條)→光ディスクはレーザ光を使って、記録情報を光の強弱に変えて読みとります。磁気ディスクでは1つ前の質問のように磁気ヘッドを使って読みます。
Q: MDではレーザをあててキュリー温度まで加熱して磁気を記録するといったが、それについておしえてほしい。(H2寺山、H1鈴木大)→MDではレーザをレンズで直径0.8μm程度の狭いスポットに絞ってアモルファスTbFeCoなどに照射します。これによってこの材料のキュリー温度以上に加熱されるので磁性を失います。冷却の過程で、外部磁界がかかるとその磁界の向きに磁化が起きます。こうして光のスポットが当たったところだけが磁気記録されるのです。
Q: MOディスクの再生の原理(H1児玉)→磁化の向きがディスク面に垂直上向きか、垂直下向きかで、入射した直線偏光の回転の向きが変わるのです。この変化を偏光子を使って光強度の変化として読み出しているのです。
Q: MOディスクは性能が劣化しやすいか(H2長野)→100万回以上の記録、再生、消去が保証されています。
Q: ZIP, JAZの仕組み(H1高宮、児玉)→私はよく把握していません。日経エレクトロニクスなどの記事を読んでください。

アモルファス
Q: アモルファスをもう一度説明してほしい(H2木野村、篠原)→アモルファスは日本語では非晶質と訳します。原子の配列に結晶のような規則性がなく、あたかも液体をそのまま固体に凍結したような構造になっているものをいいます。実際、液体状の高温の金属を急冷することによって作ることが出来ます。

磁性一般
Q: 強磁性とフェリ磁性の性質の違い(H1手島)→どちらも巨視的な自発磁化を有しますが、フェリ磁性はどちらかというと弱い磁性です。両者は温度変化の様子も異なります。
Q: 反磁性は場所によって磁界が入り込むということか(H2金子)→磁界はどこにも入り込みますが、変化を押さえようとして逆方向の磁化が誘起されるのです。
Q: 磁化Mと結晶構造、Egの関係は(H2金子)→磁性は原子磁気モーメントの統計的な総和として現れるので、結晶構造に大きく依存します。しかし、磁気現象は基本的には基底状態の現象なので、励起状態の関与するEgとは原則的には無関係です。
Q: 矢印で書いた意味が分からない(H1湯本、井上)→原子磁石をNSと書く代わりに磁束の向きを使って矢印で表しているのです。
Q: 実験でヒステリシス現象をやったが詳しく教えてほしい(H1水野、川口)→授業でフォローします。
Q: 電磁波は体に悪影響を与えるといわれるが、磁界は体によいのはなぜか。(H1松川)→一部の人が騒いでいますが、電磁波がどの程度の強さであれば体に悪いのかまだはっきりした判断基準がありません。磁界についても、生体にどんな影響があるかについてよく分かっていません。ピップエレキバンが本当に効くのかについても議論が分かれているようです。また、静磁界であっても強いと体に悪いという人もいます。
Q: 磁石を焼くとくっつかなくなるのはなぜか(H1浜崎)磁性体は固有の温度以上になるとなぜ磁気を失ってしまうのか。冷やしてもなぜ元に戻らないのか(鳥海)→永久磁石は、全体が単一磁区になっていて磁化を示しています。強磁性体はキュリー温度を超えるくらい温度が高くなると、磁気モーメントどうしが並び会う力より熱的にバラバラにする力の方が勝って常磁性になります。いったん常磁性になると温度を下げて強磁性にしたとしても初期磁化状態となって磁区が様々な方向をむいているため、全体としての磁化は消えてしまうのです。
Q: 磁化曲線のエネルギー損失を防ぐことはできないのか(H1望月)→Hcの小さな軟質磁性体を使えばよいのです。Hcは磁化に反比例し、磁気異方性に比例するので、磁気異方性の小さな磁性体を開発すればよいのです。
Q: 軟磁性体で初磁化曲線がを利用しているといったがどういうことか(H2徳本)→軟磁性体では、コイルを巻いて電流を流し、磁性体内に電流に比例した磁束を作り出すことが利用される。このためにはBとHが比例していなければならない。それで、初磁化の部分を使うのである。
Q: 強磁性状態でスピンのエネルギー値と伝導帯の分裂の関係が分からない。(釣崎)→バンドのエネルギーは電子のエネルギーを表しています。磁化に平行な(上向き)スピンの電子と磁化と反平行な(下向き)スピンの電子は当然ポテンシャルエネルギーが異なります。このエネルギー差は交換分裂と呼ばれ、キュリー温度Tcに比例します。
Q: 磁気記録やトランスのコア以外に磁性は何に使われているか(H1佐藤)→モータ、発電機などの回転機、磁気シールド、電波吸収体などの受動素子など。
Q: 電界によってファラデー効果のような旋光が起きない理由(H2上原)→誘電体の一部ではポッケルス効果といって電界によって偏光が変化する効果が見られます。
Q: BとHの違いが分からない(P勝又)→Hは磁界であるから「場」と考えられます。これに対し、Bは磁束密度で、場によって真空や物質中に生じた磁力線の密度を表します。
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