■白石研究者の研究結果
分子を介したスピン流の制御
 白石研究者は、炭素でできたグラフェンにスピンを流すという非常に挑戦的な課題に挑んだ。彼は、多層グラフェンにおいて4端子非局所法を使った地道で慎重な実験によって、世界で初めて信頼性のある純スピン流の注入と、それによる巨大磁気抵抗効果を室温で検証した。
 さらに単層グラフェンでも純スピン流の注入に成功し、ゲート電圧によってスピン注入電流が制御できるというスピントランジスタ動作にも成功した。スピン拡散長が予想されるより、かなり短いという謎は期間中に解明には至らなかったが、所期の成果は十分得られたと評価したい。
 彼は、さらに分子にスピン流を流す研究に挑戦をつづけているが、なかなか実現の道のりは遠い。その代わり、副産物として、フラーレン・コバルト微粒子ナノコンポジット材料で、低温ながら磁気スイッチング現象と140万%におよぶ巨大磁気抵抗効果を発見し、応用への貢献が期待されている。世界の分子スピントロニクスの先導者として、この分野を引っ張っていってくれる存在になると大いに期待している。
白石研究者、齊藤研究者の研究が、JSTニュース2010年第3号(6月4日発行)の特集「スピントロニクスはシリコンデバイスを超えられるか?」として紹介された。

(1) 論文(原著論文)発表
査読付き論文
  1. M. Shiraishi and T. Ikoma, “Molecular spintronics” (Review Article), Physica E, in press.
  2. M. Shiraishi et al., “Graphene spintronics”, Proc. SPIE 77600H-1.
  3. Z. Tang, S. Tanabe, D. Hatanaka, T. Nozaki, T. Shinjo, S. Mizukami, Y. Ando, Y. Suzuki and M. Shiraishi, “Investigation of spin-dependent transport properties and spin-spin interactions in a CuPc-Co nano-composite system”, Jpn. J. Appl. Phys. 49, 33002 (2010).
  4. M. Shiraishi, K. Muramoto, N. Mitoma, T. Nozaki, T. Shinjo and Y. Suzuki, “Analysis of degradation in graphene-based spin valves”, Appl. Phys. Exp. 2, 123004 (2009).
  5. M. Shiraishi, M. Ohishi, R. Nouchi, N. Mitoma, T. Nozaki, T. Shinjo and Y. Suzuki, “Robustness of spin polarization in graphene-based spin valves”, Adv. Func. Mat. 19, 3711 (2009).
  6. D. Hatanaka, S. Tanabe, H. Kusai, R. Nouchi, T. Nozaki, T. Shinjo, Y. Suzuki and M. Shiraishi, “Enhanced magnetoresistance due to charging effects in a molecular nano-composite spin device”, Phys. Rev. B 79. 235402 (2009).
  7. R. Nouchi, M. Shiraishi and Y. Suzuki, “Transfer characteristics in graphene field-effect transistors with Co contacts”, Appl. Phys. Lett. 93, 152104 (2008).
  8. M. Shiraishi, H. Kusai, R. Nouchi, T. Nozaki, T. Shinjo, Y. Suzuki, M. Yoshida and M. Takigawa, “A nuclear magnetic resonance study on rubrene-cobalt nanocomposites”, Appl. Phys. Lett. 93, 53103 (2008).
  9. Y. Sakai, E. Tamura, E. Shikoh, T. Shinjo, V.K. Lazarov, A. Hirohata, Y. Suzuki and M. Shiraishi, “A novel magnetic switching effect in a C60-Co nanocomposites system”, submitted.

著書
  1. M. Shiraishi, “Graphene Spintronics” (“Graphene; The future”, American Scientific Press. 2011).

解説記事など
  1. 白石誠司「有機分子を介したスピン依存伝導の観測」(応用物理学会誌「応用物理」小特集「基礎から学ぶスピンを操る科学・技術」2009年3月号).
  2. 白石誠司 “Spin-dependent Transport and Spin Current in Molecular Spin devices”, 「まぐね」「スピン流に付随した新現象と応用」トピックス (2009年2月号).
  3. 他5件

(2)特許出願
なし

(3)その他(主要な学会発表、受賞、著作物等)
  1. 2007年度応用物理学会論文賞(2007年9月)
  2. 国際会議招待講演19件(多内定済み・3件)及び
         国内学会招待講演13件(他内定済み・2件)      計37件