電磁気学B 第3回講義

木2限0035番教室、金1限0024番教室

教員名:佐藤勝昭 (共生科学技術研究院ナノ未来科学研究拠点量子機能工学分野)

HP: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp

 


1回に学んだこと

·       ガウスの法則の積分形において閉曲面を小さくしていった極限としてガウスの法則の微分形が得られる。

·       あるベクトル場の発散(div)をとったとき正であったなら、そのベクトルはその点からわき出しているようにみえる。負であれば吸い込まれているようにみえる。

·       電場の発散は分極電荷を含めたすべての電荷密度を与え、電速密度の発散は真電荷密度を与える。

2回に学んだこと

「磁荷」のクーロンの法則

(1) 単極磁荷は見出されていないが、あたかも単極磁荷が独立に存在すると仮定して磁荷のクーロンの法則が得られる。

2つの磁荷m1,[Wb] m2[Wb]の間に働く力f[N]

 

で与えられる。ここにm0は真空の透磁率と呼ばれ、

m0=4p´10-7 [Wb2/(N×m2)=H/m]である。[1]

 

(2) 磁荷のクーロンの法則から磁場を定義出来る。

電気の場合の類推から、磁荷mが磁場H中で受ける力はmHである。

 

これより単極磁荷m2がベクトルr12方向に作る磁場は

 である。

 

(3) 磁気双極子の作る磁位

次に、単極磁荷の代わりに距離dだけ離れた正負の磁荷の対(磁気双極子)を導入する。電気双極子の場合(p25-28)と同様にして、磁気双極子pm=mdから角度q の方位にrだけ離れた点の磁場(磁界)ベクトルH は、磁位Vm(r)gradで与えられる。

ここに、磁位Vm(r)は、距離の2乗に反比例し、磁気双極子ベクトルpとなす角のコサインに比例する。

   [N×m/Wb]

磁場の単位は[N/Wb] [2]

磁荷を磁位Vmだけ高い位置に動かす仕事はmVmである。

 

3回に学ぶこと

[薄板磁石の作る磁位]

(4) 磁気双極子pmを薄い板状に並べると薄板磁石が出来るが、その磁位は、見込む立体角を用いて

となる。これは、距離を含まない立体角だけの関数である。[3]

この磁位はWのみで決まり面の形状によらない。

薄板磁石表と裏の磁位の差は

(5) 薄板磁石の磁気分極

薄板磁石内部の磁気分極(磁化ともいう)ベクトルMを定義することが出来る。Mは薄板磁石の内部の磁場の符号を変えてm0を乗じた量である。磁気分極の単位は磁荷密度の単位と同じで、[Wb/m2]である。

 

[電流の磁気作用]

(6) 電流と磁石の等価性
磁気双極子pmを薄い板状に並べると薄板磁石は、その外周を、という電流が流れている状況に置き換えることが出来る。

 

(7) ビオ・サバールの法則

閉曲線に定常電流Iが流れているときに、rだけ離れた点Pにおける磁場ベクトルは次式で表される。

閉曲線の一部だけの寄与を書き表すと

太さのある電流を考えるときは、電流密度j[A/m3]とすると、

と表現できる。この形のビオサバールの法則が最も一般性のある表現になっている。

 

(8) 磁束密度Bと磁場Hの関係

実在する観測量はHではなくBであると考えると

単位[Wb2/Nm2][N/Wb]=[Wb/m2]=[T] テスラ

(9) ビオサバールの法則とクーロンの法則
ビオサバールの法則は、磁場が距離の2乗に反比例するところは電荷のクーロンの法則に似ているが、ベクトル積を含むところが異なる。

 

(10) 時間反転対称性

電流密度は時間反転で符号を変える。

電流の作る磁場も時間反転で符号が変わる。

 

前回の質問等で多かったもの

1.     divgradの違いがわからない(加藤他)
A. div
はベクトルに操作してスカラーを与える演算子、gradはスカラーに操作してベクトルになる演算子

2.         磁場のポテンシャル(磁位)はわかりにくい(増田他)
A.
位置エネルギーとして考えれば同じように扱えます。

3.         となっているが極座標を使うのですか。(楢舘)A. 極座標ではありません。

4.         最後の方のD=eE=e0erEのところが早くてわからなかった。(遠藤)A. p.62を復習してね。

5.         においてVm(r)はスカラーならrもスカラーではないのか。(村岡)A. rはベクトルです。ポテンシャルは距離と角度に依存するからです。

6.         電荷が関係するεと磁荷が関係するμが光速度でつながっているのが不思議だと思った。(佐藤)A. 最初はWeberが実験的に出したのです。Weberが求めた値は光速とは少しだけ違っていましたので、Weberは光速であると気が付きませんでした。後になって、光速であることがあきらかになりました。

7.         e0m01/c2のお話の結論がわからなかった。(芦沢)A. 結論は、一見別々にみえる電気と磁気が光速でつながっているということです。

8.         磁気分極Mがどういうものかわからない(猪野)A. Mは磁化(magnetization)ともいい、単位体積あたりの磁気双極子の総計です。

9.         磁位と磁気モーメントの関係がわからない(坂入)A. これは、p.28に出ている電気双極子pと電位の関係式(3.28)の導き方と同じなので自習しておいて下さい。

10.      一番小さい磁石はどれくらい(富樫)A. 電子はスピンをもっているのでそれ自身ミニ磁石です。

11.      磁場の透磁率についての説明がイメージできなかった。(大久保)A. 透磁率は、磁束密度と磁場の比です。わずかな磁場で大きな磁束密度を出せれば、例えば磁気記録の磁気ヘッドに使うことができます。

12.      誘電率のところで仮想の話だというのがよくわからない。(那須)A. 電場が小さいならば近似的に線形で表せるというような話をしたのですが、却って混乱を招いたようですね。1年生は、電束密度は電場に比例するという範囲で覚えておいて差し支えありませんが、将来、現実問題では線形の範囲を超えることもあるよという注意をしておいただけのことです。

 




 



[1] 3.1p.13において、真空の誘電率が

e0=8.854188´10-12 [C2/(N×m2)=F/m]

と与えられたが、e0m01/c2 (cは真空中の光速)となる。

[2] 後ほどこれが[A/m]と書けることを示す。

[3]観測点Pから微小な面積DSを見込む立体角DWは、

で与えられる。