< html> 電子物性工学U佐藤勝昭教官 1996.12.04


11/28に学んだこと:半導体の光吸収(直接遷移・間接遷移)


  • 問題:CdS(硫化カドミウム、Eg=2.42 eV)はなぜ黄色に見えるか
  • 解答:CdSの光学吸収端に相当する波長は512nmなので、512 nmよりも短い波長の光(青、藍、紫)は吸収してしまい、可視光線のなかでその残りの色が透過します。それには、赤、橙、黄、緑の波長成分が含まれており、目では赤と緑の視細胞が刺激されて黄色に見えます。透明物質の色は反射光の色ではなく、透過光によるものです。

     11/28の質問への回答
    Q: フォトマルの説明の時黒板の字が先生の背中で見えなかった(名無し)フォトマルについて詳しく(H2鈴木伯)→A: 光を受けて、フォトカソードの金属から放出された電子は、ダイノードと呼ばれる金属メッシュに当たって数個の電子を放出しますが、それぞれがまた次のダイノードに当たって数個の電子を放出するのでネズミ算的に電子が増えます。それで光電子増倍管と呼ばれます。
    Q: ダイノードはダイオードと関係があるか。(H2窪喜)ダイノードの働きについて(徳本、H2南條、古谷、出来、H1松木、湯本)→ダイノードはフォトマルの中の金属のメッシュにつけられた名称です。ダイオードとは全く関係ありません。ダイノードの金属メッシュに電界で加速された電子が当たってその運動エネルギーによって数個の電子が放出される現象が起きます。
    Q: フォトマルは宇宙線を見る以外に何に使うのか(H1松川)→A: 宇宙線によるシンチレーション光の話は、微弱光が測定できるよという例として話したもので、半導体材料評価のための蛍光(フォトルミネセンス)の分光測定などに活躍しています。越田研、佐藤研などでよく使っています。
    Q: フォトマルとCCDは同じか。(石亀)→A: 全く違います。フォトマルは外部光電効果を使い、CCDは光起電力効果を使っています。フォトマルは光センサにすぎませんが、CCDは画像を入力します。
    Q: なぜ温度を下げるとフォトマルの感度は上がるか(岩倉)→A: 冷やすと暗電流が減るので光電流のSN比がよくなるのです。
    Q: 光電効果は結局何に利用されているのか(H1小野寺、芝田)→A: こんな質問を受けるのが悲しい。11/21にデバイスのところから導入した意味を理解してくれていないのですね。光センサ、画像入力(テレビカメラ)、太陽電池などです。
    Q: 金属に光を当てて電子が出る理由が分からない(H2山口)→A: 満ちたバンドにいる電子が伝導帯の空いたところに遷移したとき、バンドの曲がりなどがあると、もとに戻らずに外に飛び出します。励起状態のエネルギーと仕事関数の差の運動エネルギーをもって飛び出します。
    Q: 光が吸収されるというがどこに吸収されるのか(H1小野寺)→A: 物質そのものです。あなたが太陽の光を受けて暖かくなるのは、体を構成する物質が光を吸収して電子を励起状態にしたのち、その電子が励起エネルギーを熱に変えて物質の温度を上げるので暖かくなるのです。
    Q: (CdSの光スイッチ作用のところで先生が使った)チャタリングの意味(H1児玉)→A: 機械的なスイッチを入れたり切ったりしたとき、その瞬間をμsのような短い時間でみるとパタパタとついたり離れたりしていて、たくさんのパルスがでます。これをチャタリングといいます。
    Q: ダイヤモンドとシリコンの作り方の違いを詳しく(H2笹木)→ダイヤモンドは、以前は数μmの結晶しか出来なかったのですが、最近ではかなり大きなものも実用化されてきました。高温高圧の環境下でないと融解しないので特殊な加圧セルの中で結晶成長します。シリコンはよく知られているようにルツボの中で融解して種結晶を浸けて回転しながら引き上げるチョクラルスキー法で結晶成長します。(詳細は電子材料学(3年前期)上野先生)
    Q: 間接遷移に関与するフォノンは格子の振動で十分なのか(H2小島)→A: 格子振動だけで十分です。
    Q: 直接遷移、間接遷移とレーザの関係がわからない(H2古橋)→A: 発光関係は今回と次回講義します。
    Q: Egは思い通りに調整できるのか(H1有馬)→A: 混晶を作ることによってかなり自由に制御できますが、他の物性がうまく制御できるとは限りません。
    Q: 赤と青のセロハンを重ねて光をのぞくと紫に見える理由(H1小野)→A: 刺激として紫の波長と同じものを視神経に与えるということです。
    Q: 半導体はどういう条件で直接になるのか(H2椿井)→A: バンド構造が間接型になるか直接が他になるかは、バンド理論で予言している人もいますが、実際には作ってみないと分かりません。
    Q: 金属の伝導電子に対する電界によるドリフト効果は小さいにも関わらず金属はなぜ高い伝導性を示すか(H2上原)→A: キャリア数が金属では1022個/cm3と大きいのに対し半導体ではせいぜい1019-1020程度です。
    Q: エサキダイオードと普通のダイオードの違い→A: エサキダイオードはトンネル効果を利用したダイオードで、負性抵抗があり発振を示します。
    Q: バーコードリーダの赤い光は(H2伊藤)→A: HeNeレーザまたは半導体レーザの光です。高速で回転するミラーを使って上下左右斜めに走査しています。
    Q: 電子レンジでマイクロ波で加熱が起きる仕組み(鈴木大)→A: 誘電率には実数部と虚数部がありますが、実数部は普通の誘電現象に寄与し、虚数部は誘電損失になります。電子レンジでは食品に含まれた水分子が誘電率の虚数部の原因になります。金属ではマイクロ波の電界がショートしてしまって加熱できません。教科書のp75参照。
    Q: MOディスクの仕組み(H1高宮)→A: 磁性のところでお話しします。拙著「光と磁気」(朝倉書店)、「光磁気ディスク材料」(工業調査会)参照。
    Q: 放射線が体に悪い理由(藤村)→X線、ガンマ線などは体の内部まで入り、その高いエネルギーによって造血細胞の遺伝子に作用したりして悪さをするのです。
    Q: 今から勉強を始めても間に合うか(H2横尾)→A: どこの範囲をやっているか友人に聞いて自分で教科書や参考書を読んでも十分です。授業にでていた方が有利ですが、結局自分で勉強しなければ知識は身に付きませんから。

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