日本発構造材料の飛翔を目指して
~強く、軽く、熱に強い材料を~

イノベーション拠点推進部 SIPグループ
萩原 開
SIP 構造材料  戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は11の分野の産業振興につなげるべく内閣府が主体となり開始されたプログラムです。内閣府が主体となり行う制度にはSIPの他ImPACTがあります。ImPACTのコンセプトは、図の緑の矢印のようにこれまでとは次元の違うベクトルによって新しい市場を作ることです。JSTはPM(プロジェクトマネージャー)の所属機関として関わっています。一方、SIPのコンセプトは、図の青い矢印に沿って従来の成長路線を加速して、新しい市場を作ることです。

 JSTはSIPの5課題に管理法人(内閣府(PD)の指示の下、プログラムの運営・管理を行う機関)として関わっています。そのうちの1つが「革新的構造材料」です。JSTや文部科学省ではなく内閣府のプロジェクト、そんな革新的構造材料の運営ではこれまでになかった経験をすることも多いです。他ではなかなか見られないその一端をご紹介します。

 本課題では三重工(三菱重工、川崎重工、SUBARU(富士重工))、IHIと三菱重工航空エンジンなどライバル同士にある企業が目標である航空機産業の育成のために協力し、まさにALL JAPAN体制で目標に取り組んでいます。同一業界の企業との協同事業を嫌がる傾向のある日本企業では非常に珍しい体制となっており、LCCの台頭による高機能・高価格から価格重視、量産性重視へのシフトに対する各社の危機感が現れています。運営側としてもプロジェクトへの取り組み方、同じ素材に対する見切りなど同時に複数社見ることが出来ます。例えば、JST職員であっても前職がライバル会社の場合は成果報告の場には立ち入らせない企業がある一方で、ライバルであっても実際の研究施設に入ることが出来る企業など同じ業界・企業規模であっても対応は千差万別で、非常に貴重な経験となっています。

SM4Iマガジン  PD面談が年2~3回、評価が年2回と高頻度で報告を求めることにより、研究者には研究への目的意識と責任感を感じてもらう運営が行われています。JSTの存在感を示すという観点からは、個々の研究者に任すのではなく、運営側から強く関与していくこの方法は一つの選択肢になりえると考えています。(右は成果をまとめた広報誌の第1版(年4回発行))

内閣府の指揮下のもと行われるSIPはJSTの他事業に比べてPDの力が大きいという特徴があります。それは成果を見据えた研究という意味では非常に大きなアドバンテージだと思います。一方で、プロジェクトの目標自体が「イノベーションの創造」を目指すJSTよりも「産業技術力の強化」を目指すNEDOに近いという指摘もあります。JSTとしてSIPの運営管理団体となった経験をどのように生かしていくか。SIPの終わりが見えてきたときに改めて考える必要があるかもしれません。。