電子物性工学U 佐藤勝昭教官 1996.11.28

11/21に学習した内容:光物性にデバイス側から迫る。(光センサを中心に)
関連事項
5.2光デバイスp211-226
4.3光電変換材料p147-160
4.4発光材料p160-171
4.5.2光メモリp172-177
4.6.3光通信材料p182-186
3章:光物性の基礎p83-123


11/21の問題と答え

問題:pn接合の内蔵電位差はなぜ生じるか
解答:p形半導体と、n形半導体を接合すると、n形の方がp形より電子の数が多く、フェルミ準位が高いので、電子は境界面近くのn形領域から、p形領域に流れ込んで、n形領域には正の空間電荷が生じ、p形領域には負の空間電荷が生じ正負の電荷が向かい合って存在することによる強い電界を生じる。これが内蔵電位差の原因である。


質問と回答
光デバイス関連
Q: 半導体にイオン注入でn形半導体を作って不純物分布の偏りがないものができるのか (H2宮川)→A: 注入したあとアニールすると拡散して均一になります。
Q: 電気炉拡散によってAlとSiがなぜ一体になるのか(H1井口)→A: 一体になるのではなく、AlがSi原子を次々と置き換えながら(ということはSi原子は追い出されて別の位置に移りながら)結晶中を移動していき、熱平衡に達するとランダムに分布するわけです。
Q: ドリフト領域とは何か(H2新山)→A:生成されたキャリアが電界に押し流されていく領域のことです。
Q: pin接合においてi層の電位差が大きくなるとどのようなことが起きるのか(H2青木)→A: 強い電界によって、光で生成されたキャリアの分離が容易におきて、再結合を防げるので光電変換効率が高くなる。
Q: pinダイオードはフォトダイオード以外にも使われるか(H2出来)→A: アモルファス太陽電池はこの構造です。
Q: 自動ドアの原理がわからなかった(H1井出)→A: 赤外線発光ダイオードと赤外線センサとしてのフォトダイオードが組み合わされていて、発光ダイオードからの赤外線が人体などによって跳ね返ってきたものを赤外線センサで受けて電気信号に変えたものの立ち上がり信号をつかってドアを開けます。人体が離れると信号がなくなるので、その立ち下がり信号でドアを閉めます。(関連:人は赤外線を反射するか(H2笹木)→A: YES)
Q: フォトマルチプライヤがわからない(H1高宮,中井、H2清水)→A: 金属のフォトカソードに光が当たると光電効果で電子が放出され、なだれ増倍を用いて増幅する真空管です。光電子増倍管。p156の4.3.4項参照・
Q: 光センサの感度(H1松川)→A: 現在最高のものでは、1個のフォトンを数えることができます。
Q: 蛍光灯の仕組み(H2伊藤)→A: 管の中にガスが入っていて放電が起きる。放電ででた紫外線が管壁(内側)に塗ってある蛍光体を励起しフォトルミネセンスを起こす。
Q: 街灯の光センサに人工的な光を当てると街灯は消えるか(H1小野)→A: 太陽光程度=100mA/cm2( 朝夕はこの1/5くらい)の人工光を当てれば消えます。

光ファイバー
Q: 光ファイバーの仕組み(H1松木H2窪喜)→A: p184の図4.35に示されています。
Q: 光ファイバーはどれも1.6μmで損失が最小になるか(H2有馬)→A: 石英ガラスの場合です。フッ化物ファイバーでは2-3μmで最小になります。
Q: 光ファイバーは人体に有害か(H2近村)→A: グラスウールと間違えていませんか。ちょっと目には同軸ケーブルと区別が付かないような外観をしていてさわっても大丈夫です。中身も石英ガラスだから安全です。
Q: 光通信で光を光のまま増幅する仕組みが知りたい(H2釣崎H2古谷、又吉)→A: 光ファイバアンプのことですね。光ファイバのコアの石英ガラスにエルビウムErやプラセオジウムPrなどの希土類元素を添加したものに、ポンプ光として別のレーザの光を入れておき、Erイオンを励起して反転分布状態を作っておきます。このファイバーの中を通信用の信号の乗ったレーザ光を通すと、誘導放出が起きて光の増幅が起きます。(反転分布、誘導放出についてはp121参照)
Q: 光ファイバーに信号を乗せるという表現をしたがどのような方法か(H1谷口)→A: アナログ通信の場合、半導体レーザに流す直流電流に信号の交流電流を重畳させれば、光の強弱に変わります。ディジタル通信の場合には、半導体レーザをパルス電流で駆動すれば、断続光となって出力されます。
Q光ファイバーは細いのに長距離使っても大丈夫か(H2徳本)→A: しっかりと被覆して保護してありますからOKです。
Q: 深い海に光ケーブルを張る方法(H2 95244150)→A: 船の上からおもりをつけて沈めて行くだけのことです。

光物性一般
Q: 光導電効果について詳しく(Mrナスケ)→A: p149参照
Q: 光起電力効果とは(H1望月)→A: pn接合に光を当てると両端に電位差が発生しますがこのように光によって電圧が生じる効果を光起電力効果(photovoltaic effect:PV)といいます。太陽電池を積んだ家を英語ではPV-houseといいますが、PVは光起電力のことです。

物性・材料・デバイス一般
Q: C(炭素)はSiと同じW族なのに半導体材料にならないのはなぜか(H1藤村)→A: Siと同じ結晶構造のCとはダイヤモンドですから、バンドギャップが大きすぎて使いにくいところがあります。単結晶の作りにくさもあります。薄膜のDLC(ダイヤモンド類似カーボン)を半導体材料として使う試みは多くの研究者が取り組んでいます。
Q: 縮退半導体のキャリア分布(H2原嶌)→A: フェルミ準位が許容帯(バンド)の中にありますからあたかも金属のような分布をしフェルミエッジがでます。
Q: p+、n+があるのならp-、n-はあるか(H2馬場)→A: p+の+は過剰に添加したという意味ですから、p-は無意味です。
Q: 誘電材料とはどんな材料か(H1王)→A: コンデンサなどに使う絶縁性の材料で、誘電率が1より大きなもの。
Q: 集積回路をシリコン上につくるための段階はどんなものか(H1児玉)→A: いわゆるリソグラフィという技術です。詳細は、越田先生の電子デバイスの講義を聴いてください。
Q: サイリスタの働きを詳しく(H1小林)→A: 電子デバイス、パワーエレクトロニクスなどの講義でやります。制御装置の付いたダイオードであると理解してください。
Q: 半導体(集積回路)の中でCRLの働きはどう代替しているのか(H1鈴木大)→A: CはSiの酸化物を誘電体としたコンデンサを使います。RはSiのドーピングの程度を制御して作ります。Lについては、回路を工夫して等価的にLと同じ働きをする電子回路を用います(オペアンプの負帰還回路にCを用いるとどうなるか考えてみよう)
Q: 多数キャリアとは何か(H1宮本)→A: 電子と正孔のうち主に伝導に寄与しているキャリアのことです。
Q: 逆バイアスしたダイオードの微弱な電流の起源(H1湯本)→A: 少数キャリアによる電流です。(拙著「応用物性」(オーム社)p63参照)

その他
Q: シュレーディンガー方程式について詳しく(Mrナスケ)→A: 時間がありません。量子力学の本を読んでください。
Q: チャンピオンデータって何(Mrナスケ)→A: 公開された最高のデータ(いつもこの値がでるというわけではない)
Q: CDとDVDを比べると同じディスクでもDVDの方がきめが細かいということを聞いたが(H1栗田)→A: DVDではトラックピッチが狭いのでたくさんの情報が書き込めるのです。
Q: 体によい光、悪い光(H2太田)→A: 一般に紫外線は目、皮膚などに悪い作用をします。赤外線は熱の働きをしますので治療に使われます。
Q: スペースラブで太陽電池材料の組成の実験をしているらしいが既存のとは違ったものができるのか(H2佐藤和)
 →A: 2種類の半導体の合金を作るとき、もとの2つが重さの違うと地上では混じり合いにくいのですが、宇宙では重力がμG程度になるのでうまく混ざって、太陽電池の効率の高いバンドギャップの半導体を容易に作れるのです。
Q: 光ファイバーは人体に有害か(H2近村)→A: グラスウールと間違えていませんか。ちょっと目には同軸ケーブルと区別が付かないような外観をしていてさわっても大丈夫です。中身も石英ガラスだから安全です。
Q: 光通信で光を光のまま増幅する仕組みが知りたい(H2釣崎)→A: 光ファイバアンプのことですね。光ファイバのコアの石英ガラスにエルビウムErやプラセオジウムPrなどの希土類元素を添加したものに、ポンプ光として別のレーザの光を入れておき、Erイオンを励起して反転分布状態を作っておきます。このファイバーの中を通信用の信号の乗ったレーザ光を通すと、誘導放出が起きて光の増幅が起きます。(反転分布、誘導放出についてはp121参照)
Q: 金より銀の方が光を反射するのになぜ人工衛星は金のアルミ箔で巻くのか(H2小野)→A:本当にアルミ箔なのですか?アルミ箔のアルミニウムは可視光線の反射率は85%-90%位でかなり低いです。もしアルミ箔が金色をしているということなら、表面に金メッキをしてあるのでしょう。
Q: 真空蒸着器の真空の度合い(H2椿井)→A: 気圧が低ければ低いほどよいのですがふつうの蒸着装置では10-6mmHg程度です。真空は油回転ポンプで荒く排気して、ある程度よくなったら油拡散ポンプで強く排気します。最近は、ターボ分子ポンプというオイルフリーな真空ポンプを使うこともあります。
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