エレクトロニクスII 佐藤勝昭教員 金曜1限94番教室 2003年度第3回配付資料03.10.17

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教科書:竹村裕夫著「電子回路の基礎」(コロナ社)

半導体について知ろう pn接合の原理を知ろう


復習コーナー1
半導体ダイオード

半導体のpn接合はp側が正のとき、ある閾値を超えると電流がよく流れる(順方向)

逆方向に電圧を加えると電流が流れにくい

逆方向電圧がツェナー電圧を超えると急に電流が流れる

整流−半波整流と全波整流−

電灯線:交流、正負の極性が時間とともに正弦波的に周期的に変化E=E0sinwt

半波整流:一方の極性のみをとる

 全波整流:絶対値をとる

整流回路(教科書p16)

半波整流回路

1個のダイオードだけだと、正弦波の正の部分のみが出力される

全波整流回路
4個のダイオードをブリッジにすることで、正弦波の負の部分を折り返し絶対値をとることができる

 

前回の問題
pn接合ダイオードのI-V特性を測定するには、どのような装置を用意し、どのような配線をすればよいかを考えて、具体的なやり方を書いて下さい。

解答 直流法@[順方向]

用意する装置:直流電源、電圧計、電流計

     順方向特性:直流電源の正極から直流電流計を通してダイオードの+に接続、ダイオードの−は直流電源の負極につなぐ。

     順方向小電流のとき、電源は定電圧(CV)モードで動作させる。電圧計は電源に並列に接続する。電圧を上げていき、ダイオード両端の電圧とダイオードに流れる電流の関係をプロットする。

     順方向大電流のとき、ダイオードの両端に電圧計(内部抵抗の高いもの)を接続する。直流電源をCCモードとし、つまみを回して、電流を上げていき、ダイオード両端の電圧とダイオードに流れる電流の関係をプロットする。

解答 直流法A [逆方向]

        逆方向特性:直流電源の負極から直流電流計を通してダイオードの−に接続、ダイオードの+は直流電源の正極につなぐ。

        ツェナー電圧以下ではダイオード電流が小さいので、電源の両端に電圧計を接続する。直流電源のつまみを回して、電圧を上げていき、ダイオード両端の電圧とダイオードに流れる電流の関係をプロットする。電源は定電圧(CV)モードで動作させる。

        ツェナー電圧以上では定電流(CC)モードで電源を動作させる。ダイオードを流れる電流が大きいので、ダイオードに並列に電圧計を入れる。電流を変化しながら電圧をプロットする。

解答(2) 交流法

ファンクションジェネレータからの交流電圧をダイオードと抵抗を直列につないだ回路に印加する。

印加電圧をオシロのX軸に、抵抗の両端の電圧(電流に相当)をオシロのY軸に印加。オシロをXYモードで動作させる。

復習コーナー2
半導体とは

半導体というのは、導体(金属)と不導体(絶縁体)の中間の電気伝導率をもつ物質という意味。

金属は温度が上がると電気が流れにくくなる性質を持つが、半導体は逆に、温度が高いほど電気が流れやすくなる性質をもつ。

半導体の電気伝導性は金属と違って人為的に制御でき、抵抗値は金属に近いものから、絶縁体に近い値までをとる。

半導体の抵抗率

       (佐藤・越田:応用電子物性工学 図4.2)

導体の電気抵抗率の温度変化

       (佐藤・越田:応用電子物性工学) 

半導体のいろいろ

半導体の主役はIV属元素のSi(珪素:シリコン):PCCPUやメモリ(DRAM)の材料は、すべてSi

IV属をIII属元素とV属元素で置き換えたIII-V族化合物(GaAs, InAs, GaP, GaN・・)も半導体の性質をもつ。II属とVI属に置き換えたII-VI族化合物(CdTe, ZnSe・・)も半導体である。

II-VI族化合物のII属金属をI属とIII属に置き換えたI-III-VI2族化合物(CuInSe2)も半導体の性質をもつ。

半導体について知ろう 
よく使われる半導体

シリコン(Si) (化学名:珪素)
電子デバイス材料、太陽電池材料

ガリウムヒ素(GaAs) (化学名:砒化ガリウム)
LED材料、光通信用レーザ材料、高周波デバイス材料

インジウムガリウム窒素(InGaN) (窒化インジウムガリウム)
青色LED材料、青紫色レーザ材料

カドミウムテルル(CdTe) (化学名:テルル化カドウム)
太陽電池材料

シーディーエス(CdS) (化学名:硫化カドウム)
光センサ材料

こんなにある半導体

単元素半導体:Si, Ge

化合物半導体

III-VAlN, GaN, InN, AlP, GaP, InP, AlAs, GaAs, InAs, GaSb, InSb

II-VIZnO, CdO, ZnS, CdS, HgS, ZnSe, CdSe, HgSe, ZnTe, CdTe, HgTe

I-VIICuCl, CuBr, CuI, AgCl, AgBr, AgI

I-III-VI2CuAlS2, CuGaS2, CuInS2, …

II-IV-V2ZnSiP2, CdGeP2, ….

混晶半導体

半導体と周期表

 

半導体の色

   バンドギャップより低いエネルギーの光を全部通す

   Eg>3.3eV:無色透明

   Eg=2.6eV:黄色

   Eg=2.3eV:橙色

   Eg=2.0eV:赤色

   Eg<1.7eV:不透明

pn接合ダイオード

   半導体にはn型半導体とp型半導体がある。

   n型:電子が電気伝導の主役になる半導体

   p型:ホールが電気伝導の主役になる半導体

   p型半導体とn型半導体を接合した構造は、電流を一方向にのみ流す「ダイオード」となる。

   pn接合ダイオードのp/n界面付近には、電子もホールもいない空乏層という領域が生じ、そこに「内蔵電位差」による強い電界が生じる。

   pn接合ダイオードにおいて、内蔵電位差を超える電圧を順方向に加えると、障壁がなくなって電流が流れやすくなる。逆バイアスすると空乏層が広がって電流が流れなくなる。

n型、p型半導体

   Si(シリコン)P(リン)を添加すると、電子がキャリア(電気の運び手)となるn(=negative:負)型半導体ができる。

   Si(シリコン)B(ホウ素)を添加すると、ホール(電子の抜け孔:正の電荷をもつので正孔という)がキャリアとなるp(=positive:正)型半導体ができる。

 

ちょっと背伸び
 エネルギーバンド

   3年次後期「固体物理学」で学ぶことを先取り。

   半導体の電子状態は、孤立した原子やイオンの電子状態と異なって、結晶全体に広がった波動関数で記述できる。このとき、電子が取り得るエネルギーは幅をもち、エネルギーバンドと呼ばれる帯になる。

   固体を構成する原子に由来する電子をエネルギーの低い帯から順に詰めていって、占有された最もエネルギーの高い帯を価電子帯と呼び、空の帯のうち最も低いものを伝導帯と呼ぶ。

   価電子帯と伝導帯の間の隙間をバンドギャップという。

 

半導体pn接合とバンド構造

順バイアスと逆バイアス

  順バイアス:空乏層が消滅しキャリアは接合部を通過して電流が流れる。

  逆バイアス:ホールは−極に、電子は+極に引き寄せられ、空乏層が広がり電流は流れない。

ちょっと実用回路コーナー
2石トランジスタラジオ (1)配線図

・トランジスタ技術編集部編「実験と工作で学ぶ初めてのエレクトロニクス」 CQ出版社2001年より

 

 

 

 

 

 

 

・2石ラジオのブロックダイアグラム

 

 

・2石トランジスタラジオ (2)写真と実体配線図



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考AMラジオの電波

   AMとは振幅変調(amplitude modulation)

   純粋な正弦波高周波
の電磁波(搬送波)
振幅を音声信号で
変化させる変調方式

   教科書p.99

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考AM電波の復調

・ AM波から原信号を再生する回路を復調回路(検波回路)という。

・ AM波は包絡線が信号波なので、ダイオードで整流し、振幅の変化分を信号として取り出す。

      教科書p103

第3回の問題

半導体と金属の導電性およびその温度変化の違いを述べよ。

 pn接合が整流性(順バイアスの時電流が流れやすく、逆バイアスでは流れにくい)をもつことを説明せよ。

 

宿題(10/31)提出

教科書p19の練習問題(1)〜(8)